大きな大地の小さなお話寒い寒いこの土地で、ボクは何を得られただろう。
いつだって厳しくて、冷たくて、冷酷で。
それでもここが好きなのは、貴女がいてくれたから。
北風と雪が織り成す轟音の中、パチパチと薪が燃えて割れる音が響く。年中吹雪いているようなこの国では当たり前の光景なのに、今日は自分の心の中を表しているようでやけに耳についた。
母さんが死んでしまった。
いつかは来るかもしれないと、胸の奥底にしまっていた不安が、事実として頭をもたげ心臓を握りつぶすように支配している。思い出すのは優しい笑顔と温かいスープ、明かりをつけることのない習慣の我が家なのにキラキラと輝いていた気がする。それがさらに切なさを増して襲いかかる。母さんが着ていたカーディガンも役目を終えたかのようにぬくもりを失っていた。確かに存在していたのにはじめからなかったような焦燥感、なのに苦しみだけはそこに有る。
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