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    Norskskogkatta

    @Norskskogkatta

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    Norskskogkatta

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    以前に書いた飲み会に残って主を待ってる大倶利伽羅の面倒を見ていた鶴丸、のその後の主くり
    酔っ払ってふにゃふにゃしてる大倶利伽羅がいます

    ##君とひととせ

    だれのもの酔っ払った大倶利伽羅に肩を貸して大広間を抜け出す。体格差はほとんどないとはいえ、半分意識のない引き締まった肉体は重い。
    「ほら、部屋帰るぞ」
    鶴丸に知らない振りをしてくれと言ったが酔っ払い相手をどうこうするつもりはなかった。だから自室とは逆方向にある大倶利伽羅の部屋へと方向転換しようとしたのだが身体が動かない。ぐでんと力なくうなだれていると思った大倶利伽羅が足を踏ん張ったのだ。
    「おーい、起きてるなら自分で歩けー」
    「……やだ」
    「やだって……」
    「あんたのへやにいく」
    子どもみたいにぐずり始めたが力は大倶利伽羅の方が強いし体幹が良すぎて引きずっていくこともできない。
    口調はふにゃふにゃとしているのにぐいぐいとこちらを引っ張っていく。引きずられながらどうやってこの酔っ払いを寝かしつけようかと考えているうちに足が止まった。
    襖を開け放つと大倶利伽羅が耳を赤くしたように見えた。酒が入っているからすぐさま寝るだろうと予想して布団を敷いていたのだが、あらぬ誤解をされたらしい。実は酔っていないんじゃないかという力強さで部屋の中へと引っ張り込まれ布団に押し倒される。
    「あんただってその気だったんだろ」
    溶けた金色に見下ろされるとどうにも弱い。つい頬に手を伸ばせばすり寄ってきて、満足そうに金を細めてから跨ったままぱたりと上に落ちてきた。
    「おーい、重いから寝るなら隣にしてくれよ」
    「ねない」
    「そんなふにゃふにゃでいわれてもな」
    「どこでねるかはおれがきめる……めいれいにはおよばない」
    結局寝るのかとぐずる大倶利伽羅に笑いが溢れる。
    しっかりと全身をかけて上にのり、ぐりぐりと頭を押しつけ全身で抱きついてくる子供みたいな行動に反論するよりも、滅多にない甘えるような仕草に絆されそうになる。
    鶴丸に限った話ではないが、旧知の伊達の刀たちにはどこか甘えが見え隠れする大倶利伽羅をたまに見かけることがある。そのたびにちょっとしたささくれのようなものに胸の奥を刺されることがあった。
    今日も一人酒が進んでいたらしい大倶利伽羅の様子を見に来た鶴丸に気を許していたのかと思うと心が狭いなと自覚してしまう。
    胸の上で眠ってしまいそうな大倶利伽羅の髪をふわふわと梳きながらたまらず息を吐いたときだった。
    「おれは、あんたのか」
    「え?」
    「おれはちゃんとあんたのものでいられてるのか」
    「ものっていうか、大倶利伽羅は俺の恋びとだと思ってるけど」
    思わず撫でる手が止まってしまう。催促するように鎖骨あたりに頭をぐりぐりと擦り付けてくる。
    「あんたは他の刀のあるじでもあるだろ」
    「そうだな」
    「きょうもいろんなやつにちやほやされていた」
    「ちやほやっていうか、毎日は話せないから飲みながら話してただけで」
    「……おれと話すよりもたのしかったのか」
    またぐりぐりと、さっきより強めに額を擦り付けられる。背中をがっしりと掴まれていて、ようやくほったらかしにしていたせいで拗ねているのだと気がついた。
    「誰と話しても楽しいよ。もちろん大倶利伽羅とも」
    「俺ははなさない」
    「そんなことないだろ。まあ、端的ではあるけど」
    満足いく返事ではなかったらしく、服越しに背中に爪を立てられた。珍しく思いながらも、ちょっとぞぐっときたことを隠して聞きたかったことを口にする。
    「……大倶利伽羅こそ、鶴丸となに話してたんだ」
    「つるまる……? 特には話してない。あんたがおそいとなとはいっていた」
    やっぱり鶴丸にはいろいろと筒抜けてそうだと天を仰ぎながら寝そうになっている大倶利伽羅の背中をぽんぽんとたたく。
    「ふたりきりだったから、昔の話でもしてるのかと思ったよ。それは俺とじゃできないから」
    「……? 伊達にあったときだとあんたはまだ赤子ですらないだろ……」
    ふにゃふにゃした大倶利伽羅の頭上にクエスチョンマークが浮かんでいるのが見なくてもわかった。そのせいでささくれていた心が和んでしまった。
    「うん、そうだな。どうしたってその時の大倶利伽羅を俺は知らないから、それを知ってるんだなあと思ったらちょっと悔しかったんだよ」
    出すつもりのなかった内心を吐露すると大倶利伽羅の動きが止まる。数秒間があってから、ゆっくりと頬を鎖骨に押し当ててきた。首筋に呼吸をしている湿った吐息がかかるのがくすぐったい。
    「それとさっきの言葉、あんたは俺のものだ、じゃないんだなって」
    「……あんたはものじゃない」
    「大倶利伽羅のものにはしてくれないのか」
    少しだけ起き上がって額をごつりとぶつけると酒が抜け切らないのか純度の低い金色でこちらを見る。
    「……あんたをものにしたいわけじゃない。おれがあんたのものでいたい」
    「うーん?」
    今度はこちらが頭上に浮かべる番だった。
    本来が刀であるからなのか、人の考え方とは違うことを言う。今回も物特有なのだろうかと首を傾げていると背中にあった手が離れて頬を包まれる。真っ直ぐと見つめ合うようになると大倶利伽羅が薄い唇を開いた。
    「あんたがさにわである以上、おれひとりのものにならないのはわかってる。だからおれがあんたの特別でありたい」
    苦しそうな表情で、いつもは芯のある低い声が震えている。胸が締め付けられる。
    どういう経緯かはわからないが、慣れ合わないと決めているはずの刀にこんなことを言われたらたまらなくなるに決まってる。身体が突き動かされて目の前の身体を力一杯抱きしめれば、大人しくされるがまま。細く見えて筋肉質でしなやかで、びくともしない身体が愛おしくてかなしかった。
    大倶利伽羅は刀剣男士である。それをまざまざと感じながら首筋に顔を埋めた。どくどくと生きている音がするのにこの男は審神者である自分が励起した存在なのだ。
    「おい、くるしい」
    「うん」
    「…………おれはちゃんとあんたのものか」
    「大倶利伽羅は俺のものだよ」
    そう返してやっと満足したのか首の後ろに手がまわって抱きしめられた。温かい腕の中は泣きたくなるほど優しかった。
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    Norskskogkatta

