「ハンドサイン」「口癖」 ひとつのプロジェクトが終われば、また新しいプロジェクトが始まる。ゴールのないマラソンを永遠と走りつづけているようだ。
同期の半数は激務に耐えられず2年以内で辞めてしまう中、杏寿郎は持って産まれた強い身体と剣道で培った精神力で乗り切ってきた。
そう、そのはずだった。しかし、いくら杏寿郎とて限界はやってくる。それがあの日、木曜日0時過ぎだった。
もう、何度となく木曜日0時過ぎを待ちわびた自分がいること。そして何かしらの言い訳を考えてサウナに通っている事実。仕事のストレスからくる性欲の解消のためなのか。考えても仕方のないことは考えないのが杏寿郎の心の自己防衛術だ。答えを求めると深い底なし沼から這い上がれなくなると、心が警報を鳴らす。いっそのこと、激務で精神破綻をきたしたと考える方がマシな気すらしたのだ。
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