へんな気分「あ、あの………あんまりくっつかれると…変な気分になりそうなので……」
高野さんが後ろから抱きしめながら肩口に顔を埋めている。きっと甘えているのだろうなと思いつつも吐息がかかる擽ったさに段々と体が熱くなってくるような気がしてくる。
「変な気分ってなに?」
「だ、抱いてほしい気分………みたいな」
「へぇーー…」
恥ずかしさで小声になってしまったけれどどうやら高野さんの耳には届いていたらしい。
「う゛……」
じわじわと顔が熱くなるのが自分でも分かる。心の中で思っていても口に出すことなんて今まで絶対に無かったから。
「ちょ、ちょっと……何か言ってくださいよ……」
「……おまえさあ…いっつも急にそうやって爆弾投下されるとほんと…なんつーか…」
「な、何ですか!?俺だって男なんですから欲情くらい普通にするに決まってるでしょ…」
高野さんは未だに顔を俺の肩口に押し付けたまま抱きしめていて表情は見えないけれど、こういう時は大体赤くなった顔を見られまいとしている時だ。その証拠に耳がほんのり赤く色づいている。
「………でも珍しいですね。高野さんが顔上げられないくらい照れてるなんて」
「うっせ。お前の口から欲情するとか初めて聞いたし、これでも動揺してんだよ」
「……ひ、引かないんですか?」
「何で?」
普段の俺からは想像のつかない言葉を吐いてしまったのに、顔を上げた高野さんは引くどころか嬉しそうに微笑んでいる。
「や、だって……俺今まで一度も言ったことなかったじゃないですか……」
「確かに言われたことねーから流石に動揺したけど、じゃあ俺が律に欲情したって言う時お前は引くの?」
「……う……嬉しいとは思います……けど、引かない…です……」
寧ろ高野さんだから触れたいし、触れてほしいって思うから。引くだなんて考えたこともない。
「……だろ?それと同じ。好きな奴から言われたら俺だって嬉しいに決まってんだろ」
「じゃあ……あの……」
着ているTシャツをたくし上げて高野さんの手を取ると、胸元へと触れさせる。高野さんの指先が尖りに掠ると思わず声が漏れてしまった。
「いっ、今…俺がどれだけ高野さんに欲情してるのか……ちゃんと知っておいて下さい……」
恥ずかしいけれど相手が高野さんだからこそ大胆に、そして真っ直ぐに好意を伝える。好きな相手と肌を重ねる行為は愛されていると実感するから。だから高野さんにも、俺がどれだけ高野さんに対して欲情しているのか知っておいてもらいたい。
そうして恥ずかしさを堪えながら言葉を選んで伝えると、高野さんの喉がゴクリと鳴ったのが分かった。