    Valentine主くり♂くり♀のほのぼのバレンタイン
    料理下手なくり♀が頑張ったけど…な話
    バレンタインに主にチョコ作ろうとしたけどお料理できないひろちゃんなので失敗続きでちょっと涙目で悔しそうにしてるのを見てどうしたものかと思案し主に相談して食後のデザートにチョコフォンデュする主くり♂くり♀
    チョコレートフォンデュ一人と二振りしかいない小さな本丸の、一般家庭ほどの広さの厨にちょっとした焦げ臭さが漂っている。
    執務室にいた一振り目の大倶利伽羅が小火になってやいないかと確認しにくると、とりあえず火はついていない。それから台所のそばで項垂れている後ろ姿に近寄る。二振り目である妹分の手元を覗き込めば、そこには焼き色を通り越して真っ黒な炭と化した何かが握られていた。
    「……またか」
    「…………」
    同年代くらいの少女の姿をした同位体は黙り込んだままだ。二振り目である廣光の手の中には審神者に作ろうとしていたチョコレートカップケーキになるはずのものがあった。
    この本丸の二振り目の大倶利伽羅である廣光は料理が壊滅的なのである。女体化で顕現したことが起因しているかもしれないと大倶利伽羅たちは考えているが、お互いに言及したことはない。
    2051

