When your heart's cry reaches you(9) 怖かった、何もかもが。
あれからどうやって控え室まて戻ったのかすら、覚えていない。ただずっと控え室の椅子に座って、ぼうっとしていた。もうすぐウイニングライブの時間なのに身体が重いままで、何も出来ずに時間だけが過ぎていった。
頭にはずっと、浴びせられた沢山の罵声が響いている。
「勝ちたかった、だけなのに……」
視界がどんどん滲んでくる。オレにとって初めてのG1制覇だった。夢にまでみた、初めての頂だった。
こんなはずじゃなかった、こんなはずじゃ──
「オレ、どうして勝ちたかったんだ……?どうして、何で……」
一人なりたくて、トレーナーにもまともに顔を見せられなかった。ちゃんとやれるって伝えなきゃ、きっと、心配させる。
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