新年快乐2023「あけましておめでとう、三郎」
「あけましておめでとう、哥哥」
目の前で上がる色とりどりの花火を見ながら、新年の挨拶を交わし合う。
通りを歩く人々のはるか頭上、誰もいない屋根の上に、二人はぴたりと寄り添って座っていた。
「寒くない?」
「平気だよ。三郎は?」
そう聞くと、花城が指をからめて、いたずらっぽく目くばせをする。
「哥哥がもう少しくっついてくれたら寒くない」
「これ以上くっつくなら、君の膝の上に乗らなきゃいけなくなる」
「いいね。どうぞ」
ふざけて言っているだけだと声色からわかり、謝憐は思わず笑って花城に口づけた。
体をあたためるためにと花城が用意した酒の後味が、二人の唇の間を移っていく。
やがて唇が離れると、花城が微笑んでたずねた。
「哥哥は今年何をしたい?」
「そうだな……まずは寒いうちに一度温泉に行かないか? ほら、去年行けなかった山奥の秘湯」
「雪見風呂の宿だね。いいね、行こう。他には?」
「春はお花見をして、夏は海。君と見た星空も綺麗だったからまた見たい。秋はいつもの高楼で月見をしよう。あそこの紅葉は本当に綺麗だ」
哥哥のほうが綺麗だよ、といつもなら間髪入れずに返ってきただろう。
だがお決まりの台詞は続かず、花城はおだやかな目で謝憐を見つめているだけだった。
「どうかした?」
「それは全部、俺と?」
「?」
「花見も海も星空も月見も、俺と?」
「当たり前じゃないか。何を今さら……」
花城が体をひねって、謝憐をゆっくりと抱きしめた。
「ど、どうしたんだ、三郎」
「……哥哥の『今年したいこと』の中に当たり前のように俺がいて、嬉しくて」
抱きしめる腕の強さに、耳もとに落とされた声のせつなさに、胸が甘くしめつけられる。
謝憐は息を吐いて、花城の頭をやさしくぽんぽんと叩いた。
「君がいない今年なんて、思い描けないよ」
「未来永劫、思い描かなくていい。今年も来年もその先もずっと、あなたと一緒にいます」
「うん」
ひときわ大きな花火が夜空に広がり、地上から歓声が上がる。
新しい年の始まりを告げる光景を眺めながら、屋根の上の二人はもう一度深く甘い口づけをかわした。