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    しん風書く(描く)人
    固ツイに♥️で18↑表記あればリスイン
    完結し次第支部に出します
    @trick_snkz904 (h'|ッЛ)

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    ワンライのお題をお借りしました!
    お題『運命』

    全然ワンライでは無いので借りただけ←

    オメガバース
    しんのすけα×風間Ω
    付き合ってない
    モブに襲われる表現あり

    国の体制的にΩの差別があったのは昔の話

    よければ3.2.1(꜆ ˙-˙ )꜆どぞ

    #しん風
    newStyle
    #904腐
    #オメガバース
    omegaverse
    #オメガバ
    omega-3FattyAcid

    Fate?Destiny?Fortune?┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
    「しんのすけ!運命の番って知ってるか?」

    「うんちの都合?風間くん。トイレはあそこだゾ」

    「運命の!番だ!!」

    「うんめいのつがい?」

    「そう!しんのすけはαだろ?Ωの人といつかは番になるじゃないか!どんな人がいい??」

    「それって絶対なの〜?」

    「絶対…って訳じゃないけど…別にαの人とでもβの人とも結婚はできるけどさ、番はΩの人としかなれないんだよ?」

    「ほおほお〜」

    「で?どんな人がいい?」

    「う〜んとね、オラは〜、ボンキュッボ〜ンな美人でグラマァ〜なおねいさんがいいゾ!!!」

    「Ωの?」

    「うーん、オラ、別に好きになったら気にしないゾ、そんなこと…」

    「ふ〜ん」

    「そういう風間くんは?」

    「僕?僕は絶対運命の番がいい!!定められた相手と恋に落ちるって凄いロマンチックじゃないか??僕は運命を探す旅に出るんだ!」

    「風間くんいなくなっちゃうの?」

    「別に全世界回る訳じゃないよ、人生という名の旅の中で探すってことさ!」

    「ほぉ〜ほぉ〜…―――――――――

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    懐かしい夢をみたな…

    あれは5歳の時だから…12年も前か…

    しんのすけとは学校は違うけど、毎朝起こしに行ったり、帰りは駅で待ち合わせして一緒に帰ったりして未だに交流が続いている
    防衛隊のみんなはしんのすけと同じ公立高校に通ってて、しんのすけ程頻繁には会わないけど、連絡はよく取り合ってるし、月に何度かは遊ぶ関係に落ち着いている

    月曜日…か…早く起き上がって、しんのすけのとこ行かないと…

    「おはよう、ママ…」

    「トオルちゃん、おはよう、今日も早いわね、今日もしんのすけくんのとこ寄っていくの?」

    「うん、しんのすけ起きれないから、早めに行って待たないとだし、お弁当朝早くごめん、ありがとう」

    「そんなのいいのよ〜、そんなことより私心配で…」

    ママが困ったように腕を組んで片手で頬を抑える

    「なにが?」

    「トオルちゃん…もう17でしょ…?そろそろいつ来てもおかしくないから…だって、しんのすけくんはαじゃない?私心配で…」

    僕はΩだ
    しんのすけはα
    年頃の、それも初めての『ヒート』がいつ来てもおかしくない息子を番の居ないαの元に行かせるのは心許ないのはよくわかる
    でも―――

    「大丈夫だよ!『ヒート』の予兆が来たらちゃんと学校休むし、僕鼻がいいから、そんなことならないし、逆にしんのすけがいると、他の人が近寄らないから助かってるんだ」

    「そうね…」

    ママはまだ不安そうな顔をしていたけど、大丈夫、しんのすけは女の人にしか興味ないから…

    ✷。゚ .

    あれ…なんだ今の…胸のあたりが一瞬…?
    気のせいか…?

