まどろみながら 気怠い午後だった。室温25℃・湿度50%、手術室と同様の設定にした空調は正常に働いている。マヨネーズの油のにおいがゴミ箱に捨てた今も漂っているのを村雨の鋭敏な鼻が感じ取った。真経津の持ち寄ったハムサンドは安っぽさに反して美味だった。また買ってきたのなら食べてもいいと思った。最近味覚が低俗なものに慣れていくのを自覚している。
テーブル越しに医療器具をいじっている真経津を見ると、自分の服をめくり腹にペタペタ当てている。使い方を知らない道具は幼児にとってはおもちゃになるようだ。咎める気力も起きない。ここに叶がいたなら真経津と一緒に無遠慮に騒いだだろうし、獅子神がいたなら興味をもって器具の用途を村雨に尋ねたかもしれない。
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