「……!さすがだね、ヒカリくん!」
襲いかかる魔物へとどめを刺したヒカリに対して、アグネアは飛びつく…ように見えたが、飛びつく直前で止まりぎこちなく声をかけた。
(まただ。)
ヒカリは数日前からそのぎこちなさに気がついていた。人懐っこくて他人との距離が近いアグネアは、こういう時はいつも喜んで腕を組んできたり後ろから背中に飛びついてきたりしていたのだが、ここ数日はヒカリに対してそれをためらっているように見える。
(……避けられて、いるのだろうか。)
何か気に障ることをしてしまったのかもしれないが、ヒカリには全く思い当たるふしがない。しかしいつまでもモヤモヤした気持ちを抱えているのも良くないだろう。
「アグネア」
先に進もうとしていた彼女の細い手首を掴んで呼び止める。
「へっ!?」
呼び止めたはいいが、ヒカリは何を聞けばいいのかわからなくなっていた。別に会話や態度が変わったわけではない、むしろ異性との距離感としては通常と言える状態になっただけだ。
(俺はアグネアに、どうしていてほしいのだ……?)
「ヒ、ヒカリくん……?」
手を取られたまま動けなくなってしまったアグネアの顔は、林檎のように真っ赤になっていった。