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    clarchuman35d

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    clarchuman35d

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    これは怪盗とヒーローが戦ってるところです。
    途中から始まって途中で終わる。

    【迫荼】怪盗×ヒーロー原稿進捗 ガシャーンッ!
     大きな音がした。屋上の柵から身を乗り出して下を覗く。
    「来たな!」
     分厚い窓ガラスを破ったMr.コンプレスが、シュウッと垂直に空へ昇っていくところだ。その手には、目的の杖が握られている。昇る仕掛けは目に見えないが、十中八九あの蜘蛛の糸だろう。
    「蒼炎の弾丸─アズールブレッド─」
     右手で圧縮した炎の弾を、グローブの指先から高速で飛ばす。
     雄英時代に、真っ先に考案した技だ。熱への耐性が低い燈矢の身体だが、炎に晒されている時間が特別長いはずの手指は、そのわりに火傷が少なかった。そこに炎を溜めて放つ。強い火力を持ちながら、それを生かすための身体を持たない燈矢は、頭を使って小器用に立ち回るしかない。ままならないこの身体と向き合って、時間をかけてようやく辿り着いた、これが燈矢のやり方だった。
    「おっと」
     しかしコンプレスは、その速い弾を容易に避けた。身のこなしが軽い。敵ながら、見習いたいほどだ。ぐんぐん昇っていくコンプレスを追う。足裏から炎を噴射して浮き上がるが、しかしスピードは出ない。エンデヴァー事務所にいたときはよかった。キドウの軌道を使えたからだ。しかし今は、自力で飛ぶしかない。
     コンプレスとの距離はみるみる開いていく。けれども慌てず、燈矢は両腕を広げ、手のひらを空に向けて、拳大の火の玉を次々に発生させた。
    「燐火─イグニス・ファティウス─!」
     鬼火、狐火、言い方は様々だが、イメージは墓地に浮かぶ青い火の玉である。蒼炎の玉は拡散して急激に上昇し、燈矢より先にコンプレスの高さに追い付き、そして追い越した。
    「うわっ、クソッ、そりゃないぜ!」
     コンプレスの悲鳴が降ってくる。
     “何か”に到達した燐火が、その“何か”をじわりと燃やした。たかが拳大の炎とはいえ、温度の高さは折り紙付きだ。
     Mr.コンプレスの使う蜘蛛の糸は、極めて強度が高いのだが、ひとつだけ見つかった弱点がある。否、見つかったと言うまでもない。一年前、この糸に燈矢が絡み付かれたとき、全身から蒼炎を噴いたら、糸は呆気なく燃えて消えた。並みの熱ではびくともしないこの糸は、しかし一万度を超えるあたりで限界が来るらしい。
     すなわち燈矢は、このトリックの天敵と言っても過言ではなかった。コンプレスがその事実を知っていたかどうかは、定かではない。
     糸が切れて、コンプレスが落ちてくる。
    「マニュアル!」
     屋上にいるヒーローに声をかける。ちょうどいい。作戦を試すときだ。
     先に示し合わせていた通り、落ちてくるコンプレスに向けて、マニュアルが水を放つ。彼にとっては最大級の放水だろうと思う。その水に、燈矢は左手を触れる。
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