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    「しんのすけ…お前、僕が迎えに来てるんだからもっと早く起きろよな…」

    「えぇ、だって風間くん来るのはやすぎるんだも〜んだ、みのも〜んた」

    僕はやれやれ…と首を横に振った
    今日もギリギリになるなぁと思いながら駅までの道を歩く

    と、途中前から来た男性にふと目が行き、男性と目が合った。男性が通り過ぎた時の風が過ぎ去った後、大きく深呼吸をすると、しんのすけは一部始終を見ていたのか、

    「どうしたの?知り合い?」

    と聞いてきた

    「いや?知らない人」

    「風間くんよくそれやってない?人が通り過ぎる時、息吸って…通り過ぎたら吐く…って」

    「別によくはやってないよ、相手がαの時だけ」

    「え…」

    しんのすけがピシッと固まる

    「僕鼻がいいからわかるんだ」

    「なんで吸うの…?」

    「昔から言ってるだろ?僕は運命の番を探してるって、僕は匂いでわかると思ってるんだ」

    「……で?どうだったの?」

    「あれは違うね、普通にαの匂い」

    しんのすけが何故か肩を撫で下ろす

    こいつ…僕の事心配してるのか…?

    「お前が心配することは無いよ」

    「え?」

    「お前、僕にマーキングしてるだろ」

    「うぇあえ?!」

    「……まさか、バレてないとでも思ってたのか?」

    「いや、え…っと…」

    「はぁ、まぁ、お前が毎朝こうやって匂いつけてくれてるから、あんまそういう心配してないんだ」

    「そういうって…?」

    「……?襲われたりとか?」

    しんのすけは少し驚いた顔をして、考え込むように俯いてしまった

    なにかおかしなことを言っただろうか?
    違かったのかな?マーキングの意図が…?
    マーキングの他の意図……?
    自分のモノ…僕はしんのすけのモノなんかじゃ…

    *。゚⋆.◌̥

    あれ、なんか…ふわふわする…?ん?

    「あ、ちょ、時間やばい!走るぞ!電車間に合わなかったらどうすんだ!!!」

    「ブ、ラジャー」

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    そういえば、僕は日々運命の番を探してるけど、しんのすけはどうなんだろ…好きな人とか…

    ✷。゚ .

    まただ、胸の痛み…

    「友達がさぁ、好きだった幼なじみ知らんやつに取られたらしくてw好きならさっさと自分のにしちゃえばよかったのにねぇ〜‪w」

    「それはバカだわ〜早い者勝ちよ、世間甘く見すぎ‪w」

    「それがさ、気づいてなかったのよ、相手が付き合い始めて、ずっと自分がそばに居たから、すごく寂しいし、モヤモヤする〜って言うからさぁ、それ恋だったんじゃね?って言ったら、ポロポロ泣き出しちゃって‪w」

    「それは泣ける‪w」

    「最初から顔に好きだって書いてあったわ‪w」

    「いるよねぇ〜そういうの〜…―――――

    僕はいつもなら聞き流す女子の噂話にいつの間にか耳を傾けていた

    .。oஇ。゚ .

    なんだろ、このモヤモヤ…

    しんのすけのことを好きな子がいたら…
    しんのすけが好きな人とくっつくのは嬉しい…
    でも…会える時間が減ったら…

    嫌だな…―――

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    春日部の駅に着いて、改札を出ると、いつもの場所に向かった。そこには既にしんのすけがいて、スマホを弄りながら壁に体を預けていた

    声をかけると、こっちを向いて、スマホをポケットに仕舞い、僕のところにまで来て、一緒に歩き出した

    「しんのすけ、お前さ、なんで他のαの人はみんな自分はαだ!みたいに、主張してんのかわかんないけど、フェロモン少し出てる?のに、お前出さないんだ?」

    「……?ん〜それは他のαの人は自分が加害者になりたくないから出してるんだゾ、Ωの人は察知してあんま近寄ってこないし、オラだって風間くんといる時以外は少し出してるゾ?」

    「なんで僕といる時は出さないの?」

    「え…そ、それは……ひ、必要ないからだゾ!!」

    「あぁ、僕もうお前がαってわかってるしな、お前がなんか付けてるから他のαも近寄ってこないし」

    「そ、そ〜そ〜…」

    「しんのすけさ、」

    「ん?」

    「好きな人いる?」

    しんのすけが丁度飲もうと口に含んだ水筒の中身を盛大に吹き出す

    「お、お前?!汚ったな?!」

    「…え?!」

    「…好きな人だよ。好きな人。」

    「…いるけど」



    ……ん?今、なんて言った?

