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    udon_xxx

    @udon_xxx

    フェリアネの成人向け二次創作はリスイン限定公開です。詳細→https://x.com/udon_xxx/status/1778033443152318715

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    udon_xxx

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    現パロのフェリアネ小説です
    小説というか状況説明にセリフを入れただけに近い

    ###フェリアネ

    3回目が本番机の上に置かれているスマホの画面が光る。教材から目を離して長方形の液晶に目をやると『フェリクス』と見慣れない文字が映し出されており、一瞬固まった。名前の下には続けて『書庫の歌とはどういうものだ』と書かれている。なんで急に書庫……? スマホを持ち上げて、名前を目でなぞりながら考えると、2日前のことに思い当たった。



    「明日友達とバーベキューをするんですけど、アネットもどうですか?」
    学食で隣に座るイングリットは、すでにチーズハンバーグを平らげていた。彼女は高校生の頃に同じ学級委員で、いつもドジしてばかりのあたしを助けてくれたひとつ年上の先輩。大学であたしたちは再会を喜び、たまに時間が合えばお昼ご飯を一緒に食べる仲になっていた。
    「同じゼミの人と、……幼馴染も参加するのですが、もしアネットの都合さえ良ければ」
    「嬉しいけど、その集まりにあたしが参加してもいいのかな?」
    「大丈夫ですよ! むしろ参加してもらわないと!」
    いつもより語気を強めて言うイングリットに驚いていると、本人も大きい声を出してしまったと気付いたのか、周りを見渡してため息をつく。
    「すみません騒いでしまって。でもアネットに参加してもらえると、私も嬉しいんです」
    「うん、大丈夫だよ。あたしも明日はバイト休みだから、参加しちゃおうかな」
    返事を聞いて喜ぶイングリットの表情は、嬉しさもあると思うけど「安堵」の方が強い気がする。……それも気のせいかなと思いながら、あたしはポテトサラダに手を出した。


    この時、あたしはイングリットの言った「幼馴染」という言葉に疑問を持つべきだった。集合場所に着いて、参加者の中にいる男を見付けた時にさっそく悔やむ。夜のように暗い髪を結っていて、鋭い眼差しで不機嫌そうな顔。間違いなくあれは、高校生の頃にあたしをいじめてきた男、フェリクスだ。
    ──あれは、あたしが早朝から学級委員の仕事で花壇に水やりをしている時のこと。周りに誰もいないのだと油断したあたしは、いいお天気でご機嫌だったのもあり、楽しく歌っていた。そのとき、部活の朝練で登校してきた生徒、……後にフェリクスという名前だと知ったんだけど、彼に歌を聴かれ、「腹が減っているのなら購買にでも行けばいい」と声を掛けられてしまう。驚いたあたしは悲鳴をあげて一目散に逃げ出し、彼に言いふらされるのではないかという恐怖心でHRの話が頭に入ってこなかった。どうにか学年が一個上の剣道部であることまで突き止めたあたしは、ある日彼を呼び出して、歌を忘れてほしいとお願いした。しかしあっけなく無理だと断られ、しかもその場であたしの歌を真顔で解説して恥をかかせにきた。その後も度々廊下ですれ違うことがあれば、「誰が川から肉と菓子を流してきたのだ」と言及して困らせてくる。とにかく埃のようにしつこいフェリクスが、あたしは苦手だった。
    「アネット、来てくれて良かったです!」
    ハッと我に返り右隣を見ると、なんだかいつもより機嫌のいいイングリットの姿があった。大量の肉が入った袋を抱えて、彼女の顔が半分見えない。
    「こちらこそ、呼んでくれてありがとう! あたしも手伝うけど、何をしたらいいのかな?」
    「大丈夫ですよ。アネットはお客様なんですから、ゆっくりしていてください」
    準備はあの男たちがやりますから!と、明らかに幼馴染であろう人たちのことを指してイングリットが説明した。イングリットとフェリクスが幼馴染であることをうっかり失念していたあたしは、またチラリとそちらへ目をやる。橙色の髪をした長身の男に絡まれているフェリクスは、いつもの不機嫌そうな顔で会話をしている。
    ──別に、彼と必要最低限の会話しかしなければなんの問題もないよね。それよりも、せっかくイングリットと遊ぶ機会ができたんだから楽しまないと!気持ちを入れ替えて、イングリットが活き活きと「あそこのお肉屋さんのお肉はバーベキューにとても合うんですよ!」と解説している話を聞くのだった。


