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    ヘゾに孫子を引用してほしかった…

     どんよりと影の落ちる合戦場で、ガチャガチャと忙しなくぶつかり合う幕府軍の武具の音を聞きながら、平蔵は捕らえられた敵大将へ視線を落とした。

    「こんな負け戦、どうして仕掛けようと思ったのさ」

     岩の上から向けられる冷ややかな目を、敵大将は勇んで睨み返す。

    「なんの話だ。確かに俺は捕まっちまってこれ以上の策ァねぇが、ハナから負け戦だったというには早すぎるだろう」

     平蔵は呆れたように片眉を上げて、ため息をついた。

    「いいや、全く早計じゃないね。もっといえば、この戦は始まる前から勝敗が決まっていた。それも、君たちが計画を立てるより前からね」

     まるで自分達の力量不足だとでも言いたげな言葉に、大将は激情する。麻縄で両腕を体に縛り付けられさえいなければ、今すぐ刀を抜いて、目の前の幼体を切り伏せていただろう。

    「君たちが負けたのは、君たちが弱いからじゃない。武器の重なり合う音の加減でもわかるくらい、君たちは強い。だけど、君は忍を雇わなかった」
    「忍?あいつらを雇って何になる。城への侵入方法も、幕府軍の大将も、全て計算には盛り込んでおいた」
    「それじゃ足りないから雇うんだよ。忍がいれば少なくとも、どの侵入ルートが既に使われたことがあるかくらいはわかったはずだ。そしてそれを、誰が推理して未然に防いだか、なんてこともね」

     そうだいいことを教えてあげよう、なんて、まだ丸みの残る頬が不敵に弧を描く。平蔵は岩から降りぬまま腰を折って、大将の顎へ手をやった。

    「名君賢将の動きて人に勝ち 成功衆に出づる所以のものは、」

     曇天、晴れて一筋の後光が指す。

    「先知なり」

     嗚呼、眼前で美しい笑みを湛えるこの少年は、ただまさしく、嵐であった。
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