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    そらの

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    そらの

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    転生現パロかつ女装ネタかつ年上×年下という罪深いトマ人を書こうとした痕跡を見付けた。

    転生現パロ(トマ人) そう日課は変えられない。庭に出て、木刀を握る。構えて目を閉じ瞑想し、雑念が消え去ったと同時に振り下ろす。シュッシュッと風切り音と布の擦れる音だけが響く。遠くで小鳥が囀っていたように思うが、それさえ耳に入らない。
     身体を鍛える必要などなくなった。元素の薄まったこの世界で、身を守らなければならないことは数すくない。勿論悪人がいないほどに平和な世界というわけではない。それでもそれを取り締まる警察がいれば、自ら武器を持ち立ち上がらなければ危険を感じる世界ではなくなった。たとえばヒルチャール、たとえば獣域ハウンド、たとえば遺跡機械。そんなものはない。ときどき小さなスライムや昌蝶を見かけることはあるが、それらが害をなすことはない。そんな平和な世界でも、私は変わらず木刀を握っていた。
     鍛えることが目的ではない。ただこうして鍛錬に没頭すると、束の間頭の中が静かになるのだ。何を考えることもなく、ただその切っ先に集中する。気分転換の方法はいくつもある。けれどその中でもこの朝の日課としての素振りが一番私のこころを癒した。
     幾分か素振りを繰り返していればふわりと味噌のにおいと、米の炊けるあまいにおいが鼻を擽る。思わず鼻をくんと動かすと、それだけで笑みが零れる。そんなに腹を空かせているわけではない。当然育ち盛りの男であるから腹は空かしているが、食い意地を張るほど食自体には興味がなかった。それでもこの朝餉のにおいに笑みが浮かぶのは、記憶の底に眠るとある男を彷彿とさせるからだ。
    「お兄様、朝ごはんの時間ですよ」
    「ええ。着替えたら行きます」
     ひょっこりと顔を出し、笑顔を見せる妹に微笑み返す。しかし踵を返し姿が見えなくなった妹に隠れ、こっそりと吐息を零した。
    『若、お食事の時間です。今日はカブのお味噌汁ですよ。とっても甘いカブで、甘酢漬けにもしてみたんです。若の分は絶雲唐辛子でピリ辛にしたんですけど、お嬢には辛いかなって唐辛子抜きです』
     耳の奥でそんな声が木霊する。汗を拭うだけでは気持ち悪かろうと、冷たい水を張った桶と手ぬぐいを片手に待つ彼はにこにこと楽しげに笑い続けるのだ。朝の忙しい時間だ。家のすべての管理を任され公務をおこなう妹の補佐をしながら、彼自身、彼独自の情報源との伝手を元にしなければならないことなど山積みだろう。そんなひと息つく間もないだろう朝に、彼はこうして談笑する時間を必ず設けてくれるのだ。私とてこどもではないのだからそのくらい、世話をされなくともできる。だから彼を思って下がるよう告げればいいのに、告げない理由などただ一つ。この時間を私は愛おしく思っていた。
     朝、起きることが辛いときもあった。いくら必死に筆を走らせ、策を練ろうと寝る間もない日々を過ごせば、このまま朝が来なければいいと弱音を吐きたくなる日とてあった。どれほど完璧な人間のように振舞おうと、社奉行としてほかに相応しい者などありはしない、そう豪語できるほどに適任であろうと人間である限りこころが弱ることとてある。しかし朝陽のように眩しい笑顔が待っていてくれる――そう思うだけで、幾ら身体が重かろうと起きることができた。
     愛しかったのだ、朝のこの時間が。ささやかなぬくもりに包まれるこの時間が。何かを欲しがることなど物心つく頃には忘れていたというのに、この時間だけは欲して止まなかった。立てなくなり、朝の日課ができなくなるそのときまで屋敷にいる限り欠かさずしてきたそれを、またこうして続けてしまうほどに。