    「お前はほんと危なっかしいな」
    最後まで会話をしないというあたしの作戦は、ドジにより失敗してしまった。バーベキューも終わり、意気揚々と手伝いを申し出たあたしは、鉄板を洗い場まで運ぶ道中に躓いて転びそうになったところをフェリクスに救出された。そしてそのまま鉄板を二人で洗うことになる。
    「手伝うにしてももっと他に向いているものがあるだろう」
    彼の言うこともごもっともであたしは項垂れながら、特に会話もなく黙々と作業をしていた。最初は歌について言及されるのではないかと怯えていたけど、意外とそんなことはなくて拍子抜けしちゃう。今日も肉を焼く担当らしいフェリクスがあたしの皿に肉を運ぶことは何度かあっても、一言も会話はなかった。思い返してみれば、高校生の頃は歌についてあれこれ聞かれることはあっても、それ以上のことは何もなかった。数年会っていなければ友達ですらなかった関係も、他人に戻ってしまうのだと泡まみれのスポンジを見つめながらぼんやり考えた。
    「おい、手が止まっているぞ」
    「ごめん!」
    「そろそろ汚れも取れただろう。濯ぐからちょっと下がってろ」
    フェリクスは蛇口を捻って水道水を出すと、汚れたスポンジを洗ってから鉄板を持ち上げて濯ぎ始める。何もすることがなくなると、ますます沈黙が絶えられない。
    ……あれ? 沈黙のままでいいはずじゃなかったっけ。
    「フェリクスも参加してたんだね」
    「まあな」
    言いながら、いやこれはフェリクスのセリフなのではと思ったけど、特に彼は気にしていない様子だった。それはそうと会話を続けるには不適切だったなと足元を見ながらソワソワする。
    「顔を合わせるのは高校以来か」
    まさかフェリクスから会話を繋げてくるとは思っておらず、顔を上げる。
    「そうだね。フェリクスってばあたしの歌のことずっとひやかしてきてたよねぇ」
    我ながら墓穴を掘るのが上手い。でも、あたしとフェリクスには歌しか接点がないのだから、仕方ないんだとひとり心の中で言い訳をした。そしてどこか居心地の悪さを感じながらフェリクスのボールを待つけど、一向に返ってこない。鉄板を見つめる彼の横顔は、相変わらず不機嫌であるか否かぐらいの違いしかわからない。不機嫌ではなさそうだけど、会話間違えちゃったかな。そう考えながらポケットからスマホを取り出そうとした。
    「ひやかしていた訳ではないのだが、お前はそう思っていたのか」
    ポケットに伸ばした手を止めてまた彼の横顔を見たけど、同じ表情だ。まるでさっき聞いたセリフが気のせいだと思ってしまうほどに。ううん、それよりも──
    「あたしの歌の歌詞がおかしいってバカにしてたんじゃないの」
    「そんなわけあるか。あれから歌が頭から離れない。川から肉が流れてくるのだろう。菓子と一緒に群れを成してな」
    一度しか聴いていない歌の歌詞を未だに覚えていることに驚愕する。思い返してみれば、フェリクスはあたしの歌詞を「おかしい」と言ったことはなかったかも。「誰が川から流しているんだ」とか「濡れていても菓子は食えるものなのか」とか、歌詞の解説を求めるようなものばかりだったような……。
    「あたしてっきりバカにされてるんだと思ってた」
    「むしろ称賛に値するだろう」
    「は!?」
    称賛だって!? 大袈裟なんじゃないかと思うけど、いつの間にか鉄板を洗い終わっていた彼の表情を見る限り、冗談ではなく本気で言っていることがわかった。腕を組んであたしの顔をじっと見る。
    「あのような歌詞は俺には思いつかない。いや、お前以外に誰も出来ないだろう。作曲家でも目指しているのか」
    わかりにくいけど、彼はあの時からずっと真面目にあたしの歌を気に入っていたらしい。それも宇宙一素晴らしいものを見たと言わんばかりの称賛ぶりで。勘違いしていた罪悪感と恥ずかしさで変な汗が出てくる。夏だから汗をかくのもおかしくない話ではあるけど。
    「ううん、あたし学校の先生になりたくて◯◯大学に通ってるの」
    「ならば、もう歌ってはいないのか」
