お前への不満×20「01_鈍感すぎるのを何とかしろ」
※ 木ノ葉平和パラレル
※ 21才暗部イタチ×16才中忍サスケ
朝、おれが部屋着から外行へ着替えをしていたら、兄さんに何の脈絡もなく悪戯に脇腹を擽られた。
だから夜、その仕返しに脱衣所でシャツを脱いでいた兄貴の脇腹を後ろから擽ってやったなら、兄貴はたいそう怪訝そうに眉を顰め、おれを肩越しに見下ろした。
「何しているんだ、お前」
「…さまざま鈍感過ぎるだろ、アンタ」
「02_メール(手紙)の返事を直接言うな」
※ 木ノ葉平和パラレル
※ 21才暗部イタチ×16才中忍サスケ
兄が遠征に出掛けてもう一月、サスケが要約すれば「お元気ですか」という文を烏に託したなら、もう一月後に帰ってきた兄が「元気だぞ」と言った。
「03_美化した俺のイメージを周りに言うな」
※ 原作沿い
「兄さんは完璧だった!兄さんこそ火影にふさわしかった!兄さんは…!兄さんは…!」
「どうどう、よしよし、サスケ。もういいよ」
「04_いい加減慣れてくれ」
※ 原作終了後パラレル_二人旅設定
※ R15
あれは褄を重ねてまだ指折り数えられる頃のことだ。
行灯の揺れる明かりと影の下、閨に組み敷いた弟が仄かに紅潮する顔は背け、切なげな目は明後日の方へと投げやっているので、この行為がそれほどに嫌だったのかと問えば、
「兄貴のやらしい顔なんて、まともに見られるか」
なんて、そっぽを向いて唇を尖らせた。
その時は成る程そういうものか得心したが、
「…お前、いい加減そろそろ慣れたらどうだ」
今夜もまた相も変わらず横顔、首筋、鎖骨を兄の目に晒す弟の、それそこにイタチは呆れ半分の口吻けをつつと滑らせる。
「05_構われたいなら素直に言え」
※ 現代パラレル
※ 21才大学生イタチ(一人暮らし)×16才高校生サスケ(実家暮らし)
「…なあ、おい、兄さん」
「なんだ」
「今日の宿題、終わったぜ」
「そうか」
「月曜日にある小テストの対策もした」
「二日前だというのに気の早いことだ」
「皿洗いもしたし」
「後でおれがするから、置いておけと言っただろう」
「…ふ、風呂にも入った」
「ふうん。それで?」
「もうこのリビングの明かりもテレビも今すぐ消すからな!くそ兄貴が!」
「06_他の奴にはそのカオ見せるな」
※ 現代?パラレル
※ 21才イタチ×16才サスケ(アクスタスーツ兄弟)
※ 兄弟は街を牛耳る組織に所属しています
※ この話(http://shiki119.blog.fc2.com/blog-entry-711.html)やこの話(http://shiki119.blog.fc2.com/blog-entry-712.html)の世界線
何度かのキスの後、堅苦しい上着は互いに脱がし合ってカウチの背に放り出し、サスケは兄のシャツの袖を引くように自らベッドに上がった。
追いかけてイタチもまた仰向けの弟に覆い被さる。
薄灯りの下、サスケの肌は白く、容貌は極めて怜悧だ。だが、こちらを見上げているというのに何処か見下ろすその瞳はイタチを試すようでもあった。
「挑発的だな」
組み伏せた弟にイタチは言った。
「昼間と同じだ」
今日の午後、暴漢を装い、路上で兄弟を囲んだ雇われごろつき共にもこの弟は今と同じ顔と目をしていた。
イタチが出るまでもないと一人で相手をしてみせた弟は、やはりその時と同じようにネクタイを解いてみせる。
そうして唇の片端を僅かに上げ、薄く開いた。
「じゃあここからはベッドの、アンタの下でしか見せない顔をさせてみせろよ、兄さん」
「07_勝手に俺のスケジュールを変えるな」
※ 木ノ葉平和パラレル
※ 21才暗部イタチ×16才中忍サスケ
それは正午少し前のこと、今日は非番だという次男がようやく階下の台所に顔を出し、卓袱台を見て首を傾げた。
「母さん。おれの昼飯は?」
