水を飲みに部屋から出ると、暗いダイニングの中で、キッチンの照明だけが煌々と明るい。時刻は23時を回っていた。誰かいるのかとキッチンを覗くと、いつものパーカー姿の友人がいた。電子ケトルでお湯を沸かしている。
スウは入り口の壁に凭れて、彼がじっと見下ろしているプラスチックのカップに視線を向けた。
「それ、今週四個目じゃないかい」
声をかけると、こちらを向く。
「どうして知ってるんだ」
「僕が今週ごみ捨ての当番だからだよ」
アパートの共用ごみ箱のごみ捨ては当番制。プラスチック容器のごみは今朝出したばかりだ。あまり量が出ないこともあり、お馴染みのカップラーメンの容器はよく目につく。全部がケビンのものとは限らないが――メビウスの可能性も高い――今回は当たっていたらしい。
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