ロングラン閉じたままの瞼の裏、一面に炎があかあかと燃えていた。いったい何を薪に燃えているのか、ぱちぱちと火の粉が爆ぜる音がする。眠りの安寧を焼きつくす炎を前にして、僕はそれをどうすることもなく眺めていた。暗闇であったところを残酷に照らし出す赤。それは自分を脅かすものであるはずなのに、不思議と温かかった。感覚が麻痺しているのかもしれなかったが、危機感を抱くのも今更に思えてとにかく億劫だった。
それからどれほど経ったか、大きく燃え盛っていた炎は徐々に小さくなり、しかし強さはそのままに凝り、青白い、光の点となった。突き刺すような光が、誰かの眼になる。
「スウ」
呼びかけられて、目は開けないままに、それを見る。よく知っている人間の姿。見飽きるほどに見た白髪と青い目。
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