    あたしが作曲家を目指していないとわかると、珍しく残念そうな表情をされた。その顔がどこかおかしいから、あたしは咄嗟にどうにかしなくちゃと思ってしまう。
    「趣味で歌ってはいるよ」
    だから本当のことを言ってしまったんだけど、それを聞いた彼は残念な表情から一転して、強張っていた顔が綻んだ気がする。
    ──あ、珍しいな、とどこか眩しいのに思わず目が離せなくなった。
    「そうか。……空腹の歌以外にも歌はあるのか」
    「空腹の歌じゃないよ!最近だと書庫の歌とかかな」
    「書庫の歌? どういうものだ。試しに歌ってくれないか」
    「こんなところで歌うわけないじゃない!」
    本当にひやかしてないんだよね? 普通こんな大勢いる前で歌わせようとするだろうか。でも実際目の前にいる男は、チーズハンバーグを食べる前のイングリットのように、嘘みたいにワクワクした顔をしている。それに対して嬉しいような恥ずかしいようなとむず痒い気持ちでいると、背後から声を掛けられた。
    「おふたりさ〜ん、鉄板は洗い終わったか?」
    振り返ると、フェリクスと一緒にいることが多かった長身の男性、シルヴァンがいた。BBQの時に彼とたくさん話をしたところ、どうやらイングリットやフェリクスと幼馴染らしい。
    「チッ、見ればわかるだろう。洗い終わっている」
    「全然戻ってこないから心配で来たのに酷い言い草だな〜」
    彼と会話をするフェリクスはいつもの不機嫌顔で、さっきのワクワクしていた姿はもうなくなっていた。じっとその会話を眺めていると、橙色の頭がこちらを見るなり愛想の良い笑顔を見せる。
    「片付け手伝ってくれてありがとな。それに、イングリットから聞いている以上に礼儀のいいお嬢さんで、話していて楽しかったよ」
    スラスラと相手を喜ばせるようなことを言うから、きっとどの女性にも同じようなことを言っているのだろうなと思った。あたしは苦笑いをしながら会釈をする。
    「おい、つまらないことを言っている暇があったら運ぶの手伝え。コイツが持つと転ばれるかもしれないだろう」
    そんな酷い言い方をしなくても、と思いつつ否定できないので黙ってじっとフェリクスの顔を見る
    「おいおいそんな言い方だと誤解されるぞ。怪我をさせたくないと素直に言えば──」
    「うるさい余計なことを言うな」
    ますます眉間に皺を寄せるから、いつか眉間が潰れて無くなるんじゃないだろうか。そして何故フェリクスはこうもシルヴァンに対してはあたりが強いんだろう。
    「おっと目的を忘れるところだった。また今度集まってBBQするのも悪くないかと思って、連絡先を交換して回ってるんだ。アネットも今大丈夫か」
    「うん、ちょっと待ってね」
    あたしたちが鉄板を洗い終わっている間に話が進んでいたらしい。BBQ以外にもなにかしたいよな〜と話をしながら、スマホを開いてお互いの連絡先を交換した。連絡先の一覧に『シルヴァン』という名前とかっこいい顔写真が映し出されている。こうやってスマートに連絡先を交換できるシルヴァンは、きっと女性から人気なのだろう。
    「せっかくだからフェリクスも交換しとけよ」
    シルヴァンの思いがけない提案に驚いて身体が固まる。そして、高校生の頃にフェリクスは女性に連絡先を聞かれても断っていたという噂話を思い出した。幼馴染だからフェリクスの性格も知っていそうなのに、なんでそんなことを提案してくるんだろう
    (無理しなくていいよ!シルヴァンと連絡を取ればいいだけだし!)と場をおさめるために口を開こうとすると、「わかった」と承諾の返事に遮られた。断らないんだ、と呆気に取られながらあたしはおそるおそるフェリクスと連絡先を交換する。もしかしたら、一足先に大学生になったフェリクスは、女性と連絡先を交換することに抵抗がなくなったのかもしれない。今度は『フェリクス』という名前で、初期アイコンの連絡先が液晶画面に映し出される。まさか苦手だったフェリクスと連絡先を交換するとは……。スマホの画面から目を離して顔を上げると、眩しいぐらいに青い空と、いつもの無表情で何を考えているのかわからない顔がそこにあった。