    recommended works

    Lupinus

    DONE男審神者×五月雨江(主さみ)の12/24
    つきあってる設定の主さみ クリスマスに現世出張が入った話 なんということもない全年齢
    「冬の季語ですね」
    「あっ、知ってるんだね」
    「はい、歳時記に記載がありましたので。もっとも、実際にこの目で見たことはありませんが」
    「そうだよね、日本で広まったのは二十世紀になったころだし」
     さすがに刀剣男士にとってはなじみのない行事らしい。本丸でも特にその日を祝う習慣はないから、何をするかもよくは知らないだろう。
     これならば、あいにくの日取りを気にすることなくイレギュラーな仕事を頼めそうだ。
    「えぇとね、五月雨くん。実はその24日と25日なんだけど、ちょっと泊まりがけで政府に顔を出さないといけなくなってしまったんだ。近侍のあなたにも、いっしょに来てもらうことになるのだけど」
     なぜこんな日に本丸を離れる用事が入るのかとこんのすけに文句を言ってみたものの、12月も下旬となれば年越しも間近、月末と年末が重なって忙しくなるのはしょうがないと押し切られてしまった。
     この日程で出張が入って、しかも現地に同行してくれだなんて、人間の恋びとが相手なら申し訳なくてとても切り出せないところなのだが。
    「わかりました。お上の御用となると、宿もあちらで手配されているのでしょうね」
     現代のイベント 1136

    Norskskogkatta

    PAST主くり編/支部連載シリーズのふたり
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀
    審神者視点で自己完結しようとする大倶利伽羅が可愛くて仕方ない話
    刺し違えんとばかりに本性と違わぬ鋭い視線で可愛らしいうさぎのぬいぐるみを睨みつけるのは側からみれば仇を目の前にした復讐者のようだと思った。
    ちょっとしたいたずら心でうさぎにキスするフリをすると一気に腹を立てた大倶利伽羅にむしりとられてしまった。
    「あんたは!」
    激昂してなにかを言いかけた大倶利伽羅はしかしそれ以上続けることはなく、押し黙ってしまう。
    それからじわ、と金色が滲んできて、嗚呼やっぱりと笑ってしまう。
    「なにがおかしい……いや、おかしいんだろうな、刀があんたが愛でようとしている物に突っかかるのは」
    またそうやって自己完結しようとする。
    手を引っ張って引き倒しても大倶利伽羅はまだうさぎを握りしめている。
    ゆらゆら揺れながら細く睨みつけてくる金色がたまらない。どれだけ俺のことが好きなんだと衝動のまま覆いかぶさって唇を押し付けても引きむすんだまま頑なだ。畳に押し付けた手でうさぎを掴んだままの大倶利伽羅の手首を引っ掻く。
    「ぅんっ! ん、んっ、ふ、ぅ…っ」
    小さく跳ねて力の抜けたところにうさぎと大倶利伽羅の手のひらの間に滑り込ませて指を絡めて握りしめる。
    それでもまだ唇は閉じたままだ 639

    Norskskogkatta

    PAST主くり
    リクエスト企画で書いたもの
    ちいさい主に気に入られてなんだかんだいいながら面倒を見てたら、成長後押せ押せでくる主にたじたじになる大倶利伽羅
    とたとたとた、と軽い足音に微睡んでいた意識が浮上する。これから来るであろう小さな嵐を思って知らずため息が出た。
    枕がわりにしていた座布団から頭を持ち上げたのと勢いよく部屋の障子が開け放たれたのはほぼ同時で逃げ遅れたと悟ったときには腹部に衝撃が加わっていた。
    「から! りゅうみせて!」
    腹に乗り上げながらまあるい瞳を輝かせる男の子どもがこの本丸の審神者だ。
    「まず降りろ」
    「はーい」
    咎めるように低い声を出しても軽く調子で返事が返ってきた。
    狛犬のように行儀よく座った審神者に耳と尻尾の幻覚を見ながら身体を起こす。
    「勉強は終わったのか」
    「おわった! くにがからのところ行っていいっていった!」
    くにと言うのは初期刀の山姥切で、主の教育もしている。午前中は勉強の時間で午後からが審神者の仕事をするというのがこの本丸のあり方だった。
    この本丸に顕現してから何故だか懐かれ、暇があれば雛のように後を追われ、馴れ合うつもりはないと突き離してもうん!と元気よく返事をするだけでどこまでもついて来る。
    最初は隠れたりもしてみたが短刀かと言いたくなるほどの偵察であっさり見つかるのでただの徒労だった。
    大人し 1811

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    極になって柔らかくなった大倶利伽羅に宣戦布告する片想いしてる主
    ポーカーフェイスの君にキスをしよう


