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    書き方変えれるか試してみたけど無理だった
    もう何億回と擦られただろうネタ
    怪奇学パロと同じ世界線(のはず)

     どうしてこんなことになったんだろうか。ええと確か、放課後の見回りの最中に風紀委員の腕章に反応したチンピラに絡まれて……ああそうだ、それでひと通り嗜めたあと旧校舎の方から悲鳴が聞こえたんだった。「きゃー! 助けてください!」って感じの。で、駆け付けたわけだけど、そこに助けが必要そうな生徒はいなくて。素行不良の生徒達にまんまと嵌められた僕は不意をつかれて今に至る、と。

    「……」

     でもとりあえず今は、この人達が僕のことを取り囲んでいる理由を考えるよりも先に、この状況をどう切り抜けるかを考えないといけないようだ。相手は六人、おそらく全員ド素人。けれども、僕がある程度武術を嗜んでいることを知っていて、それについての対策は立ててきている。その証拠に、関節を的確に押さえつけられて動かせない。さすがに全力を出して振り払おうとすればできるのだろうが、暴力沙汰になってしまうのは避けたいところだ。

    「ねえ、あんたさぁ、万葉くんのことたぶらかしてるって、ホント?」

    リーダー格らしき女子生徒がそう問いかけてくる。なるほど、この生徒は万葉のことが好きなのかもしれない。それにしても、たかだか一人の生徒に対して大袈裟すぎる気もするけど。

    「……たぶらかす?」
    「とぼけないでよぉ」
    「別にとぼけてはないんだけど」
    「あのね、あたしらだってこんなことしてまで口出ししたいわけじゃないんだけどねぇ、ただ、万葉くんがかわいそすぎて見てらんないんだよぉ」
    「だから、どういう意味」
    「万葉くん、アンタに騙されてるんでしょ」

     何なんだ一体。この生徒は何が言いたいのだ。

    「万葉くんはアンタみたいな胡散臭い男に興味なんかないし、そもそもアンタのことなんて眼中にもないはずだよぉ」

     いや、それは確かにその通りなんですけど。ていうか、これではまるで……。僕と彼が好きあっているみたいだ。
     まさか彼女は本気で言っているんじゃなかろうな。

    「……へぇ、君たちにはそんなふうに見えてたんだ」
    「っざけんじゃないわよ! !!」

     蔑むように言ってやれば、激昂したリーダー格の生徒が叫ぶように言う。それと同時に他の五人も殺気立つ。腕を押さえていた生徒が、ブレザーのポケットから取り出したのは裁ちバサミだった。もしかしなくても、よろしくない展開になってしまったらしい。このままだと本当に刺されるかもしれない。これはもう穏便に済ませることはできなさそうだ。仕方がない、正当防衛という大義名分があるのだし、多少暴れても問題はないはず。

     ジャキンッ と耳元で音がした。晒されていないはずの項が異様に涼しい。髪を切られたのだと理解するのに時間はかからなかった。


     ――お主の髪は、不思議な色をしているのでござるな。
     ――あー、変だって思う?
     ――いいや、神秘的で美しいでござる。

     せっかく万葉が褒めてくれた髪だった。女生徒たちが声を上げて笑っているのが聞こえる。涙が滲むのが悔しくて、唇を噛んだ。ふわり、と嗅ぎ慣れた匂いが鼻腔をくすぐる。思わず顔を上げると、そこには彼が立っていた。彼は女生徒たちを黙らせたあと、逃げないように念を推してこちらに近づいてくる。そしてそのまま僕の手首を掴み、ずるずると引きずっていく。連れて行かれたのは旧校舎の裏にあるゴミ捨て場だった。万葉はそこでようやく手を離す。僕は地面に座り込んで俯いた。彼の足音だけが響く。しばらくすると、目の前にしゃがみ込む気配がした。万葉が何かを話し始める前に、僕は先に口を開いた。

    「万葉が謝ることじゃない」
    「だが、拙者について話していたのが聞こえた」
    「気にしないで。大丈夫だから」

     そう言って無理矢理笑顔を作ると、万葉の眉間にシワが寄る。

    「どうして君がそんな顔をするのさ」
    「なんでも、ない」
    「嘘」

     万葉が目を伏せる。それが答えだ。きっと僕を心配して様子を見に来てくれたのだろう。申し訳ない気持ちになると同時に、胸の奥が温かくなる。

    「万葉、ありがとう。本当に大丈夫だから」
    「しかし」
    「本当に平気だよ。万葉が来てくれて嬉しかったし、それだけで十分」
    「拙者は、お主に傷ついてほしくないのでござる」
    「うん、わかってるよ。でもね、万葉が僕のために行動してくれたっていう事実が嬉しいんだ」

     本心を口にすると、万葉の顔がくしゃりと歪んだ。今にも泣き出しそうな表情に、胸が痛くなる。

    「ほんとに、何も気にしないで。髪だってそのうち伸びるし」
    「ああ、承知した」

     いつもの調子に戻ってほっとする。

    「もうすぐ期末試験が始まる。」

     唐突に話題が変わった。彼なりに気を使ってくれているのかもしれない。

    「勉学に支障が出ないよう、くれぐれも気を付けるのでござるよ」
    「そんなに成績、悪くないけどね」

     軽口をたたけば喉を鳴らして笑ってくれる。それが今はありがたかった。

    「まぁ、気をつけるよ」
    「うむ。それと、テストが終わったらまた一緒に出かけよう」

     突然のお誘いに、一瞬思考が停止する。けれどすぐに我に返って「楽しみにしてる」と返した。

    「じゃあ、帰ろっか。今日は駅前に来てたアイス食べながら変えろ」
    「そうであるな」



    「おやおやまあまあ、鹿野院くんよ」

     荷物を取りに教室に戻れば上田がニマニマしながら声をかけてくる。

    「万葉は付き添い。君が想像してるようなことはなんにもなかったよ、上田」
    「え~、つまんなーい!」

     そう言いながらも上田は楽しげに笑っていた。なんだか嫌な予感がするが、気づかないふりをする。

    「ところで、その髪どうした?っていうのは聞かれたくなさそうだから聞かないけど。どうすんの?」
    「どうするもこうも、」
    「だって勿体なくねぇ?せっかくきれいに伸びてたのに。楓原センパイもそう思いません?」
    「ああ、できることなら、もう一度伸ばしてほしいと思うでござる」

     そう言って彼は、僕の長い前髪を摘んでみせる。その目に哀愁が漂っているのに、僕は笑わずにいられなかった。

    「俺も伸ばそうかなー」
    「上田は似合わないからやめたほうがいい」
    「ひっでぇ!ま、冗談だけど」

     上田と話しているうちに、最終下校のチャイムが鳴る。横から視線を感じてそちらを見れば、万葉がじっとこちらを見つめていた。目が合うと、彼はふっと微笑む。

    ――髪は女の命と言うであろう?

    「僕は、女じゃ!ないけどね!!!!!!!!!」
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