七夕 ショッピングモールの一階に位置する、上下のエスカレーターが並べられた中央のエリアには、小さなイベントスペースが設置されていた。専門店ひとつ分くらいのスペースを使って、県外の有名店や物産展が期間限定の店舗を出展したり、絶賛売り出し中のアーティストが小規模なライブをしたりしているのだ。季節の行事が近づいてくると、作り物を用意して子供向けのイベントを展開したりもしている。学校に通わなくなって久しい僕にとっては、こういうイベントスペースも季節を感じる貴重な情報源だった。
その日、エスカレーターに向かった僕たちの視界に飛び込んできたのは、天井まで届きそうなほどの緑色の物体だった。近くには横長のテーブルがいくつか並べられていて、四角いケースとペンの入った箱が置かれている。少し離れた机の隅では、小学生くらいの子供が真剣に何かを書き込んでいた。不思議に思いながら近づいていって、僕はようやくその設備の正体を理解する。
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