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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    勢いで書いてしまった文章です。破滅の未来を生きる英雄と周囲の人々の日常の話。捏造しかない未来組本編軸です。

    ##本編軸

     灰色の大地を、赤いDホイールが疾走する。隣には巨大なドラコンが浮かび、真っ直ぐに前方を睨み付けている。進路の先に構えているのは、巨大な身体を持つ機械の兵隊だ。それはゆっくりとした動きで目標を捉えると、光の光線を発した。
     Dホイールは、進路を大きく変えてそれを避ける。ドラコンが寄り添うように身を翻した。隣から青色のDホイールが現れて、機械の視線を誘導する。機械が青いDホイールを狙い、光線を放つと同時に、赤いDホイールの搭乗者が声を上げた。
    「スターダスト・ミラージュ」
     ドラコンが、真っ直ぐに機械に突っ込んでいく。眩しい光が瞬いて、機械から煙が吹き出した。辺り一面が煙に覆われる。しばらくすると、煙を切り裂くように青いDホイールが飛び出してきた。
     Dホイールを止め、被っていたヘルメットを外す。青い髪の男の顔が現れた。煙の消え始めた戦場を振り返ると、大きな声で叫ぶ。
    「遊星!」
     返事は無い。しかし、男は少しも焦ってはいなかった。まるで、もう一人の無事を確信しているかのように、真っ直ぐに前を眺めている。
     煙の中から、ドラゴンが姿を現した。男の前へと近づくと、何かを伝えるように鳴き声を上げる。少し遅れて、赤いDホイールが走ってきた。
    「ジョニー、無事か?」
     搭乗者の男が、心配するように声をかける。ジョニーと呼ばれた青年が、安心したように息をついた。
    「なんとかね。これで最後か?」
    「みたいだな。凌げたようで良かった」
     二人がいるのは、町外れの空き地だった。彼らの拠点となる町の近くに、機皇帝が迫ってきたのだ。機皇帝は人間を粛清するため、次から次へと攻撃を仕掛けてくる。共存を試みたこともあったが、彼らに人間の意思は伝わらなかった。ただ、文明を滅ぼすためだけに存在しているようである。人々は各地を転々としながら、安息の地を探していた。
    「この辺りの安全は確保できた。一度、拠点に戻ろう」
     周囲を見渡しながら、ジョニーは遊星に声をかけた。ヘルメットを被ると、Dホイールのエンジンをかける。その姿を横目で眺めながら、遊星は険しい顔をした。
    「まだ、安全とは言い切れない。もう少し警戒を……」
     そこまで言って、はっとした目でジョニーを見る。ジョニーは、真っ直ぐに遊星を見つめていた。言葉が無くても、遊星にはジョニーの意思が分かるのだ。
    「そうだな。一旦戻ろう。拠点の無事も確認したい」
     彼らが拠点を出てから、既に三日が経っている。実力のある者は全て出払っていて、残っているのは子供を守り、生活を支える者ばかりだ。拠点を狙われてしまえば、一溜りもない。
     遊星は、Dホイールのエンジンをかけた。ジョニーが走り出すと、遊星もその後に続いた。

     Dホイールのエンジン音を聞き付けると、人々は町の入り口へと集まってきた。子供たちが我先にと前線に集い、面倒を見ていた大人たちがその後に続く。Dホイールが遊星だと気づくと、手の空いた大人たちも前へと向かった。歓声を上げながら、二機のDホイールを迎え入れる。
     現在の拠点は、町の外れにある村の跡地だった。繁華街から放れていたことが幸いしたのか、ほとんど損傷のない状態で残っていたのだ。彼らはこの地を仮の住み処とし、電気や水を整え、町にいた頃と同じような生活をしていたのだ。
     村の門を潜ると、二人はブレーキを捻ってスピードを落とした。次から次へと、子供たちが二人の周りを取り囲む。
    「おかえり、遊星、ジョニー!」
     弾んだ声で挨拶をすると、口々に近況を報告する。あっという間に、二人の周りは子供で覆い尽くされてしまった。
    「遊星、僕ね、銃の使い方を覚えたんだよ」
    「Dホイールに乗れるようになったんだ。もうすぐ、外に出られるようになるよ」
    「クッキーを焼いたの。良かったら受け取って」
     次々に訪れる子供たちを、遊星はにこやかに迎え入れる。隣では、ジョニーも同じように子供に囲まれていた。
    「こら、英雄様はお疲れなのよ。お話は後にしなさい」
     駆けつけた大人に諭され、子供たちは渋々その場を離れた。不満そうな少年少女を眺めて、遊星も諭すように言う。
    「話は、後で聞こう。それまで、いい子に待てるな?」
    「はーい」
     大人たちに手を引かれ、子供はそれぞれの家へと帰っていく。その純粋な笑顔を見て、遊星は僅かに微笑んだ。