    「大倶利伽羅」

    ひとつ呼ぶ。それだけで君は振り向いて、こちらを見てくれる。
    それだけでどうしようもなく締め付けられる胸が煩わしくて、ずたずたに切り裂かれてしまえとも思う。

    「なんだ」

    いつもと変わらぬ表情で、そよ風のように耳馴染みの良い声がこたえる。初めて顔を合わせた時より幾分も優しい声音に勘違いをしそうになる。
    真っ直ぐ見つめる君に純真な心で対面できなくなったのはいつからだったっけ、と考えてはやめてを繰り返す。
    君はこちらのことをなんとも思っていないのだろう。一人で勝手に出て行こうとした時は愛想を尽かされたか、それとも気づかれたのかと膝から力が抜け落ちそうになったが、4日後に帰ってきた姿に安堵した。
    だから、審神者としては認めてくれているのだろう。
    年々距離が縮まっているんじゃないかと錯覚させるような台詞をくれる彼が、とうとう跪座までして挨拶をくれた。泣くかと思った。
    自分はそれに、頼りにしていると答えた。模範的な返しだろう。私情を挟まないように、審神者であることを心がけて生きてきた。

    だけど、やっぱり俺は人間で。
    生きている限り希望や 1288

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり

    共寝した次の日の寒い朝のおじさま審神者と大倶利伽羅
    寒椿と紅の花
     
     ひゅるり、首元に吹き込んだ冷気にぶるりと肩が震えた。腕を伸ばすと隣にあるはずの高すぎない体温が近くにない。一気に覚醒し布団を跳ね上げると、主がすでに起き上がって障子を開けていた。
    「あぁ、起こしてしまったかな」
    「……寒い」
    「冬の景趣にしてみたのですよ」
     寝間着代わりの袖に手を隠しながら、庭を眺め始めた主の背に羽織をかける。ありがとうと言うその隣に並ぶといつの間にやら椿が庭を賑わせ、それに雪が積もっていた。
     ひやりとする空気になんとなしに息を吐くと白くなって消えていく。寒さが目に見えるようで、背中が丸くなる。
    「なぜ冬の景趣にしたんだ」
    「せっかく皆が頑張ってくれた成果ですし、やはり季節は大事にしないとと思いまして」
     でもやっぱりさむいですね、と笑いながらも腕を組んだままなのが気にくわない。遠征や内番の成果を尊重するのもいいが、それよりも気にかけるべきところはあるだろうに。
    「寒いなら変えればいいだろう」
    「寒椿、お気に召しませんでしたか?」
     なにもわかっていない主が首をかしげる。鼻も赤くなり始めているくせに自発的に変える気はないようだ。
     ひとつ大きく息 1374

    Norskskogkatta

    MOURNINGさにちょも
    桃を剥いてたべるだけのさにちょも
    厨に行くと珍しい姿があった。
    主が桃を剥いていたのだ。力加減を間違えれば潰れてしまう柔い果実を包むように持って包丁で少しだけ歯を立て慣れた手付きで剥いている。
    あっという間に白くなった桃が切り分けられていく。
    「ほれ口開けろ」
    「あ、ああ頂こう」
    意外な手際の良さに見惚れていると、桃のひとつを差し出される。促されるまま口元に持ってこられた果肉を頬張ると軽く咀嚼しただけでじゅわりと果汁が溢れ出す。
    「んっ!」
    「美味いか」
    溺れそうなほどの果汁を飲み込んでからうなづいて残りの果肉を味わう。甘く香りの濃いそれはとても美味だった。
    「ならよかった。ほら」
    「ん、」
    主も桃を頬張りながらまたひとつ差し出され、そのまま口に迎え入れる。美味い。
    「これが最後だな」
    「もうないのか」
    「一個しか買わなかったからな」
    そう言う主に今更になって本丸の若鳥たちに申し訳なくなってきた。
    「まあ共犯だ」
    「君はまたそう言うものの言い方を……」
    「でもまあ、らしくないこともしてみるもんだな」
    片端だけ口を吊り上げて笑う主に嫌な予感がする。
    「雛鳥に餌やってるみたいで楽しかったぜ」
    「…………わすれてくれ」
    差し 588

