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    mametaro4212

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    mametaro4212

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    これ以上書けねえと思った文章供養します。ブツ切り。2本あるよ。

    『かわいいかわいい、ぼくの寝子ちゃん』
    『星イベで疲弊しきったイデアさんを世話する彼氏くんの話』

    両方ともアズイデです。

    かわいいかわいい、ぼくの寝子ちゃん



    ふああ、とあくびをする音が聞こえる。

    これで5回目、それにタイピングの音も途切れ途切れ。
    恐らく夜更かししたんだろうな、とぼんやり思う。まあ、いつものことなんですが…。
    チラと盗み見ると、もぞもぞ体勢を変えている最中だった。横向きに寝そべりつつ、長い脚を器用に折りたたんで腹に寄せる。まるで胎児か、あるいは…
    「猫みたいだな…」
    睡魔に苦戦している恋人には、きっと届いていないだろう。ついでに「おやすみなさい」と付け足して僕は作業に戻った。




    普段滅多に、いや全く動きを見せない「NRCボードゲーム部」というメッセージグループに『ごめんなさい!』と謝罪文が送られてきたのはほんの一時間前のことだ。
    どうやら部長の手違いで今日の分の部室を予約し損ねてしまったらしい。丁度イデアさんと合流し、さあ部活と洒落込もうかと意気込んでいるところにそのメッセージはポコンと降ってきた。
    どうしましょう、どうします?どっちかの部屋行く?あ、拙者の自室今散らかってるんでパスで。僕の部屋一択じゃないですか!いいですけど…
    いいんだ、と逸らされた顔がむずがゆそうに歪んでいるのを、僕は見て見ぬふりをした。
    「ええ、もちろん。イデアさんの部屋と違っていつでも片付いていますからね」
    そう言うとイデアさんは、なにおぅ~!?と簡単に煽られる。そんなところもかわいい、とつい口元が緩んでしまうのは仕方のないことだと思う。全部この人が悪い。
    とにかく、イデアさんと二人きりの時間が過ごせるのは素直に嬉しい。それに、普段はボードゲームの種類が豊富なイデアの部屋にお邪魔することが多い。故に恋人を自室に招くというのは何気貴重なことだ。そうと決まれば善は急げ、夜からはモストロの予定も入っている。時間が惜しい。
    歩き出そうとしてはた、と気付く。イデアさんはいつも購買でコーラを買ってから部室に来ている。しかし現在購買に行ったような形跡はなく、それに自室にコーラは置いていない。あるのは紅茶くらいだ。一旦購買に向かった方が良いだろうか。
    「購買寄ります?今部屋に紅茶しか無いので飲みたいものがあれば買って行きましょう」
    「そうですな…その……あ…あ」
    「あ?」
    「あ、アズール氏の淹れた紅茶、飲みたいから……い、い、いいか…なあ…って」
    「…っ」
    くやしい。恋人が大変可愛らしいことを口にしてくれたのに。スマートに返してカッコつけたいのに。顔が熱くて頭が真っ白だ。もう、本当にこの人は

    「……行きますよ!」

    絶対ボドゲで負かしてやる!!
    アズール・アーシェングロットは身勝手極まりない怒りを胸に自室へと歩き始めた。




    「それで、ボードゲームする気はあるんです?」
    部屋に入って早々ベッドに腰掛け、すごい勢いでタブレットを操作し始めたイデアに呆気にとられてしまう。え、僕めちゃくちゃ遊ぶ気だったんですが…
    「ごめん、煮詰まってたアイディアがね…移動中に閃いちゃって…歩きながらメモ取るのもどうかなって…えーっと…」
    こちらを一瞥もせず、しかし手元は忙しなく動き続ける様子にはぁ…とため息が出てしまう。
    こうなったら暫くはこのままだろう。今までの経験からと、それに彼の類まれな脳ミソから生まれるアイディアというのは本当に貴重なもの故、できる限り尊重したい。邪魔したくないのだ。彼の、その非常識なまでの閃きとそれを形にしようと没頭する姿がどうしようもなく好きだった。つまりは惚れた弱み。
    ボドゲへの意気込みを引っ込め、さてその間自分はどうしようかと気持ちを切り替える。そういえば片付けなくてはいけない書類があった。急ぎではないが早めに終わらせて損はないだろう。紙の積まれたデスクを見やりハッと思い出す。紅茶、淹れなくては。
    恋人が楽しみにしていてくれたのだ。この状況で飲んでくれるかどうか分からないが淹れて損はないだろう。もし冷めてしまったらまた入れ直せばいい。こんなことしたら「対価は何を差し出せば」と顔を青くされそうだ。というか普通なら言われずとも此方から要求するだろう。
    しかし対価なぞなくとも、彼に尽くしてしまいたくなるのこの異常事態は恋心故の誤作動。普通なら有り得ない僕の行動に疑問を持ち、怯え、そしてそれが愛故だと。気付いてくださるんでしょうかねぇこの人は…。
    まあ、気付こうが気付かまいがそんなことより今は紅茶だ。どの茶葉がお気に召すだろうか。
    アズール・アーシェングロットはくるりと身を翻えし簡易キッチンへと向かった。



