「ん~」
「なに唸ってんの?」
珍しく教科書をじっと睨んで唸っているタイガ。明日は夏なのに大雪かにゃ? なぁんてね。
「べんきょー、しようと思って」
「えぇ?!」
本当に、明日の天気はヤバイかも。でもあんまり茶化してタイガのやる気をなくすわけにはいかない。
「どれどれ? どこがわかんないの? 教えてあげるよ!」
タイガの手にしている教科書は、魔法薬の教科書だ。複合的な魔法の知識が必要で、なかなか難しい教科だ。正直、今のタイガには難しすぎる。もっと簡単で単純なところから始めないと、挫折してしまう。
「い、いい! これは、そのっ」
「?」
タイガは顔を真っ赤にして、教科書を閉じてしまった。一体何のページを見ていたのだろう。
「もっと基礎的な科目から始めよう? それで、基礎的な学科がわかるようになったら、きっとその魔法薬の教科書に書いてあることもわかるようになるよ!」
励ますように言うと、タイガは真っ赤な顔のまま真剣な目をした。
「わかった。だったら、その基礎ってやつ、教えて」
どうやらタイガは余程魔法薬の教科書を理解したいらしい。一体、なんの薬を作りたいのだろう?
「わかった、一緒にお勉強しようね」
「ん」
俺が頭を撫でながら言うと、タイガはぴょこんと耳と尻尾を出して頷いた。
数か月後、タイガの作った薬でひと騒動あるのだが、それはまた別の話。