月明かりの夜に「薪ちゃーん!今日は編み込みにしてー!」
舞がご飯を食べ終わった食卓で薪さんを呼んでいる。可愛い舞のおねだりに薪さんは、すっかり手慣れた様子で舞の髪を結い始めた。
「行ってきまーす!」元気よく舞がランドセルを背負って出ていくと、微笑みながら玄関で見送っていた薪さんが、くるっとこっちを向いた。
「青木!何締まりのない顔してんだ!さっさとお前は仕事に行け!」
……薪さんは今日も怖くて可愛い。
4月に福岡の第八管区から異動し、第三管区の副室長になってから瞬く間に3ヶ月が過ぎた。引っ越してきた頃の柔らかい日差しは日増しに強くなって、東京は暑い夏になりそうだ。
突然増えた同居人に、最初はどことなくぎこちなかった薪さんも騒がしい環境に段々慣れてきたように思える。
1714