    作業に取り掛かってから15分ほど経った頃。背後からふあ、と欠伸をする音が聞こえてきた。ひと段落ついたのだろうか。上半身を捻ってベッドを見やると彼は眠たげな眼で空中ディスプレイを睨んでいた。しかし相変わらず手元は凄い勢いで動いている。どうやらまだ終わっていないようだ。
    サイドテーブルに置いたカップに目線をやると飲んだ形跡はない。すっかり冷めてしっまただろうから淹れなおそうかと考える。区切りがついたら休憩として出すでもいいだろう。
    休憩の前に寝落ちしそうだな…とぼんやり考えながらアズールは作業に戻った。


    更に10分。先ほど眠たそうにしていたのでもしかしたら寝てしまっているかも?と彼の様子が気になった。タイピングの音も…止んでいるようだ。
    振り返ると、大きくてまん丸いタコのぬいぐるみに顎を乗せ、かつ腕はぬいぐるみの向こうにあるホログラムのキーボードに向かって伸びているなんとも形容し難い姿勢でピタッと静止していた。いや、よく見ると半分落ちている瞼がぴくぴくと痙攣しているのが伺える。ほぼ寝ているなこれ…ギリギリで睡魔に耐えている様子だ。
    というか、そういえばそんなぬいぐるみあったな…とぬいぐるみに気を取られてしまう。フロイドが突然『アズールにちょ~そっくりだからぁ買ってきちゃった』と押しつけて来たのは何か月前の話だっただろう。仕方なく枕元に置いてから、もうすっかり目に馴染んでしまい存在を認知していなかった。
    部屋は清潔に保っているからホコリは被っていないはずだが、如何せん長い間手入れもせず放置していたものだ。汚れていそうだが、顎を乗せて大丈夫だろうか…。



    ※※※※※※次のお話※※※※※※



    星イベで疲弊しきったイデアさんを世話する彼氏くんの話


    ぴちょん、と水が跳ねる音と微かな呼吸音が場を支配する。
    生ぬるい湯、心地よい静寂。
    ほうと漏れたため息がくすぐったかったようで目の前の青い髪と白いうなじがむずりと身動いだ。その動きに誘われるように髪をかき分け首筋に顔を埋めると、甘えるように頭をこちらに傾けてくる恋人のなんといじらしいことか。

    はぁ、幸せだな…

    生きている人間とは思えないほど日頃生っちろい肌だが、今は入浴中のせいかほんのりと赤みがあり健康的だ。そこをつるりと伝う雫に思わずグル…と喉が鳴るがいけない、疲労で弱っている恋人に無理強いをする趣味はない。

    そう、今一緒に風呂に浸かり大人しく僕に背中を預けているイデア・シュラウドは疲労困憊で絶賛ぐにゃぐにゃモードなのだ。


    ぴろんぴろん、と端末から通知音が聞こえるのと明日の授業の予習が終わったのは同時だった。
    ある程度夜も更けているこの時間に一体だれが、と通知を確認すると部活の先輩もとい恋人の弟からだ。
    『アズール・アーシェングロットさん、夜遅くにごめんなさい』
    『今日の星送りで兄さん、疲れて動けなくなっちゃって』
    『ボクが何とかしようとしたんだけど、激しいエネルギー消費をしたからボクもスリープモードに入って充電しないといけなくて』
    『もし時間があればで結構です、兄さんのお世話をお願いしても大丈夫ですか…?』

    驚いた。確かに今日の彼ら、スターゲイザーとオルトは目を見張る活躍ぶりだった。特にオルトさんが作り出した流星群。あれは確実に良い商売になる。是非ウチの店のイベントか何かにすれば大儲け間違いナシだ。それに合わせて限定メニューや特別な内装にしてみるのもいいかもしれない。はて、どのくらいの来客が見込めるのだろう…

    と、そうではなくて。

    きっと今日だけではない、日々の練習や星集め、オルトさんのギアも新しく造ったに違いない。それはそれはもう、とんでもなくグロッキーな状態になっていそうだ。恐らくまともな食事も数日摂っていないだろうし部屋だって文字通りおもちゃ箱をひっくり返した様なのだろう。彼の場合道具箱だが。

    『わかりました、行きます』

    そう簡潔に返信すると瞬時に既読が着いた。ありがとう!という可愛らしいスタンプとともに『セキュリティはアズール・アーシェングロットさんが通れるようにしておくので兄さんをよろしくお願いします!』と返ってきた。
    さて、何を持って行こう。まずは簡単な食事を用意しないとな…と頭を回転させながら椅子から立ち上がり支度を始めた。



    (くっっっっっさ!!!なんだこれ!?)