    「……トーマ。君はどこにいるんだい?」
     ちゅんちゅんと小鳥が愛らしく囀った。空気がきんと冷え込んで、吐いた吐息が白んだ青空に溶けていく。背中を伝う汗がじきに冷えてしまうだろうに、朝餉とて冷めてしまうだろうに、どうしても立ち去ることができなかった。朝陽は遠く、その陽光は弱々しい。せめてこの陽光が、夏の朝の太陽のように眩しければよかった。そうすれば誤魔化されることもできたのにと、再び吐息を零す。
     まだ記憶の中の彼に浸っていたかった。しかしそうもしていられないと、かつてしていたように気持ちを切り替える。哀切さえも胸の奥底に沈めて、己が立場を思い出す。此処にいるのは稲妻国社奉行神里家当主・神里綾人ではない。ただの高校生なのだと思い出す。一国を担う要人としての生涯を記憶しながらも、私自身は一五のなんの責任も持たないこどもなのだと思い出し、引き摺られそうなこころを律した。
     だがどうしても、一七のこどもであるからこそ律しきれない想いに浮かぶ苦笑は、きっとこどもがするにはあまりに甘く苦いものに違いない。
    「……存外、君より私の方がしつこいようだ」
     思わず零した呟きは、妹の兄を呼ぶ声に搔き消された。
    第一章 


     化粧水、乳液、美容液。華奢で華やかなボトルがテーブルに並べられていく。肌質に合わず買い直したものがたくさんあるのだと苦笑する綾華は、女の顔をしていた。
    「お兄様は肌がとてもお綺麗ですし、脂っぽくもない。でもすこしだけ乾燥気味かしら……? それならしっとりするこちらはいかがでしょう?」
     そう綾華が差し出すボトルを見て、それが一体どんな効能を持つのかわかるはずもない。メーカーの名前を聞けば、もしかしたら聞いたことはあるかもしれないがそれだけだ。だからゆるりと首を振り、苦笑した。
    「そう言われてもわからないよ。それに……ちょっと興味があるだけで、そんないいものを使ってもらうほどじゃないから」
     ――ちょっと興味があるだけ、そんなのは嘘だ。ちょっとどころではない興味がある。しかし綾華のようにかわいくなりたいと自身を磨くためではなく、どろりと濁った執着心が招いた欲求のために華やかなそれらを使うことには躊躇いを覚えた。自分が綺麗なものには思えず、飾り立てれば飾り立てるほど自分の醜悪さが際立つような気さえする。それでも綾華に化粧に興味があるのだと告げてしまった私は、どこか必死だったのだろう。
     彼が本当にいるとも知れないのに。例え彼がいたとして、私を覚えているとも知れないのに。それでも私は、彼ともう一度巡り合えたのならば――を考えてしまった。
     しかし改めてこうして準備されてしまえば私は怖気づき、綾華の差し出したボトルを押し返した。やはり不相応だと綾華の好意を辞退し逃げようとすれば、やわらかい少女の手が骨ばった薄っぺらい私の手を包み込む。
    「お兄様はもっと我が侭になるべきです」
     綾華はそう言うと、すこしだけ悲しげな顔をして笑った。だから私は思うのだ、私はもう既に充分我が侭を言っていると。何も記憶していない綾華を巻き込み、こんな顔をさせている私は兄失格なのだとそう思うが、この手を振り払うことはできない。ただやさしい彼女の好意に寄り掛かり、すこしばかりの夢を見ることが返礼となるだろう。そう思い、私は身体の力を抜いて彼女に顔を差し出した。

     ――ことは綾華がスマートフォンとにらめっこしていたことから始まった。
    「うー……今回は我慢、ですね……」
    「何がだい?」
    「お兄様! 見てらしたんですか、恥ずかしい……」
