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    伊藤ようこ

    @nukegara123

    マイト・ガイ大好き。
    🍆攻固定🍛受固定
    🍆のお父さん生存ifの🌾🍛も大好き

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    伊藤ようこ

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    日常の一コマ。カカシ烈伝を読んで考えました。

    (なんだかいつもより疲れたな…首が痛む…)
    予定よりも長引いてしまった任務に疲労感を覚えつつ、カカシは部下を伴って里への路をひた走っていた。
    真っ黒な森は、どこまでもどこまでも続いているような気持ちにさせる。
    このままこの暗くジメジメとした場所から抜けられなくなったらどうしようか…
    そんな突拍子もない事を考えたのは忍になってから初めてだった。
    (しっかりしろ、隊長)
    自らの頬をひとつ、平手で打つとカカシは更に足を早めた。


    「今日はもうここ解散にしよう。みんな早く帰って体を休めてくれ…」
    あうんの門の前で解散し、任務報告書を提出すると、カカシは人気の無い道を一人歩き始めた。東の空が明るくなりはじめ、朝日が四つある火影岩を照らす。微笑みをたたえる師の顔は輝いて見えた。
    「ただいま…」
    そっと扉を開け、小さな声で帰宅を告げる。
    「おかえり、カカシ」
    すると台所から返事が返ってきた。
    「…父さん?」
    何故かはわからない。だが、父親が生きてここにいる事に疑問が湧き、語尾が上がってしまった。
    「おはよう。おつかれさん」
    「あ…うん…おはよう、父さん…」
    けれどサクモの優しい微笑みを見るとその感覚は一瞬でどこかに消えていった。

    「父さんはもう朝飯食ったの?」
    「ああ、私は先に食べた。これから家を出るよ。帰りは明日になる。カカシ、少し食べてから寝なさい」
    「うん…」
    手を洗い、卓袱台の前で胡座をかく。
    「いってきます」
    「いってらっしゃい」
    玄関から聞こえてきた声に返事をすると、湯気を立てている料理を眺めて手を合わせ、箸と汁碗を手に取った。



    次の任務は明後日からなので少し仮眠をとって、昼からはのんびり里内をぶらついて、久しぶりに映画でも観てすごそうか…そんな事を考えながら布団に横になる。眼を閉じると普段は特別寝付きが良い方ではないのに今朝に限ってあっさりと眠りの淵に引きずり込まれていった。結局、途中でうとうとと何回か意識が戻りかけては寝る、を繰り返して昼には起きられなかった。

    カカシの脳はけたたましく扉を叩く音で覚醒し始めた。
    (ああ…またアイツか…しょうがないな…明日は1日休みだし久しぶりに勝負に付き合ってやるか…)
    自分を包み込んでくれていた柔らかな布団から身を起こし、目元を擦りながら玄関に向かう。
    扉を開けるとそこにはオビトとリンが立っていた。アイツじゃない…アイツ?誰だ…いや、それより
    「…えっと…オビト?…に…リン?………なんで?」

    なんで(生きてる)んだ…?

    頭に浮かんだ(なんで)の先の言葉の不穏さに一瞬心が凍った。
    「なんでじゃねえよ。遅刻魔のお前をわざわざ迎えに来てやったんだよ!」
    が、オビトのカカシに突っかかるような口振りにすぐに我に返った。プリプリと怒るオビトをまあまあとリンがなだめている。
    「カカシ、早く支度して。もう4時半よ。今日は遅刻しちゃダメなの。アスマと紅の大事な日なんだから」

    アスマ…?

    アスマも生きてたっけ?………いや生きていてもおかしくない。死んでると思う方がおかしいんだ。父親と、この二人の顔を見た時と同じ感覚。何故そんな風に考えたのか…その気持ちが顔に出たのだろうか、リンが不審そうな顔をしている。
    「どうしたの?カカシ。二人の婚約パーティーは同期全員で集まろうって話だったでしょ?忘れてた?」
    「おい…お前の任務明け日にオレがわざわざ設定して皆を集めたん…」
    「さあ、早く顔を洗って支度なさい」
    更に恩着せがましくなるオビトの発言を遮り、素早くブーツを脱ぐとリンは『勝手知ったる他人の家』と言わんばかりにカカシの腕を引き、洗面所へと入っていった。


    銀色の固い髪に、厚めの瞼。
    真っ黒な両の瞳でじっと自分の顔を見つめる。見慣れているはずなのに、なんだか違和感を感じた。
    (それにしてもオレ、年々父さんに似てくるな…)
    傷一つない滑らかな肌に残された紫色の隈を撫でながらカカシは思った。