食卓には伏せた茶碗も箸もない。
ミコトは洗濯物を畳む手を止め、息子と同じように首を傾げた。
「あら。兄さんとお昼を食べに行くんじゃないの?」
そう言うと、次男は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
「兄さんが今日は昼で任務が明けるからサスケを連れて出掛けようかなって、今朝話していたけれど」
「…そんな話、おれは知らねー」
むすっと口をへの字にする辺り、この次男はどうやらまたいつもの勝手を長男にされたらしい。
ただ、その長男はまだ帰らない。所属の都合上、任務が長引くことはざらにある。
「おなかが減っているなら、先に軽く何か食べておく?」
元より次男はそのつもりで階下へ降りてきたはずだ。きっと空きっ腹の虫がもうすぐ鳴き出すに違いない。
けれど、サスケは母の言に少し考え「いや、いい」と首を振った。
遠ざかる階段を上がる次男の足音を聞きながら、ミコトは次の服を膝に乗せる。
「08_俺の優先順位が低すぎないか」
※ 原作沿い
※ 13才イタチと8才サスケ
今日もまた兄さんは、
「許せ、サスケ。また今度だ」
なんて言っておれの額を小突き、おれのことを後回しにする。
ああ。
おれが勝てるものといえば、アカデミーの宿題くらいなものだ。
「09_照れ隠しでもそこまで否定するな」
※ 木ノ葉平和パラレル
※ 21才暗部イタチ×16才中忍サスケ
風呂上り、ここのところの多忙のため、サスケがほんの少し伸ばしたままにしていた後ろ髪を暑くて結んでいたら、
「あら、兄さんとお揃いね」
なんて兄さんの前で母さんに言われ、
「おれとお揃いだな」
と兄さんには結んだ後ろ髪を悪戯に引っ張られ、サスケは朝を待たずその夜みずからの手で髪に鋏を入れた。
「10_ここまできてオアズケできるか」
※ いつかどこかの
兄がまた「許せ、サスケ」とサスケの額を小突こうとするので、サスケはさっと両掌で額を覆ってみせた。
「いつもいつもアンタの好き勝手ばかりできると思うなよ」
サスケの額の前、兄の揃った人差し指と中指が行き場をなくす。
兄は僅かの間、自らの指先と弟の額を見比べていたが、やがてまるで開かずの扉を力任せにそうするように、サスケの両手を強引に引き剥がしにかかった。
「あっ、くそがっ、何しやがる!」
「ここまできてオアズケできるか」
不意を突かれた格好の攻防はすぐさま決し、強引に開かれたサスケの額に満足げな兄の指が我が物顔で押し入る。
「11_俺が悪かったからそんな顔すんな」
※ 原作沿い
※ 13才イタチと8才サスケ
入相の鐘が鳴る頃に、アカデミーのやんちゃな子どもたちはあちらこちらの塀や欄干の上をたったか走り、跳び移り、忍ごっこなんかをして帰る。
そういう子どもらを見上げ見送りながら、
「サスケはしないのか」
イタチが隣を歩く弟に問うと、帆布鞄を肩から提げたサスケはちらりと彼らに目をやって「しない」と答えた。
「まだまだあれは出来ないか」
そう重ねれば、みるみるつむじを曲げた弟がぷいとそっぽを向く。
「できるけど、今はしないだけだ」
イタチだってなにも本当に弟が出来ないだなんて思っているわけじゃない。
アカデミーの成績だってちゃんと知っている。
ただほんの少し意地悪をして、からかってみただけだ。
だけれども、
「今のはおれが悪かった」
許せサスケと弟の額を小突き、並んで歩く二人きりの短い短い久しぶりの帰り道。
「12_交友関係広げろ俺以外見るな」
※ 現代パラレル
※ 21才大学生イタチ(一人暮らし)×16才高校生サスケ(実家暮らし)
週末土曜日の昼下がり、午前だけの教材とは思えないほどに膨らんだ通学バッグを肩から提げて、弟のサスケが仏頂面でイタチの住むマンションへやって来た。
