「あ、いいにおい~」
寝間着姿のカズオが、あくびをしながらキッチンに入って来た。
今日は休日。カズオの朝が遅い日だ。普段忙しいカズオは、俺が起きるよりずっと前に起きて、ニュースを見て新聞を読んで、パソコンに向かっていることもある。俺の為に、砂糖とミルクをたっぷり入れたコーヒーを準備しておいれくれる。だから、休日は俺が先に起きて朝食を作る。といっても、簡単なものしか作れないけど。
今日は、焼き鮭、豆腐の味噌汁。冷蔵庫に納豆と、昨日作ったお浸しが入っているから、それも出そう。米も今さっき炊けた。
「わぁ~、美味しそ!」
「早く顔洗って着替えてこい」
「はいはーい!」
カケルは鼻歌を歌いながら洗面所に入っていく。今日は天気が良さそうだし、少し遠くまでランニングしに行くのもいいかもしれない。最近俺もカズオも撮影系の仕事が多くて、あんましトレーニングできなかったからな。
「ねぇね、たいがきゅーん」
「あぁ?」
洗面所の方から、カズオの声が飛んできた。出来上がった朝飯を配膳しながら、返事をする。
「今日天気いいしさ、ちょっと先までランニング行かない?」
「……おう」
口元が緩む。カズオが傍に居なくて良かった。
俺たち、同じこと考ええたんだなぁ。ずっと一緒に居ると、似てくるんだろうか?
なんてことはないことなのに、嬉しく感じた。二人分の朝食をながら、こういうのを幸せって言うんだろうな、なんて柄にもないことを想った。