    天才故になんでもこなしてしまう恋人のお世話ができる、なんて考えながら準備したら大きくなってしまった鞄を抱えてていそいそと部屋に向かう。と、まだ扉を開けていないというのに鼻を突き刺すような異臭がした。
    これは、今回はマジなやつですね…
    オルトから連絡が来た時は「僕に頼ってくる程世話をしたいとは兄思いだな」とふんわり考えていたがこれは確かに、今すぐに何とかせねば不味いなという雰囲気がひしひしと伝わってくる。嗅覚から。心なしかドアからズモモ…と黒いオーラも見える。気がする。
    ハァ、と覚悟を決めてドア横にあるパネルに手をかざすとピッと軽く音がしてドアが開いた。
    イデアの部屋は普通の部屋とは違う。彼が住みやすいように改造(というかほぼリフォーム)されており所謂1Kのような間取りになっている。故に彼の寝床まで少し距離があるのだがそのスペースがもう汚い。様々な謎の部品や空になったエナジードリンクの缶や瓶やらがゴロゴロ転がっている。ゔっと鼻を摘まみなが辺りをよく見ると塗装用のスプレーやシリコンスプレーなど臭いの強い缶がチラホラと確認できた。なるほど、異臭の元はこの辺からかと思いながら足を進めていくとベットに四肢を投げ出してうつ伏せになっているイデアを発見した。瞬間ピシィッと電撃が走る。白くて長い足が丸出しになっていたのだ。幸いというか残念というか、上にはいつものオーバーサイズのパーカーを羽織っているため彼の可愛らしい尻は見えなかったが。そわっとした気を紛らわすように横に目を逸らすと、積みあがった本の上にスターゲイザーが身にまとう煌びやかな衣装が伸びていた。ほぼ底を尽きていた体力と理性を振り絞っての決断だったのだろう、シワを付けてしまったら後が大変そうだ。現状態でも不味そうだが着たままバタンキューよりは幾分かマシだ。
    足の踏み場を何とか見つけて、よいせよいせと大股で彼の元まで辿り着く。まずはシャワーだ。太鼓を叩く、というのは汗をかく運動だろう。それにあの衣装。背中が丸出しでいくら夏といっても体が冷えてしまいそうだ。すよすよと寝ている所申し訳ないが起きてもらい浴室に突っ込んで、その間に軽く部屋を片してしまおう。

    「イデアさん、起きてください」

    そう声をかけながら肩を揺さぶると、うぅん…と唸りながら半裸の恋人はもぞもぞ蠢く。先程より少し力を込めて更に揺さぶればゴシゴシと目を擦りながらのそりと上体が起き上がった。あずーるし…?とぼんやりした顔で上目遣いにこちらを見上げるイデアさんがめちゃくちゃかわいい。沸き上がった感情を発散するかのようにガシガシと少し雑に彼の頭を撫でる。しかしイデアさんはまだ覚醒しきっていないようで、されるがまま揺さぶられ心地よさそうに目を細めていた。この…っ!この無防備め…っ!ぐぎぎ、と奥歯を嚙みしめながら大きく膨らむ感情を抑えて紳士な対応に努める。好きな人の前ではかっこつけたい。
    おはようございます、と笑顔を作りながら乱暴に撫でていた手をするりと頬に移動させるとやっと目が覚めたらしいイデアさんがぶわわっと顔を赤く染め何か言いたげに口をパクパクさせていた。大方、「どうしてここに!?」とか「見苦しいところを見せてしまい大変申し訳」と言いたいが驚きすぎて言葉が出てこないのだろう。何となくわかる。彼氏なので。

    「オルトさんに頼まれたんです。お疲れのところ大変心苦しいのですがシャワーを浴びてきてはいかがですか?風邪を引いていまいますよ」

    オルト、という言葉に納得したのか混乱気味だった思考が落ち着いたようだ。先程とは打って変わって凪いだ表情を浮かべる彼は「そっか」と短く返事をし、僕の背後で眠るオルトに優しい眼差しを向ける。

    その顔の、瞳の、なんと美しい事か。
    あぁ本当にこの人は。僕を魅了して止まない罪なお人だ。


    すり、と頬を撫でると彼は催促と受け取ったのか「起きるよ」と呟きすっくと立ち上がった。
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