忘れもの閉め忘れていた窓が密かに部屋中を冷たい空気で満たした頃俺は目を覚ました。壁掛け時計に目をやると時刻は2:15ーー丑三つ時を指している。何故か真夜中だというのに目は冴えており2度寝する気にもなれなかった俺はただ床を眺めていた。
ふと向かい側の方に目を向けると随分と使われていない埃の被ったシーツが目に入る。この部屋は幼少期、 別々に寝る事を怖がった俺に見兼ねた両親が同室にしてくれたもので、事故にあったまま帰らぬ人となった弟のベッドは片付ける気にもなれずそれから5年経った今でもそのまま置かれている。
ベッドを注視しているとどうもじっとしていられなくなり、俺は窓を閉めようと窓際に向かった。
そっと窓縁に手を伸ばした時、視線上に1匹の猫が目に入る。その猫は紅色の目にサーモンピンクの毛、目の下には小さな傷が入っていた。まるで亡き弟を彷彿させるような見た目に思わず俺は
靴も履かずに窓枠を飛び越えた。
「……宿儺!」
その猫は俺に驚きもせず、まるで着いてこいとでも言うように俺の顔をチラチラと見ながら奥へと進む。その様子に俺は迷いなく、猫の背後を着いて行く。
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『今日午前10時頃、〇〇県▽▽市のXX川にて16の高校生と見られる青年の水死体と一緒に抱き抱えられた猫の亡骸が見つかりました。警察は青年の身元や 〜〜事件への関連性を……』
当日の事故現場には笑っている1人の青年と満足そうに喉を鳴らす猫を見た人も少なくないという。