     唸りながらスマートフォンの画面を見ていたことが恥ずかしいのか、綾華は顔を赤らめ俯いてしまった。裕福で仲の良い家族と言えど、だからこそ躾の厳しい家だ。両親は要らぬやっかみで私たちが不遇な目に合わぬようにと、どこに出しても恥ずかしくない教育を施した。その結果一六のこどもでありながら、綾華は淑女としての気品を持っている。だが偶に見せるこのような仕草が愛らしく、私は相好を崩した。
    「かわいらしい唸り声が聞こえてきて気になってしまってね」
    「もう! お兄様!」
     怒ったと眉尻を吊り上げる綾華がかわいくて仕方がない。以前(・・)は年の離れた兄妹であり、両親が逝ってからは親のような気持ちで彼女には接していた。だからこうして戯れるのは兄妹でありながら新鮮な感覚で、ついつい羽目を外してしまう。
     ぽこぽこと湯気を立てるように怒った綾華は、軽く私の肩を叩き睨めっこしていたスマートフォンの画面を私に見せてくれた。
    「これを見ていたんです。新しい口紅で春限定色なんですよ」
    「おや? 口紅なら確か先日買ってなかったかい? 冬限定のが残ってたとかなんとか……」
     画面の中にはなるほど、随分とかわいらしい口紅が映っている。実際使うとどんな色なのかまったくわからないが、透明な口紅の中に花や金箔が仕込まれ見目だけで惹かれることは理解できる。しかし先日売り切れて買えなかったのだと嘆いていた、ケースが宝石箱のようにかわいらしい口紅を買っていたことは記憶に新しい。それを指摘すれば、綾華は言葉を詰まらせ顔を俯かせた。
    「そうなんです。だからお小遣いも厳しいですし、お年玉まで使うわけにはいきませんから……」
     もし友達に遊園地に誘われてもお金がなくて断ることになったら、なんて嘆く綾華に思わず笑ってしまいそうになる。本当ならお小遣いだって増やしてもらえるのだ。それでも綾華は頑なに固辞する。曰く、自分は恵まれた家庭にあることを理解し感謝すべきである。それでなくともテストや部活で好成績を収めればプレゼントを貰ってしまうというのに、これ以上自分を甘やかせられないとのことで。そういった彼女の自身への厳しさや姿勢は、他人を惹きつける魅力となっている。故に遠巻きに高嶺の花だと距離を置かれることはままあるが、最近では友達が増えたのだと毎日が楽しそうで、私とてそれがうれしく思う。
     歳が学年でいえば二つ違いだからと、してやれることはあまりない。以前(・・)のように物を買い与えてやることなど以ての外で、稼ぎがないのだから当然のこと。お小遣いを使う機会など本を買ったり、休日に喫茶店で使う程度ではなくならず毎月貯金している身だからプレゼントくらいできるのだが、親からもらった金でそれをやることはおかしいと思えた。しかし残念そうに画面を見る綾華を見ていれば、今回くらいいいのではないかと思えた。
    「これは塗るとどんな色になるんだい?」
     化粧品に興味を示したことが今までなかったが、試しにそう話を振ってみれば綾華の顔が輝く。
    「これはですね、体温などに反応して自然な色味に発色する口紅なんです! イメージとすると保湿用のリップクリームに近いんじゃないでしょうか。これだけで下地とかは使わず塗れてしまうんですよ」
    「へえ。化粧は大変そうだと思ったけど気楽に使えるんだね」
    「はい! お兄様は……私もですが、肌も髪色も薄い色味だと、あまり濃い色だと化粧をしている感がとても出てしまって。だからピンク系だったり、肌に馴染んで発色する化粧品の方が相性がいいんです。お母様くらいのお歳になれば赤い口紅もかっこよくて綺麗ですけど、私じゃまだ早くて――」
     早口ではしゃぐ綾華はまるで私が化粧するかのように、こっちの口紅も似合うだろう。アイシャドウは、あれは、これはといろんな化粧品を見せてくる。一六で折り目正しく品行方正は高校生とはいえ、綾華も女の子なのだなとしみじみと思う。校則に引っかからない程度に口紅を塗り、友達とお揃いなのだと足の指の爪に色を乗せて。そんな彼女を見ていると、じわりじわりと「いいな」と思うようになっていた。