     遊星たちの生活する建物は、村の中心にあった。建物の中は機械で埋め尽くされ、白衣の男が忙しそうに立ち回っている。部屋の中に入ると、遊星は男の後ろ姿に声をかけた。
    「戻ったぞ。進捗はどうだ」
     男は重そうに腰を上げる。机の上に散らばっていた端末を掴むと、遊星へと差し出した。
    「あまり芳しくないな。モーメントの回転に影響を与えるには、人々の感情に頼るしかないようだ」
    「そうか。もう少し時間があれば、いずれは……」
     そう呟いて、僅かに沈黙する。
     遊星の目的は、世界の破滅を止めることである。この世界は、モーメントの逆回転によって壊滅の危機に追い込まれた。モーメントは人間の粛清を選び、人々は次々と命を落としていった。
     モーメントを止めることが出来れば、人々を救えるかもしれない。そう考えた遊星は、仲間を集めてレジスタンスを立ち上げたのだ。人々を導き、正しい道へと進むために、彼は英雄になったのだ。
     遊星が難しい顔で考えていると、外から足音が聞こえてきた。建物の前で止まると、ドンドンとドアを叩く。
    「英雄様! お戻りですか!?」
     男の声だった。確か、臨月の妻がいると言っていたはずだ。慌てた様子が気になって、遊星は外へと駆け出す。
    「どうかしたのか!?」
     遊星の姿を見ると、男は嬉しそうな顔をした。どうやら、緊急事態ではないようだ。そうなったら、報告はひとつしかない。
    「ついに生まれたんです。私たちの子供が! 一番に、英雄様に祝福をいただきたいのです」
     男に先導され、彼らの家へと向かう。ベッドの上には、やつれきった、しかし幸せそうな顔の女性が横たわっている。腕の中には、すやすやと眠る赤ん坊が抱き抱えられていた。
    「生まれたのか、おめでとう」
     赤子を見ると、遊星は嬉しそうに表情を緩めた。女性に視線を向けて、労うように言う。
    「元気そうで何よりだ。よく頑張ったな」
    「昨夜生まれたばかりなんです。一番に英雄様に見ていただきたくて、お呼び出しした次第です」
     幸せそうに笑って、女性は赤子の肌を撫でる。赤子の身体はふっくらとしていて、いかにも健康そうだった。
     男が、赤子の顔を覗き込んだ。幸せそうに笑うと、居ずまいを正して遊星に頭を下げる。
    「これも、全て英雄様のおかげです。あの時救っていただけなければ、我々は命を授かることもできませんでした」
    「いや、これはお前たちの力だ。お前たちが生きる意思を持ち続けたから、命を繋ぐことができたんだ」
     そう答えて、遊星は再び赤子に視線を向ける。赤子は、世界の危機など知らずに眠っている。どこまでも無垢で、罪の無い寝顔だった。
     こんな状況に追い込まれても、人々は生きているのだ。子供たちは成長し、新しい命が生まれ、次の世代へとバトンを繋いでいる。それは、遊星の力によるものではない。人々の生きたいという強い思いが、未来を繋いだのだ。
     新しく生まれた命は、等しく祝福されるべきである。彼らの未来が美しくあるためには、絶対に世界を守らなくてはならない。赤子の安らかな寝顔を眺めながら、遊星は改めて決意した。
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