こうして来たからには扉も開けてやるし、部屋にも上がらせてやるし、泊まらせてもやるけれど、
「お前、せっかくの週末に兄貴のところばかりに来ていいのか」
「…そんなのおれの勝手だろう」
普段は連絡も寄越さない、実家にも顔を出さない、どこで何をしているかも分からない兄貴なのだから、週末土曜日の昼下がりからの1.5日くらい「兄貴」をしてくれたっていいじゃないかとサスケは思う。
「13_夢と同じこと言ってんじゃねえ」
※ 原作沿い
※ 367話後
「少し背が伸びたか」
「強く…なったな…」
洞穴での邂逅の後、サスケは我知らず拳を握る。
ちくしょう。
「夢と同じことを言いやがって」
サスケは時折幼い頃の夢を見る。
「14_強くもないのにそんなに飲むな」
※ 現代パラレル
※ 21才大学生イタチ(一人暮らし)×16才高校生サスケ(実家暮らし)
日付が変わる頃のこと、空いた小腹を慰めようと甘いものは好きじゃないけれど兄の淹れたホット・チョコレートを横から一口、二口と飲んでいたならば、
「なあサスケ」
と弟の勝手を咎めるでもなく傍らの兄が言った。
「その昔、カカオは媚薬として使われていたそうだ」
「へぇ…」
「おれは甘いものには慣れているが」
「うん」
「不得手なお前は果たしてどうだろうな」
体の具合はどうだ、なんて唇の端を意地悪に上げる兄の方が、ホット・チョコレートなんかより余程甘くて、たちが悪かった。
「15_ぎくしゃくするな、こっちまで照れる」
※ いつかどこかの
こちらに背を向けたサスケの肩越しに見える物を取るため、イタチが少し無精をしたのがいけなかった。
回り込まず弟の肩辺りからぬっと伸ばした腕に、サスケが常にないほどぎょっとした様子で振り返る。
「な、んだよ」
「何と言われてもな」
イタチが目でサスケの前に置いてある物を示すと、瞠目していた弟の瞳は動揺と僅かの期待からやがてみるみる落胆と威嚇に変わっていく。
何がとは言わないが、おそらく「この間」が弟にとっては初めてのことで、そんなに悪くはなかったのだろう。
とはいえ、いちいちこうも構えられてはこちらも胸に波打つものがあって面倒だ。
早く慣れさせないとなとイタチは心持ち後じさりを始めた弟の首根っこを押さえて捕まえ、ぐいと引き寄せた。
「16_あんなの生真面目に答えるな」
※ 現代?パラレル
※ 21才イタチ×16才サスケ(アクスタスーツ兄弟)
※ 兄弟は街を牛耳る組織に所属しています
荒くれ者が巣食うこんな街の酒場だ。過ぎた酒に気が大きくなり、着飾った店の女性たちに横暴に振る舞う下卑た男の一人や二人、何も珍しいものではない。
それにサスケが用心棒代わりに突っ立つ階段を上がった先では、兄のイタチが組織のお歴々と会合の真っ最中だ。ここは兄の顔を立て、面倒事は御免だとも思っている。
それでもサスケが今夜、酔っ払い男と女性の間に割って入ったのは、男がついに一線を越え、女に手を上げようとしたからだった。
咄嗟に掴んで止めた手の向こうで深酒の男は不興の憤怒を顕にしたが、サスケを一目見るや否やみるみるそれを好奇の視線に変え、こちらの上から下までを値踏みし始める。
「やんちゃな面構えだが、顔の作りは随分といいじゃねえか」
男の経験はあるのかなどと酒臭い息を生暖かく吐き掛けられたので、サスケは男の腕を捻り上げてやった。
酒場の裏に付けられた迎えの車の後部座席に乗り込むと、そこには既に革張りのシートバックに背を深く預けた兄がいた。
「あんなもの、生真面目に答えるな」
と言う。
心当たりはある。
先程の一悶着を兄は何処からか見ていたに違いない。
「答えてねーよ」
組んだ脚の膝の上に頬杖をつく。だから、隣の兄の表情は窺えない。
「顔に出ていた」
「…まだ男に抱かれたことのない顔をして悪かったな」
そうであるのはいったい誰のせいだ、とは言えないサスケの瞳に街灯の軌跡が流れ始める。