    「……私も一度化粧してみようかな、それならこれを私が買ってもおかしくないだろう?」
     冗談めかし言ったつもりであった。いいな、と思ったのは確かだ。しかしそれを表には出さないように、綾華の欲しがる口紅を買ってやる口実として冗談で。
     だが私は甘く見ていた。綾華がどれだけ私を理解しているかを。記憶がなくとも、彼女の魂は今生でも変わらない。私が隠しきる覚悟もない気持ちなど、造作もなく彼女は見抜いてしまう。
    「それなら、これはお兄様に買っていただきましょう。綾華は一度どんなものか使わせていただくだけで充分です。だから、これに似合うお化粧を是非お兄様は覚えてくださいね」
     有無を言わさず彼女はそう言った。瞼を伏せてそう告げる彼女は、私の剣を弾いたあの日のように凛々しく、独り立ちした大人のような顔をしていた――。

    「とりあえずは私のおススメで試してみましょう。肌質が違いますから、物は試しとなりますが」
    「ええ、任せるよ」
     素直に綾華に従い洗面台に向かう。水で顔を洗ったがそれでは足りないのだと、こんもりと泡立てた洗顔泡で顔を洗った。ぷちぷちと泡が弾ける感触がおもしろくて、不思議な感覚になる。普段使っている眠気覚ましにいい爽快感の強いそれより、断然こちらの方が気持ちよく感じられた。
    「うん、これはいいね。なんか気持ちいい気がする」
    「そうでしょう? 私もお気に入りなんです。お兄様は皮膚が薄いですし乾燥気味なので、男性用のものより多分こちらの方がいいと思いますよ」
     前髪は前に綾華から貰ったヘアバンドで持ち上げた。化粧するのであればこのままがいいだろうとタオルで拭きながら綾華の部屋に行けば、先程押し返したボトルが鏡台の前に並べられていた。しかしこれをどう使えばいいかわからず、綾華を見詰めれば座るように促された。
    「掌をお椀にして零さないように化粧水を出して顔に馴染ませてもいいんですが、コットンに染み込ませた方がやりやすいでしょうし化粧水が浸透しやすいかと。今日は僭越ながら私がさせていただきますね」
     綾華はそう言うと、コットンにこれでもかと化粧水を染み込ませ、ひたひたのそれで私の顔を撫でた。実際には押し付ける、叩く、に近い触れ方だったように思う。しかしそんな勢いはなくて、ただひんやりと冷たいそれが顔中に行き渡るのを目を閉じ待った。微かにぴりっとした痛みを感じるが、数度乾燥していると言われたこともあり、乾いたそこに浸透していると実感できてこれがまたおもしろく思えた。
    「ふふっ、やっぱりお兄様のお顔は綺麗で触り心地いいですね」
    「そうかい? 何もしてないけどね」
    「それ、女の子にいうと僻まれますよ?」
     さあできたと言われ、目を開けた。鏡を見れば気のせいか艶があるように思える。それに触れるとひんやりして、確かに気持ちがいい。
     思わず感心してしまうと、その様子に綾華はくすくすと笑いまだまだ序の口だと次のボトルを手にした。
    「今度は乳液です」
    「もうこんなに艶があるように見えるのに?」
    「それを持続させるために必須なんです!」
    「わ、わかったよ……」
     女の子は大変だな、と改めて思いながら綾華の好きにさせる。今度は手で塗るのか、クリームというには緩いそれが華奢な指先によって塗りこめられていく。くすぐったくて思わず笑えば、おしゃれは我慢だから動くなと怒られて、やっぱり女の子は大変だ。
     今度こそ下準備は完了だと言われ、頬に触れればなるほど。もちもちとした触り心地がよりよくなった顔がそこにあった。まるで赤ちゃんとは言わないが、こどもの肌のようだ。綾華の頬も触り心地がよさそうに見えるが、こうして丁寧にケアをしているからこそなのだろう。
    「夜なら他にもすることはありますが、お化粧前ならこのくらいですね」
