イチさんのお話の続き「シチロウ?」
ひと目で彼だと分かった。彼以外には考えられなかった。
会いたくて、会いたくて、会いたくてたまらなかったシチロウが、海を超えたこの地に居るなんて。
そんな都合のいい光景が目の前に広がっていても、藁をも掴む思いで彼の手を掴む。
「お前、シチロウだろう?」
もう一度彼の名を呼ぶ。この間にも彼から逃げられそうで、腕に入る力を強めてしまう。
彼は観念したのか、怯えるような、震えた声で「カルエゴくん……?」と答えた。
「ずいぶん探した!」
勢いに任せて彼の腕を強く抱きしめ、手に力が入ってしまう。
シチロウの顔を見てみるとどこか困惑しているようだが、このような場所で再会できてことに混乱しているのかもしれない。俺もそうだからだ。
3390