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    siiiiiiiiro

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    誕生日の橙真とひゅーい
    若干とうひゅ

    #橙ひゅ
    #とうひゅ

    烏兎匆匆「ひゅーいが戻れなくなった!?」
    「ちょっ、しぃー! 秘密なんだってば!」

     プリズムストーンの控室とはいえ、プリマジスタ状態のまつりが近くにいるのは見慣れない。長い髪の幼馴染は口に人差し指を立てているものの、橙真より大きな声をあげている。慌てた様子のまつりが向ける視線の先にいるのは青い獣――ではなく、狼のひゅーいだった。
     今日のTrutHの出番は数々のプリマジスタが出る中で最後、つまりトリというやつだ。橙真がタントちゃんにメイクアップをお願いするのも必然的に遅い時間になり、控室で待っている時間も長かった。いつも橙真と同じ時間に控室にいるはずのひゅーいが居ないことをまつりに電話すれば、大慌てのまつりとひゅーいが控室に現れたのだった。

    「これ、前みゃむがなったってやつと同じで……? もしかしてマジが枯渇してるのか?」
    「えっ? あーうーん、ニャン爺さんが、今たまたま不安定なだけだって言ってたかな? とにかく少しすれば治るって!」
    「そ、そうなのか」

     どこか曖昧な言い回しをするまつりを尻目に、つんとした態度のひゅーいを見下ろす。普段あれだけ上機嫌で纏わりついてくる癖に、どこかご機嫌斜めのようだ。喋れないのでは、ひゅーいが何に不満を抱えているのかも分からない。
     橙真は元より察しが良くない方だ。だからこそ、ひゅーいには何でも打ち明けて欲しいのに。
     
    「うーんさすがにこの姿でライブは無理だよね。ひゅーいさんが居なきゃTrutHとしては舞台に立てないし……」
    「でも、せっかく皆が繋いだステージなのに」
    「そういえば、橙真は一人でプリマジしてみようって思わないの?」

     考え込む橙真と対照に、まつりは世間話程度に会話を続けていた。まつりにとってその質問に大した意味はないのだろうが、足元のひゅーいの耳がぴくりと動く。気にしないふりをしているけれど、耳は嘘をつけないようだった。
     橙真はゆっくりしゃがみ込んで、青い頭を撫でる。想像より柔らかい毛を撫でつけていると下を向いていたひゅーいがチラリとこちらを見上げて、見慣れない金色と目があった。

    「いや……TrutHは、俺とひゅーいのデュオだから。俺一人で出るつもりはないよ」

     見開かれる金色は、恥ずかしげに伏せられてしまった。鋭い牙が見え隠れする口元は開いたり閉じたりを繰り返している。
     近付く出番の時間と、こういった不測の事態に普段対応してくれているひゅーいと意思疎通が出来ないことに、橙真は少しずつ焦りを感じていた。

    「(何か喋ってくれ)」

     嬉しいも寂しいも伝えられない悲しみは、こんなに大きかったのか。まつりが以前みゃむが話せなくなった話をしてくれた時は、まさかこれ程だと思っていなかった。今更になって、マナマナとチュッピの差の大きさを思い知った。

    「(……ワッチャが溜まれば、ひゅーいも元に戻れるのか?)」
     
     前に、ワッチャはどこを通じても受け取れると言っていた。それが密接であればあるほど、沢山流れてくるとも。
     一つの可能性に思い当たった橙真は、頭を撫でていた手をひゅーいの顎下に手を差し込んだ。誘導の通り少し上を向いたひゅーいのその鼻先に、橙真は唇を寄せた。

    「っちょ!!」
    「うわっ」

     途端、びゅん、と風が巻き起こる。思わず目を瞑って風が止むのを待つと、目の前にいるのは狼ではなく、顔を真っ赤にしたいつものひゅーいが床に転がっていた。

    「なななにしてるの!?」
    「……それはこっちの台詞だぞ」

     疑う余地もなく、風が巻き起こる前に狼の姿のまま喋っていた。つまり、狼のままでも喋れたということだ。ジィと小さく震えているひゅーいを睨むと、頭上からパン、と手を合わせる音が聞こえた。

    「ご、ごめん! これには深〜いわけがあって……」

     顔の前で合わせた手を崩さないまま、まつりから謝罪と共に経緯を説明された。その内容が飲み込めないまま手を引かれて、あっという間にステージ脇まで連れてこられる。すると、袖から見える景色は普段とまったく異なる赤と黒で彩られた客席とステージだった。
     
    「これ……」
    「みるきちゃんたちがお客さんにお願いしてくれたり、マナマナたちでステージをデコレーションしてたんだ。思ったり時間が掛かってたみたいで、ボクは時間稼ぎに使われたってわけ」

     ここで待ってて! と言われまつりに置いていかれた橙真の横に、いつの間にメイクアップをしていたのか、プリマジスタ状態のひゅーいが並ぶ。先程までの赤い顔はどこへやら、また不機嫌そうな顔に戻っている。いや、不機嫌というより、拗ねていたのだろう。
     
    「だからあんな不機嫌だったのか」
    「見せたくない姿にさせられて喋る事もできず、こんな素敵な装飾の手伝いも出来なくて、不機嫌にならない方が無理だと思わない?」

     むう、と頬を膨らませるひゅーいからは純粋にこのバースデーステージを手伝いたかったという思いが伝わってくる。それだけで、橙真は無性に笑いが込み上げてきた。

    「ひゅーい」
    「……なに?」

     メイクアップ前の橙真がメイクアップ後のひゅーいと並ぶと、どこかアンバランスだ。ちょっと待ってて、と伝えて、小走りでタントちゃんに駆け寄る。早く早くと、こんなにメイクアップが終わることを望んだことはなかった。
     早々に戻ってきた橙真がもう一度ひゅーいの横に並ぶと、パズルのラストピースがハマるような気持ちよさが橙真を満たした。
     
    「よかった、二人でステージ立てて」
    「今日の主役は、橙真なんだけどな」
    「俺を一人にするのか?」
    「あはは、天に誓ってしない!」

     ひゅーいもきっと、橙真が浮かれていることに気づいていた。だからか、ひゅーいも普段より明朗に笑った。ぎゅっと手を握って、もうあと一歩でステージに出てしまうギリギリのところまで歩みを進める。まつりやみるきが今日が誰の誕生日か説明をする声が聞こえて、もう何度も立つステージなのに緊張した。
     
    「じゃあ行くよ」
    「うん」
    「せーの」

     スポットライトの下に足を踏み出す。隣には、いつもの笑顔があった。 

    「TrutHです!」
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