    婚約パーティーといっても場所はいつもの焼肉Q。普段の飲み会とさして変わりはない。それでも、髪をアップにして華やかな色のワンピースを見に纏った美しい紅と「今頃七五三か?」と、からかわれつつも立派な体躯をスーツで包んだアスマが二人で並んで幸せそうなオーラを出しているのを見ていると自然と口許がほころぶ。
    同期のメンバーたちは二人を心から祝福している。
    「同期組の中で次は誰が結婚するのかな」
    誰かが言った何気ない一言に、カカシの右隣に座っていたオビトが肩をびくり、と跳ねさせた。
    「どうした、オビト君?」
    千本を揺らしながらゲンマがにやついている。
    「お前、リンとはどうなって…」
    「うるさい!黙れ!」
    オビトは真っ赤になってわめいた。
    「そもそも付き合ってくれって言ったのか?」
    「え?まだ付き合ってないんですか?」
    「いつも一緒にいるのに?」
    親しい同期達のからかいを含んだ問いに、少し離れた場所で紅と喋っているリンへと視線を向けてオビトはモゴモゴと小さな声で答えた。
    「一緒にいるって言っても…二人きりで会いたくてもなんだかんだカカシを呼ばれちまうし………それに付き合ってくれって言うのはオレが上忍試験に受かってからって決めてるから…」
    その湿った熱い視線に気がついたのか、リンが振り向いた。
    「カカシ~っ飲んでる~?」
    アルコールで上気した頬を緩ませ、笑いながら彼女はふらふらとやってきてカカシの左隣に腰かけた。
    「ねえねえ、何を話してたの~?」
    「次は誰の結婚が決まるかな、って話さ」
    俯いているオビトを横目で見ながらゲンマが言う。
    「………そうね、私じゃなさそうなことだけは分かるわ。私には…一生その番は回ってこないかもしれない…」
    チラリ、とほんの一瞬だけカカシに向けて悲しそうな色の視線を投げてから、リンはいつも通りの明るくて、可愛くて、優しい女の子の顔を作った。
    「な~んてね!今日は紅とアスマの話で盛り上がらないと!皆!飲も!」


    楽しい時間がだいぶ過ぎ、各々テーブルを自由に移動し始める。ふと気づくとカカシの前にはエビスしか居なくなっていた。ようやく少しだけ酔いが回りかけたカカシは何杯目かわからないジョッキをテーブルに置くとエビスに問うた。
    「ねえ…今日の面子…誰か足りなくない?」
    なんとなく、なんとなくそんな気がしていた。
    「なんかさ…こう、もっと騒がしいやつがさ…いなかったっけ?」
    騒がしくて、声が大きくて、顔も動きも暑っ苦しくてうるさくて、おせっかいで、涙もろくて…こんな時に真っ先に大泣きしてあの二人の結婚を祝いそうな男が………
    (頼む、エビス…言ってくれ、そうですね今日は一人足りませんね、って…)
    すがるようなカカシの目には気が付かないのだろう。エビスはサングラスのブリッジを持ち上げながら答えた。
    「何を言っているんです?今日はいつものメンバーが欠けることなく参加していますよ」

    カカシの言い知れぬ不安感は最大限に達した。沸き上がる気持ちを抑えることが出来ず、焼肉Qを飛び出した。

    なんだ?何が足らないんだ?それは自分にとってとても大切なもののはずだ。それなのに何なのかすらわからない。
    早く、早くここから逃げないと。逃げる?何故?どこに向かって?とにかくここは自分が居るべき場所ではない。だって、アイツがいない。アイツ?誰だ?それは………


    「あっ!」
    「すみません!」
    夢中で走っていたので、曲がり角で出会い頭に人にぶつかってしまった。道に倒れかけた相手の腕を咄嗟に取る。顔を見ると、黒い髪を一本三つ編みにし、太く黒い眉にまん丸な目をした青年だった。
    「大丈夫ですか?」
    「ええ、大丈夫です…配達する荷物も無事です…」
    彼は配送会社の制服を着ていた。
    「申し訳ない」
    「本当に大丈夫です。さすが忍の方ですね…反応が素早い…ではこれで」
    ボクも忍になりたかったなあ…小さく呟いて彼は荷物を抱えて街中へと消えていった。

    その後ろ姿を呆然と見つめながらカカシは夜の街に立ち尽くしていた。




    「おい、カカシ、大丈夫か?」
    両目を開くと、薄明かりの中、心配そうにカカシの顔を覗き込む男がいた。
    ガイだ。マイト・ガイ。騒がしくて、声が大きくて、顔も動きも暑っ苦しくてうるさくて、おせっかいで、涙もろくて…愛おしい、オレの大切な人。
    「あぁ…うん、大丈夫だよ…」
    肩に触れていた手に、自分の掌を重ねる。
    「なんか…嫌な夢を見ちゃった…」
    そのまま重ねた掌を取り、ちゅ、と音を立てて指先に口づけた。
    「すまん、オレが入眠の点穴を強く刺激しすぎたか」
    それはカカシがアカデミー校長イルカから聞いてきた安眠導入の裏技というやつだった。場所が首の裏側だったので上手く自分で突くことが出来るか分からなかったので、ガイに突いてもらったのだった。
    「素人には力の加減が難しいもんだな…すまん」
    しゅん、と太い眉毛が下がってしまっている。
    「いや、本当に大丈夫だよ…きっと正確に突くにはコツがいるんだろうね…点穴のことはヒナタに聞いた方が詳しく教えてもらえそう」
    「ム…」
    「ま、当分この入眠の…ってやつはしなくていいかな…」
    まだ心配そうな顔をしているガイの体をゆっくりと布団の上に押し倒し、厚いその胸に頬を押し付けながらカカシは言った。
    「オレは眠る時はお前に背中をトントンしてもらう方のがいいや…」


    ☆おしまい☆
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