【朝支度】 昨晩の濃厚な間具合いにもかかわらず、2人の朝支度は早かった。花城は自分よりも早く目覚めていたのか、既に支度は終わっている。いつか彼の支度姿をみることが出来るだろうかと思ったが、謝怜自身、思ったより寝汚いところもあり、いつになることやらと独りごちる。隣に居る彼はせっせと手伝える事は何も言わずとも手を差し伸べて介助し、謝怜が自分で支度をやりたそうだなという所はまるで心を読まれているかのように決して手を出さない。今も、髪を結い、今では綺麗に元の白磁の姿に戻った首元を包帯で巻く謝怜の姿を頬杖を突きながらにこやかに見守っている。
「折角綺麗なのに巻いてしまうんだ?」
キラキラと、眼の奥に星でも飼っているのかというくらいに煌めきを放つ黒眼を、まるで宝物でも見つけた時のように細めて笑う。四六時中、視ないときなどもうほぼほぼ無いに等しいのだが何時視てもこの黒眼を美しいと思う。
1032