根も葉も生やしたら「タイガくん、あのさ……」
「ん? どうした?」
配信動画の録画を終えて、録画停止ボタンを押したところでカケルが神妙な面持ちで俺を呼んだ。俺は録画の確認を後に回し、保存が完了していることだけ確認してビデオカメラの電源を切る。
「最近ね、周りの人に『パンと付き合ってんの?』って聞かれるの」
「はぁ?」
「先週は先輩に聞かれたし、昨日はカツサンドにも聞かれた」
あぁ、アイツらか。顔を想い浮かべて溜息を吐く。ことある毎にカケルにちょっかいを掛けてくる奴らだ。どういう意図で、俺と付き合ってるかなんて聞くんだよ。
「ごめんね」
「なんでカケルが謝るんだよ」
「だって、迷惑でしょ? 僕と付き合ってるなんて勘違いされたら……。僕がタイガくんにべったりだからいけないんだよね。暫く距離置いた方が……」
しゅんと落ち込んだ様子を見せるカケルに、胸が苦しくなる。なんで、そんな顔すんだよ。勘違いされて、俺が迷惑だと思うと思われてるのが悲しい。
「迷惑じゃないから、気にすんな。距離なんか置く必要ねぇよ」
「タイガくん……でもっ」
「嫌なんだよ」
「え?」
悲しそうな顔をする。また勝手に俺の気持ちを的外れに推測しているんだ。
「そんなくだらねぇ理由で、カケルに距離取られるの」
「でも、SNSとか動画のコメント欄でも噂になりつつあるし……」
「噂だからダメなのか?」
「……根も葉もない噂は、ダメでしょ?」
カケルはこてんと首を傾げる。可愛い。
「根も葉もあればいい?」
「?」
「噂がダメなら、真実にすればいい?」
「え、どういうこと?」
カケルは頭にハテナをいっぱい浮かべている。ニブくて天然なカケルが心配だ。仕事モードオフの時は気が弱いし、俺が守らないとな。
まずは俺の言いたいことをわかってもらおう。