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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。タグを見て書いたけど書いたけど上げそびれていたテキストです。他人のキスシーンを目撃した時の自カプの反応。

    ##TF主ルチ

    口付け 夕方の電車は、人で溢れかえっていた。いつもの癖で電車に乗ったところ、帰りの通勤通学ラッシュにぶち当たってしまったらしいのだ。学校に通わなくなってからというもの、曜日や時間の感覚は希薄になっている。うっかり人の多い時を選んでしまうこともあった。
     ルチアーノの小さな身体を守りながら、すし詰めの電車に押し込まれる。壁際の隅まで潜り込むと、両手を伸ばしてスペースを作った。ルチアーノは小柄だし、女の子のようなかわいい容姿をしている。こうして守っていないと、僕が心配だったのだ。
     家の最寄り駅まで辿り着くと、人混みを掻き分けて車外へと抜け出す。たった十数分の移動なのに、身体はへとへとになっていた。
     エスカレーターの列に並び、人混みを眺めながら順番を待つ。階段を使えば早いのだが、そんな元気は残っていなかった。ルチアーノの手を握ったまま、重い足取りで改札へと向かう。
     人混みをすり抜けて改札を抜けると、前に並んでいた女の人が走り出した。突然のことに驚いて、無意識に目で追ってしまう。彼女は改札前で待っていた男の人に駆け寄ると、勢いよく抱きついた。
    「……!」
     僕がびっくりしていると、応じるように男の人が腕を回す。二人はひしと抱き合うと、人目も気にせずに口付けを交わした。
    「……!!」
     あまりにも大胆な行動に、僕は口を開けてしまう。彼女たちは、誰がどう見てもそうとしか見えない深いキスを交わしていたのだ。こんな公衆の面前で、舌を絡めるようなキスをするなんて、日本人の価値観では信じられない。びっくりして、目が離せなくなってしまった。
    「何見てるんだよ。君は、人のスキンシップを覗き見する趣味があるのか?」
     後ろから声をかけられて、僕は慌てて視線を逸らした。ルチアーノの方に視線を移動させると、胸の鼓動を押さえながら言う。
    「違うよ! ちょっとびっくりしてただけ」
     そんな僕を見て、彼はにやにやと笑みを浮かべる。顔を近づけると、わざと声を潜めて言葉を続ける。
    「ほんとかよ。君は変態だからな。覗きの趣味があってもおかしくないだろ」
    「本当に違うんだって……!」
     否定の言葉を重ねるが、嘘っぽくなってしまう。やり取りを見られたら困るから、足早に改札から離れた。人前でキスをしているからと言って、見られることに抵抗が無いわけでは無いだろう。気づかれたらトラブルになるかもしれない。
     駅の構内から出ても、ルチアーノはにやにや笑いをやめなかった。からかうような笑い声を上げると、僕の顔を覗き込んでくる。からかう気満々の態度だった。
    「それにしても、君にあんな趣味があったとはな。覗きなんて、最低なやつがすることだぜ」
     きひひと笑い声を漏らしながら、ルチアーノは楽しそうに語る。
    「別に覗いてたわけじゃないよ。ただ、すごいなって思っただけで。僕には、あんなことできないからさ」
     半ば諦めを感じながら、僕は答える。何度否定しても、ルチアーノは僕を問い詰めてくるのだろう。
     僕に言えることは、結局のところこのひとつだけだったのだ。公衆の面前で口付けを交わすなんて、僕には絶対にできない。ルチアーノだって、絶対に嫌がるだろうと思った。
     しかし、彼の反応は違った。楽しそうな笑い声を上げると、僕に顔を近づける。にやにやと笑みを浮かべたまま、耳元で囁いた。
    「僕は、抵抗なんて無いけどな」
    「え?」
     予想外の言葉に、僕は疑問符を浮かべてしまう。そんな僕を見て、彼は淡々と続けた。
    「僕たちは恋人なんだから、口付けくらいするだろ。何を隠すことがあるんだよ」
    「そうかもしれないけど……」
     彼に言われても、僕は納得ができない。結局のところ、これは気持ちの問題なのだ。少なくとも僕は、人に見られながらキスをすることはできない。例えルチアーノが気にしなくても、僕は気にするのだ。
    「それに、未成年淫行で捕まるのは君の方だしな」
     さらっとそんなことを言われて、僕は絶句してしまった。彼は、最初からこれが言いたかったのだろう。話を振られたときからずっと、僕はからかわれていたのだ。
    「あのさぁ……」
     呆れながら呟いて、僕は大きく肩を落とす。隣からは、楽しそうな笑い声が聞こえていた。
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