    更に言うと、あちらから連絡がくるとは思ってもいなかった。いかにも必要以上の連絡をしてこなさそうなのに。やはり彼も大学生になって何か変わったのだろうか。

    あれから歌が頭から離れない──

    あたしの歌をバカにしていると思ったら、実は気に入っていたとは驚いた話である。むしろあそこまで気に入られると、恥ずかしいけど悪い気はしない。

    それに……もしかしたらあたしの歌で、もっとフェリクスの珍しい顔が見られるかも。こうやって誤解が解けたのもイングリットのおかげだし、今度お礼も兼ねてご飯にでも誘おうかな。そんなことを考えながら、あたしはスマホのロックを解除して、フェリクスに返事をする。

    『よかったら歌ってあげようか?』



    それから月日が経ち、歌を聴かせるために会うようになった3回目のあの日から。茜空の下で顔を真っ赤に染める彼の顔が、声が、言葉が、あたしは頭から離れなくなる。



    【おまけ】

    「フェリクス〜それはないって〜〜」
    「うるさい、勝手に画面を見るな」
    不機嫌顔の幼馴染、フェリクスは俺を睨みつけながらスマホの画面を暗くする。
    「こういうときは『この間のBBQは楽しかったよ。ありがとう』から入るのが基本だろ? 既読無視されてもおかしくないぞ」
    自分でもそのメッセージはないと自覚していたのか、舌打ちだけして手に持つスマホを見つめている。これだから普段から女性と連絡をマメにしておいて、いざという時のために備えておけば良かったのに。そう言おうもんなら八つ裂きにされるかもしれない。
    「せっかく俺が作ったチャンスを棒に振るんじゃないぞ〜」
    「チッ、頼んだ覚えはない」
    「言うね〜。あの時だって話し掛ける度胸もなくてず〜〜っと肉焼いてただろ? いつ彼女にアプローチするつもりだったんだろうな」
    言われなくてもわかっていることを口出しされ、耳を真っ赤にさせている。ここまで居心地の悪そうにしている面白い顔を見られるのも珍しい。
    「……あのときは助かった。感謝する。」
    「おうよ。アネットを呼んでくれたイングリットにも礼を言うんだぞ」
    「わかってる」
    するとフェリクスのスマホからピコンと音が聞こえる。さっそくロック解除をして中を見るなり、どうやらいい返事だったらしく、どこか嬉しそうな顔をしていた。付き合いは長いけど、そういう顔を見るのは初めてかもしれない。
    「返事してくれるなんてアネットはいい娘だな〜」
    ハッと我に返ったのか、フェリクスは苦虫を噛み潰したような顔をしている。ほんとにかわいいところがあるなコイツは。
    「いいかフェリクス。3回デートしても恋人同士になれなかったら、ずっと友達のままだぞ。困ったらまた俺に相談しろよ」
    「黙れ、そういう話ではない」
    なぁにがそういう話じゃないだ! 恥を忍んでイングリットにアネットを呼ぶようお願いしたり、用もないのに自分からその子に連絡しといて、バレてないとでも思ってるのか。そんなこと強がった子を言っといて、数日後に顔を真っ赤にしながら相談してくる姿が安易に想像できる。

    かわいい弟分の、数年来の初恋は果たして成熟するのだろうか。いや、コイツはすきな娘を大事にできる優しいヤツに違いない、問題ないだろう。
    頭をワシワシと撫でると、珍しくフェリクスはされるがままだった。



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    恋愛初心者なフェリクスが、アネットと仲良くなりたいけど経験がないからアプローチが下手だったら可愛いなと思った。恥を忍んでイングリットとシルヴァンに助けを求めてほしい
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