    いる?しんのすけに好きな人がイル??

    僕はバッとしんのすけの方を向くと、ふいっと目線がそらされて、頬を赤らめたその目線の先を見ると、しんのすけの学校の制服を着たメガネの可愛い女の子がいた

    あの子か…そっか…
    しんのすけ…好きな子いたのか…

    ✷。゚ .

    なんかチクってなった…

    「ふ〜ん、そっか…」

    「え、それだけ???」

    「ん?何が?」

    「誰?とか聞かないのかなぁ…って…?」

    「別にいいよ、言いたい時はお前言うだろ?」

    「そっか…?」

    駅からしんのすけの家までは割とあっという間だ
    今日もあっという間に着いてしまった

    「じゃあな、また明日迎えに行くから」

    「怒ってる?」

    「え?怒ってないよ」

    「そう?怒ってるように見えた」

    しんのすけはそう言って僕の頬を親指で撫でた

    *。゚⋆.◌̥

    「怒ってないよ」

    「そっか?じゃ!またあしたんこぶララちゃんランドセルビーいか亀たろうさぎんぎらぎんの太陽〜さんさん〜」

    「何言ってんだアイツ…?」

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    ヤバい…!!!寝坊した…!!!

    僕は少し小走りでしんのすけの家まで向かった

    いや、今いつもならしんのすけと家を出てる時間だから、まだ間に合う時間だ…しんのすけが起きていれば…だけど…最悪しんのすけは置いていくしかない…か…

    「あれ、男のΩじゃね?初めて見た」

    「え?ホントじゃん!俺男のΩとヤッたことないわ!」

    「ちょっと君〜止まって〜お兄さん達と…」

    僕は小走りだったのを全速力に変えて走って逃げた

    今日は運が悪すぎる…?!Ωへの性犯罪が減った今の時代にあんなやついるのか?!今世紀最大の驚きだ?!てか、なんでわかったんだ?!匂いか??『ヒート』が近いのか??もう今日は引き返して家に帰った方が良さそうだな、とりあえず家バレしないようにアイツらを巻かないと…!!!
    僕は路地裏に入ってグネグネと色んな方に曲がって走り続けた―――…

    「―――…っつっかまえた!!君足早いねぇ〜」

    僕は右腕をガシッと捕まれ、後ろに無理に引っ張られて、壁に追いやられた

    か、肩痛っ!?!

    ソイツらは僕より少し背の高い2人組で、どちらもαの匂いがした

    成人男性のα2人になんて力で勝てるはずがない
    恐怖に膝が震え出す

    「綺麗な顔してんじゃん〜余裕で勃つわ」

    「君、フリーでしょ?俺らと遊ばない?」

    そっか、まだしんのすけの匂いが着いてないから?!

    「い、嫌です、は、離して…!!!」

    恐怖で喉が、声が嗄れて、うまく大きな声が出せない

    助けて…!!しんのすけ―――――



    ⋆. *⃝̥ ◌̥ ⋆. *⃝̥ ◌̥ ⋆. *⃝̥ ◌̥



    こ、この匂い…運命の番…?!

    「ちょっと…なにやってんの…オラのなんだけど…」

    し、しんのすけ…?!

