お祭り 繁華街を抜け、大通りの交差点を左に曲がると、その先は住宅街へと続く通りになっていた。前に進めば進むほどに大きな建物が少なくなり、アパートや一軒家のような住宅が増えていく。さらに十分ほど歩を進めると、辺りは見渡す限りの一軒家に変化した。道路が少しずつ狭くなってくると、その先には僕の家の並ぶ一角が見えてくる。
いつものように住宅街の角を曲がろうとして、僕は不意に足を止めた。住宅エリアへと足を踏み入れた辺りから、どこからか奇妙な音が聞こえてきたのだ。身体の底に響くような低い音が、一定の間隔で繰り返されている。しばらくその場で耳を澄ませているうちに、それが太鼓の音であることが分かった。
リズムよく繰り返される重低音を聞きながら、僕は頭の隅で考える。そういえば、夏休みが始まってしばらくしたこの季節は、世間一般ではお祭りシーズンだった。この前にはシティの花火大会があったから、今度は地域の盆踊りがあるのだろう。きっと、今公園の近くを通りかかれば、お祭りのセットが見られるはずだ。
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