それは穏やかな日だった。「さっきまでいたあの子は誰だい?」
鶴見くんとの盛り上がる会話もひと段落つきふと気になっていたことへの疑問を呈した。会話の盛り上がるさなかで私は構わず話し鶴見くんも答えていたが、月島軍曹から呼ばれ鶴見くんに視線で促され渋々といったテイで離れた、それまでずっと、鶴見くんの傍にいた若者がいた。身なりから見て上等兵。
「宇佐美上等兵です」
どうかしました?ときょとんと尋ねるような瞬きは少しあざとい。
「その上等兵は、どういう子なのかね?」
鶴見くんの傍にいる間中ずっと、そのウサミ上等兵は鶴見くんを見ていた。一挙手一挙足すべてをひとつも逃すまいとするほどに。熱いあつい眼差しだった。
鶴見くんを慕う部下は多いがあれ程熱烈なのは流石に珍しいだろう。
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