男子高校生 吸血鬼スケくんの日常2023-2日目_モブ子ちゃんに恋するモブ男くん 唐突ですが、男子高校生モブ男くんはクラスメイトのモブ子ちゃんに片想いをしています。
モブ子ちゃんもモブ男くんのことは憎からず思ってくれているようですが、未だ友人以上恋人未満のモブ男くんとモブ子ちゃん。
今日も今日とてモブ男くんは陸上部の練習に励むモブ子ちゃんを放課後の教室から恋のくそでか溜め息を吐きながら眺めます。
その溜め息のあまりの大きさに自分でもびっくりモブ男くん。はっとして教室を見回せば、クラスメイトたちは疾うに部活や委員会に出払うか、あるいは帰宅しており、ただ一人を除いてはもう誰もいませんでした。
残っていたのは窓際の席の男子生徒。
9月に入っても連日残暑厳しい日々だというのに厚手のパーカーを制服のシャツの上に着込み、何ならフードまで目深に被っている学校一の変わり者にして、学校一のイケメン「うちはサスケ」くん。
うちはくんは図書委員で帰宅部。今日は委員会活動もないのか、自席で宿題を黙々としていたようです。
うちはくんはいつもそう。補習や居残りをさせられているわけでもないのに、どうして放課後残っているのかと前々からの疑問を問うたら、
「陽が落ちたら帰る」
と、そっけない返事が返ってきました。
なるほど、風は秋めいてきたけれど、日差しはまだまだ夏の名残を感じます。パーカー姿で厚着をするうちはくんは、けれど暑いのが苦手のようです。
このうちはサスケくんとモブ男くんはただのクラスメイト。これまであんまり喋ったことはありませんでした。
そもそもうちはくんは社交的な性格ではなく、いつもクールな振る舞いをしています。しかし、かといってぽつんとしているわけでもなく、クラスの皆はうちはくんに一目置いている感じ。
うちはサスケくんはクールでぶっきらぼうだけど、誰かが困っていたら「ほらよ」と手を差しのべてくれる優しい男の子だということをクラスメイトは知っているのです。
それにしても、モブ男くんのモブ子ちゃんへの切ない恋心はこのまま秘めておくにはあまりにも辛く、誰かに聞いてもらいたい。
うちはくんが他のクラスメイトと恋の話をしているところなんて見たことないし、口は固そう。モブ男くんは思いきって、
「実はオレさ…」
と、一方的にうちはくんに辛い恋の胸の内を語りました。
聞いているのか、聞いていないのか、うちはくんは相変わらず黙々と今日の宿題を続けています。けれど、モブ男くんの恋の問わず語りを止める様子もありません。
うちはくんが聞いているのか聞いていないのか、そんなことはどうでもいいモブ男くん。モブ男くんはモブ子ちゃんのことがどんなに好きか、どんなところが好きかを一生懸命に話しました。
長々と話した後、モブ子ちゃんへの想いを一通り吐き出して、ちょっと気持ちが楽になったモブ男くん。
再び恋のくそでか溜め息を吐きます。
「付き合ってほしい。そんなたった一言が言えねーんだよなあ、オレ…」
モブ男くんが喋らなくなったので、しんとした教室。
運動場では陸上部のモブ子ちゃんが夕陽の中をキラキラ颯爽と駆け抜けています。
そんなモブ子ちゃんの姿を目を細めて眺めていると、
「…おれも」
と、ぽつりと声がしました。
振り返ると、うちはくんはやっぱり宿題をしています。
思わず「え…」と、聞き返してしまうモブ男くん。
すると、うちはくんは面倒くさそうに嘆息して頬杖をつき、一瞬だけペンを止めました。
「おれも言えない。…お前とは違う意味でだけどな」
今度こそモブ男くんの思考停止。
付き合ってほしい。
あの学校一のイケメンにして、女子のキャーキャー黄色い声が飛ぶ学校一のモテ男子のうちはくんが…?
言えない…?
誰に…?
なんで…?
モブ男くんの頭の中に疑問がいろいろ浮かんではぐるぐる回り始めますが、窓の外を向いてしまったうちはサスケくんの少し切なげな横顔とその瞳にモブ男くんは何も言えなくなるのでした。