    「女の子は大変だ……」
     思わず口からも滑り出た言葉に綾華はそうなんですよと微笑んだ。
     それからは正直思い出したくない程度には大変だった。ずらりと並べられた、きらきらしている宝石のような化粧品の山。色の違いも判らぬ近似色が大量にあって、どういう化粧をしたいかと聞かれる始末。何もわからないから綾華のおススメで、最低限にしてほしいと懇願すれば、すこし残念そうではあったが綾華も引いてくれた。
     私が女であれば、綾華ともっと話をしてやることもできただろう。私が姉であれば、化粧品をシェアして使うこともできただろう。私が、女であれば――そこまで考え思考を止めた。折角綾華が楽しそうに手解きしてくれているのだ、水を差したくはなかった。ただ彼女にはすこし控えめに、けれど満足するまで楽しんでくれればそれだけでいいと思えた。
    「それではあまり派手になりすぎないように、控えめにしますね」
    「ええ、お願いします」
     たくさんあった化粧品を片付け、それでも私からすれば充分な量の品が並べられた。
     肌は元が綺麗だからこれだけで充分だろうとCCクリームにベビーパウダー。長い睫毛はカールさせるだけで充分だろうとビューラーと透明なマスカラ。眉は充分整っているからカットも不要だろうとこれだけは自前で。あとは幾つかの粉を固めた化粧品と、ペン型のそれ。あとは、未開封の小さな小箱。
     思わずその小箱を目で追えば、綾華はくすりと笑ってその小箱を私に渡した。
    「これは仕上げです。楽しみにしててくださいね」
    「これ、は綾華に買ったものだから……最初に使ってくれて構わないんだよ?」
     これ、とは化粧するに至った理由の花が埋め込まれた口紅のことである。一度使いたいという綾華に、通販で届いたそれを手渡していた。しかし未だに未開封なそれは、まるで私が遣うことを待ちわびているようだった。
    「いいえ。これはお兄様のものですよ。私は後で使わせていただけたら充分です」
    「……そう」
     思わず小箱を握り締めれば、綾華が微笑ましそうな顔をしたから私は俯いた。

     指でクリームを塗って、パフやブラシで粉を乗せていく。眼前に迫る尖端に微かに恐怖を覚えたり、すこしビューラーで挟まれた瞼が痛かったが、それ以外はただただ不思議だった。
    「お兄様、なんで女の子がお化粧するのかわかりますか?」
     ただ化粧品の使い方を説明しながら、あとは静かに化粧を施すのに飽きたのか綾華はそう問い掛けてきた。だから私は当然のようにわからないと応える。
     綾華は母上に憧れていた。やさしくて、いつも父上を支え微笑んでいる人だ。躾に厳しく時折怖く思うことはあれど、不必要に子を叱ることはない。美しくどんな時でも凛としている姿は理想の女性と言えるだろう。そんな母上はいつも化粧をしていた。身嗜みを整えることで、なりたい自分になるのだと、確かそう言っていたように思う。
     綾華が化粧するのはそれが理由だろうか。そう思ったが、なんとなく違うと思えた。綾華は私が化粧をしたい理由ではなく、女の子がと言った。つまりは自分だけでなく背伸びをするように化粧する女の子すべてをさして言っているのだろう。それならばわかるはずがない。だから、どうしてと問えば綾華は目を閉じてと囁いた。
    「武装なんですよ、お化粧は」
    「やけに物騒な言い方だね」
    「ふふっ。そうですね」
     瞼に何かが塗られていく。きっとさっき見せられたピンクのアイシャドウだろう。ほとんど白のもの、青みがかったものに、濃いめのものを使うのだと説明されたがいまいち理解に及ばなかった。しかし下手なことはされないだろうという信用から安心して委ねる。
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