    「はぁ?ンだテメェ?!」

    「やめとけって、君フリーじゃなかったの〜?なら早く言ってよねぇ〜ほら、行くぞ」

    「クッソ、せっかく男のΩ抱けるいい機会だと思ったのに…」

    「あ"?今なんつった…」

    や、ヤバい、しんのすけがキレる…?!
    ここで人を殴ったなんてなったら、軽くて停学…将来が全てパァだ

    「しんのすけ!!」

    僕はしんのすけに抱きついた、というより、抑えようとしたら、足に力入んなくて、しんのすけの背中にしがみついて、体重を預けてしまった

    その間に男達はそそくさと一目散に逃げていった

    しんのすけが、抱きついてしまった僕に一瞬戸惑いつつも、僕の背中に腕を回して、包み込むように抱き締めてくれて、安心でついに足の力が抜けた。崩れ落ちていく僕を支えるように、しんのすけも一緒に道路にしゃがみ込んだ

    急に涙が迫り上がってくる

    「…こ、怖かった…」

    「…間に合ってよかった…」

    「ありがとう…来てくれてありがとう…」

    「風間くん朝来なかったから心配で風間くんの家向かう途中だったんだゾ、腹騒ぎがして…」

    「ふふっ…それを言うなら胸騒ぎだろ?」

    「お?…そーともゆー
    匂い…辿って来れたからよかった…『ヒート』近いんなら、お願いだから外出ないで…オラ、心臓口らか飛び出るかと思ったゾ…」

    「ごめん…寝坊して気づかなかったんだ……
    僕もう帰るよ、ホントに来てくれてありがとう…助かった…」

    「絶対いつでも行くから!!オラは正義と救いのヒーローだから!!!」

    「…そっか、じゃ…じゃあ、ちょっとお願いがあるんだけど…いいか?」

    「なに?!なんでも言って?!」

    「足に力入んなくて、家に帰れそうに無いんだ、支えてくれないか?」

    しんのすけはそれを聞くと、僕から手を離して、背を向けてしまった
    でも、手を差し出してきたことで、その意図がわかった

    「え、いや、それは申し訳ないからいいよ、僕重いし…恥ずかしいし…」

    「いいから乗って、このままあんま人いない道通るから」

    僕はしんのすけの背に乗ると、しんのすけは立ち上がって、スタスタと歩き始めた
    項からしんのすけのαの匂いが漏れていた
    しんのすけの首に手を回して、背中にお腹を密着させて、自分の肩を枕にその匂いを堪能した

    運命の匂い…

    しんのすけが…

    運命の番…

    *。゚⋆.*⃝̥◌̥ . .。oஇ。゚ .

    でも…

    しんのすけには…

    好きな人がいる…―――――


    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    僕の家に着くと、しんのすけが僕の部屋のベッドまで運んでくれて、僕はベッドに腰かけた

    しんのすけは暫く僕の前に立って見つめていた

    こいつも僕の匂いで気づいてるはずだ

    ショックがでかいんだろうな…

    「風間くん…必要だったら呼んで?」

    ✷。゚ .

    しんのすけは、僕のためなら身体でも差し出すのか…好きな人がいるのに…そんなこと出来るわけないだろ…

    僕は泣きそうになるのをグッとこらえて、笑ってみせた

    「大丈夫だから、学校行ってきて…?」

    「あ、じゃあ、これ置いてくから」

    しんのすけは制服のポケットからハンカチを出した

    「ずっと使ってないから、汚くはないと思う…」

    僕がそれを受け取ると、しんのすけは学校に行くといって、部屋を出た

    『ヒート』中はαの所有物があるといいと、運命の番の物なら尚良いとよく聞くけど、それを思って置いていったんだろうか…

    しんのすけが居なくなって、制服から寝間着に着替えた後、ベッドに潜り込んだ

    しんのすけから貰ったハンカチを鼻に近づけると、しんのすけの匂いと、それに混じった、確かな運命の匂いがした
    じわじわと滲む涙に抗えず、暫くボロボロと泣き続けた

    僕はしんのすけが運命じゃなくても
    しんのすけのことが好きだってことに今更気づいてしまった

    しんのすけが幸せになるなら、僕は運命を諦めたって構わない…――――

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    寝て次の日にはもうフェロモンが治まっていて、昨日は『ヒート』の予兆で少し漏れただけだった

