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    夜を駆ける

    夜を駆ける

    寒いなぁ、コータス連れてきて正解だった、と鼻の頭を赤くして笑ったキバナに、カブはこの辺りだけでも温まるから助かるねと返す。ナックルシティの城門から少し離れた場所で並んで立って彼方を見る男が2人。顔を合わせた時はハッピークリスマス、年末までお疲れ様、と言い合った。随分と冷え込むのでカブは分厚いコートにキャンプウェアを合わせている。キバナも同じ。人間たちにはおのおの用事がある日だが、そんなことは野生のポケモンたちには関係の無いことで、だから毎年誰かがこうしてワイルドエリアの巡回に出なければならなかった。一昨年も、去年も、今年も、結果的に同じ面子になったのだが、流石に三年連続なので疑問になってカブはキバナに声を掛けた。
    「キバナくんは、家族と過ごさなくていいのかい?」
    ガラルのクリスマスといえば、家族の時間だといくらカブでも知っている。だからこそ余計に独り身の自分がこの役を買って出るのは当然と思っていたし、代わりにホウエン流の三ヶ日は休ませてもらうようになっている。勿論緊急事態であれば出動もあるが、オフシーズンのジムの仕事は殆どトレーナーたちに任せていた。
    キバナはというと、驚いた顔をしてから、確かになと声に出した。
    「俺様も一人暮らし長いんで、あんまり意識してなかったな、帰るには遠いんですよ。実家」
    「へぇ、そうだったの」
    「女の子に誘われるのも最近面倒だし、今年は色々あったから、リョウタ達に休んでもらいたかったってのもあります」
    あいつらに言うとまた変に気を使うから、俺様とカブさんの秘密ですよ?、へらりと笑った彼の顔を見上げる。そうかそうかと自分も笑顔がうつるのがわかった。
    2匹のコータスは煙を上げながら静かにしている。カブがその煙に掌を翳して温めているのを見たキバナは、背中を丸めた。
    「カブさん、寒いんですか?」
    そう言いながら彼の褐色の掌が伸びてきてカブの手を包む。汗で柔らかく湿った手のひらで包まれたので驚いたがキバナとの距離感はいつもこんなものだ。
    「カブさんのほうが冷たいの珍しいから嬉しいな、」
    「君こそ寒がりなのに珍しいね」
    「今日は防寒対策バッチリしてきたので!バクガメスを整備する時の断熱手袋してきたからぬくいの」
    「そうだったのか」
    コータスがいるからつい油断してしまったよ、そう言うカブの頬の上も、鼻の頭も同じように赤い。雪がなくても十二月、何はなくとも気まぐれなワイルドエリアだ、対策を打つのは当たり前だったのに今日はキバナが来るからと他のいろいろな話題のことで頭がいっぱいになって忘れてしまったものも多い。彼とポケモンの話をするのはカブにとっても楽しい時間なのだった。

    ふと、視界に影ができる。つめたく冷えている頬に、柔らかいものが触れて、離れていく。
    「……?」
    「つめたぁ、カブさん、ほっぺたとか覆う帽子買った方がいいんじゃない?本当に風邪ひいちゃうよ」
    「?……そう、だね」
    「手もほっぺたも冷たいんじゃ、カブさんちの子も心配するぜ」
    「いや、キバナくん、……うん、」

    そうだーー自分の勘違い、かもしれないし、ただの挨拶かもしれないのでそれ以上言及するのは止そう。ガラルの人たちは距離が近いので仕方ない、きっと挨拶だ、そうに違いない。

    (流石に、唇でキスされるのは、心臓にわるいな)

    風のざわめきが聞こえ出す頃、遠くに赤い光柱が見えてキバナがフライゴンのボールを構えた事で、カブの思考は寸断され、2人は暗い夜に駆け出すことになった。
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