    Norskskogkatta

    MOURNINGさにちょも
    寝起きの身支度を小鳥に邪魔されるちょもさん

    #さにちょもいっせーのせい
    こちらのタグに参加させていただいたときのもの
    まだ空が白んでまもない頃、山鳥毛はいつもひとり起き出している。それがただ枕を並べて寝るだけでも、体温を混ぜあって肌を触れ合わせて眠る日も変わらず審神者より先に布団を抜けだす。
    今日もまたごそりと動き出した気配に審神者は目を覚ました。

    「こんな朝から、なにしてんだ……」
    「……起こしてしまったか、まだ日が昇るまで時間がある。もう少し眠るといい」

    そういって山鳥毛が審神者の短い髪を撫でるとむずがるように顔をくしゃくしゃにする。やはりまだ眠いのだろうと手を離そうとするとそれを予見していたかのように手が捕まえられた。

    「おまえも、ねるんだよ」
    「だが、身支度が」

    山鳥毛の戦装束は白銀のスーツにネイビーのシャツと普段の手入れが欠かせないものだ。
    彼が巣と呼ぶ本丸を統括する審神者たる小鳥の隣に並ぶならば、いついかなる時も気の抜けた身なりではいられない。それが前夜どれだけ小鳥の寵愛を受けようとも。
    だからこそ、小鳥の甘えるような仕草に胸を矢で貫かれそれを受け入れ甘やかしてやりたいと思っても心を鬼にして手を離さなければと外そうとした。

    「俺がおまえと寝たいの。だから大人しく来い」
    「……小鳥 751

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    重陽の節句に菊酒を作る大倶利伽羅と、それがうれしくて酔い潰れる主
    前半は主視点、後半は大倶利伽羅視点です
    『あなたの健康を願います』

    隣で動く気配がして意識が浮上する。布団の中で体温を探すも見つからない。眠い目蓋を持ち上げると腕の中にいたはずの大倶利伽羅がいなくなっていた。
    「……起こしたか」
    「どうした、厠か……」
    「違う、あんたは寝てろ。まだ夜半を過ぎたばかりだ」
    目を擦りながら起き上がると大倶利伽羅は立ち上がって部屋を出て行こうとする。
    なんだか置いていかれるようで咄嗟に追いかけてしまった。大倶利伽羅からは胡乱な目で見られてしまったが水が飲みたいと誤魔化しておいた。
    ひたひたと廊下を進むと着いた先は厨だった。
    「なんだ、水飲みに来たのか」
    「それも違う」
    なら腹でも空いたのだろうか。他と比べると細く見えても戦うための身体をしているのでわりと食べるしなとぼんやりしているとどこから取り出したのかざるの上に黄色い花が山をなしていた。
    「どうしたんだそれ」
    「菊の花だ」
    それはわかる。こんな夜更けに厨で菊の花を用意することに疑問符を浮かべていると透明なガラス瓶を取り出してそこに洗った菊の花を詰めはじめた。さらに首を捻っていると日本酒を取り出し注いでいく。透明な瓶の中に黄色い花が浮かんで綺麗 3117

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    たまには大倶利伽羅と遊ぼうと思ったら返り討ちにあう主
    とりっくおあとりーと


    今日はハロウィンだ。いつのまにか現世の知識をつけた刀たちによって朝から賑やかで飾り付けやら甘い匂いやらが本丸中にちらばっていた。
    いつもよりちょっと豪華な夕飯も終えて、たまには大倶利伽羅と遊ぶのもいいかと思ってあいつの部屋に行くと文机に向かっている黒い背中があった。
    「と、トリックオアトリート!菓子くれなきゃいたずらするぞ」
    「……あんたもはしゃぐことがあるんだな」
    「真面目に返すのやめてくれよ……」
    振り返った大倶利伽羅はいつもの穏やかな顔だった。出鼻を挫かれがっくりと膝をついてしまう。
    「それで、菓子はいるのか」
    「え? ああ、あるならそれもらってもいいか」
    「……そうしたらあんたはどうするんだ」
    「うーん、部屋戻るかお前が許してくれるなら少し話していこうかと思ってるけど」
    ちょっとだけ不服そうな顔をした大倶利伽羅は文机に向き直るとがさがさと音を立てて包みを取り出した。
    「お、クッキーか。小豆とか燭台切とか大量に作ってたな」
    「そうだな」
    そう言いながらリボンを解いてオレンジ色の一枚を取り出す。俺がもらったやつと同じならジャックオランタンのクッキーだ。
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