    薬を飲めば『ヒート』まではちゃんと学校に通える

    でも、僕はしんのすけにちゃんといつも通り会えるだろうか、接することが出来るだろうか…

    多分無理だ

    運命を諦める、しんのすけの恋を応援する
    なんて言っても、心から諦められるわけじゃないし、応援できるわけでもない

    合わないのが1番の解決法か…

    それから2週間、僕は学校に通っていながら、しんのすけを避けて過ごした―――

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    朝はそのまま駅に向かい、学校帰りは春日部駅に着くと、そのままサッと家に帰る。そんな日々を過ごしていると、案外しんのすけ出会うことは無かった。やっぱりお互いに会おうと言う意思が無ければこんなものなんだ

    あれから2週間経った

    今日も僕は改札を通ってそのまま帰るはず―――
    …だったけど、今日はいつもと違った

    しんのすけが改札を出てすぐのところで待っていた

    先に気づいた僕は目を合わせないように、知らないフリをして早歩きでその場から離れようとした

    が…

    「ねぇ…」

    「ねぇ…!!風間くん!!」

    しんのすけに見つかってしまった…

    「なんだ、しんのすけか、久しぶりだな」

    僕は立ち止まって振り向き、笑顔で応えた

    「大丈夫だった?」

    「大丈夫って?襲われなかったかってこと?それなら大丈夫さ」

    「それもだけど…『ヒート』とか…」

    「あ、あぁ、うん、大丈夫だったよ」

    しんのすけはずっと『ヒート』で僕と会えていないと思っていたのか…?

    「『ヒート』来なかったんでしょ…」

    「え?」

    「学校、すぐ行き始めてたの聞いた」

    「あぁ…」

    バレてたか、なんで知ってたのに動かなかったんだろ、やっぱ僕が居ない方がよかったかな…だとしたら、なんで今になって来たんだよ…

    「オラ、なんかした?」

    「いや」

    「じゃあなんで…!!!」

    なんでってそりゃ…

    「……お前、この前好きな人がいるって言ったろ?」

    「う、うん…?」

    「僕がいたらいつまでたっても始められないだろ?」

    「…??」

    「お前は昔から、運命とか、番とか、全く興味なくて、自分の理想と、自分の意思で付き合う人を決めたいって言ってたじゃないか!!!」

    「……」

    「だから…僕は…運命を諦めようと…―――」

    あれ…僕…言いたいことも、涙も止まんない…

    「風間くんはさ…オラのこと、運命とか、αとか関係無しにどう思ってる?幼なじみとか友達とか親友とか以外に…それとも、そうとしか思ってない??」

    「…〜っ!!僕はお前を!親友の幼なじみとしか思ってないよ!!!」

    僕は真っ白な嘘をついた…
    自分のためにつくのが真っ赤な嘘で
    ひとのためにつくのが真っ白な嘘…

    終わってしまった…僕が望んでた結末…これで…しんのすけも…自分の意思で生きられる―――…

    「…え?ちょっ、お前何して…?!」

    しんのすけは僕の近くまで来て、僕の制服のポケットに手を入れ始めた

    あ…!そこには…!!

    「こんなのずっと持ってて…?!オラの匂いこんな薄くなるまでずっと纏ってて、ハンカチに風間くんの匂いこんなに着くまで持ってて、それでもそんなこと言えるの?!そんなの信じれると思ってるの?!」

    僕のポケットから探り出したのはしんのすけと最後に会った日に、家に送り届けてくれた日に貰ったハンカチだった

    家から出る時、必ずハンカチを体の何ヶ所かに接触させてブレザーの外ポケットに入れていた

    寂しくて泣きそうな時、思い出して惨めになる時、出しては薄くなってしまった匂いを感じていた

    いつも肌身離さず持っていた…

    「返して…」

    「オラの好きな人…風間くんだゾ」

    「……へ…?」

    今、なんて言った…?
    しんのすけが、しんのすけの好きな人が…僕??
    僕のことが?好き??

    ずっとしんのすけの好きな人は別の、あの子だと思ってたから、全く理解が追いつかなかった

    じゃあ、僕は…

    「オラは最初から、風間くんといるのに無理なんてなんにもしてないし、αなのに隣を許してくれてることに、大人しくマーキングされてくれてることに…少し余裕があった…風間くんももしかして…って、でも風間くんはいつも運命の番探してるし、オラのマーキングも他のα避けだと思ってるし、いつ運命の番を見つけちゃうのか、ずっとヒヤヒヤしてたゾ…」

    「……(そうだったのか)」

    「オラに前になんでフェロモン出さないのか聞いたでしょ?前はあぁやって答えたけど、本当は、オラが風間くんの運命じゃなかったら…それが怖くて、わかったらオラは絶対に風間くんとの未来なんてないってことが、怖くて出せなかったんだゾ…」

    「……(でも、あの日わかった…お前が僕の運命だよ)」

    「オラホントに嬉しかった…風間くんの匂いわかった時、ホントに泣きそうなくらい嬉しかった…これで安心して隣にいられる、風間くんと番になれるって…でも、風間くんは違った?オラが運命の番じゃ嫌だったの?オラ、風間くんが学校行ってること知って、凄い驚いたし、凄い落ち込んだ…」

    「全然…全然嫌なんかじゃない…むしろしんのすけでよかった…しんのすけがよかった…」

    「…じゃあ!!!」

    「僕、しんのすけが好きだよ。それと同じくらい
    、しんのすけに幸せになって欲しかったんだ…」

    「オラの幸せは風間くんといることだゾ!!!」

    *。゚⋆.◌̥ .

    溢れる涙が止まらない…

    僕は…こんな幸せでいいんだろうか…

    しんのすけが目の前で手を広げた
    僕はしんのすけの背中に腕を回して抱き締めると、しんのすけも僕をギュッと包み込んでくれた

    ⋆. *⃝̥ ◌̥ ⋆. *⃝̥ ◌̥ ⋆. *⃝̥ ◌̥

    運命の匂いに包まれて、深呼吸をすると、だんだん身体が火照ってきた

    「風間くん、フェロモン出てる…」

    「しんのすけ…『ヒート』きたらさ、項噛んでくれるか?」

    「い、いいの?!」

    「僕は『ヒート』なんかで、みんなから遅れをとってる暇なんてないんだ!しんのすけが噛んでくれることで、『ヒート』が緩和されるからむしろありがたいと思ってる!」

    「…そ、そう…やれやれ〜全く…ロマンがないですなぁ…」

    「ダメか??」

    「もちろん!いいに決まってるゾ!!!」

    「よかった…」

    「その代わり…」

    「…そ、その代わり…?」

    対価があるのか?!僕の用意できるものならいいけど…??

    「ちゃんと次からは連絡して」

    「な、なんだぁ、そんなことか、わかった、ちゃんとするよ…」

    「そんなことって?!オラが今回どんだけ傷ついたことか?!オラの純情を弄んで…!!
    ホントにトオルさんはそういうところよね?!」

    しんのすけのオカマ口調に、僕は笑ってしまった
    しんのすけもつられて笑ってた

    結局その日のうちに、しんのすけと一緒に、ママとしんのすけのお母さんに報告をしに行って、番になることへの許可を得ることができた
    裏で話を合わせて、運命の番ってわかって、以前から付き合ってて、初めての『ヒート』が近いから報告することにした。っていう体にした
    しんのすけの匂いを久しぶりに近くで、強く感じたからか、次の日には初めての『ヒート』が来て、しんのすけに項を噛んで貰えて、無事番になることが出来た

    その後、僕らは高校を卒業、番がいるとの事で、僕も簡単に有名大学に進学できて、大学卒業後は、しんのすけは引っ張り凧のスタントマンに、僕は弁護士になることが出来た
    子供も2人できて、シロの子供を飼って、子供が巣立って、僕らも歳をとって、お互いの寿命が尽きるまで、幸せに暮らした

    はてさて、これは神様が決めたレールの、抗えない運命だったのか、成行きから生まれた運命だったのか、それとも、幸運から生まれた運命だったのか…
    それは神のみぞ知る話…―――――

    END
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