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    0505mmyy

    @0505mmyy

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    0505mmyy

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    本来はこっちをワンドロに出したかったんですけど最後が締まらなかったので没になりました‪\( 'ω' )/
    ので供養します
    原作後の鬼舞炭(なのかな)です

    「梅が咲いているのか」
    「うん」
    「それは、綺麗なのか」
    「……綺麗だよ」
    「ここからでも、見えるだろうか」
     俺は勿論、と笑った。



     鬼との戦いが終わってしばらく経った頃、俺は夢を見るようになった。
     古い大きな屋敷で、ぽつんと小さな部屋で蹲っている誰かがいる夢。げほげほと酷い咳をしながら必死に起き上がろうとしていた。
     俺は気づいた。これは昔の鬼舞辻無惨の姿だと。姿や匂い、そして何よりもあの紅い瞳が無惨を思い出させた。
    「――貴様は」
     無惨は俺に気づくと不思議そうな顔をしてきた。不味い、怪しまれる。
     俺はとっさに使用人だという嘘をついた。
    「お、俺は……! 今日から働くことになった炭治郎だ!」
    「……ふん。くだらん。どうせ皆変わらん」
    「なっ……!」
     その言い方に腹が立って、思わず「そんなことは無い!!」と言い返してしまったけれど、まあ何とか大丈夫だったんだと思う。

     それから夢を見る度に、俺は無惨に会うことになった。夢の中の無惨は鬼の頃よりも全く違っていた。
     無惨は自然が好きだった。春夏秋冬、いつも部屋の外から見える自然の景色を好んでいた。
    「――なぁ。何でそんなに自然が好きなんだ?」
     ある日、不思議に思って俺が尋ねると、無惨は大きく息を吐いてこう言った。
    「……自然は、この目で見る方がずっと美しい。和歌や物語にはない美しさがある」
    「え、ええっと……」
    「貴様は何気なく見れるからそう思わんのだろうな」
     後から知ったことだけど、無惨は外に出られないらしい。少しでも日に当たると肌が焼けてしまうからと、そう誰かが噂していた。

    「この身体がさぞおぞましいだろう」

     無惨は俺にこう言ったことがあった。血の気のない肌。よく血を吐いてしまう口。栄養が届かなくて艶のない髪。周りの人は冷ややかな目で見ていたことは分かっていた。
    「……そんな事はない」
    「嘘だ。誰も彼もそうだった。ならば炭治郎も同じだろう」
    「お、俺はそう思ってない! 俺の父さんも病気だったけど、そう思ったことなんかなかった! それに嫌ならとっくにここに来るのを止めてる!」
     つい心の中から本音がぽろぽろ零れてしまった。
    「あっ……」
     無惨は目を大きく見開いていたけれど、しばらくすると急に笑いだした。
    「く、ははっ……そうか、貴様はそういう奴だった。そもそもお前は嘘をついたらすぐ顔に出るからな」
    「そ、そんな事はないぞ!?」
    「今のその顔だ。馬鹿め」

     無惨はこの時初めて嬉しそうに笑った。



     段々無惨の笑顔をもっと見たいと思うようになった。いつも歯ぎしりをしている顔だけじゃなく、心の底から笑う顔を。
    「梅が咲いているのか」
     だから、その願いを叶えたいと思った。

    「……だったら、少し身体を俺が起こしてあげようか?」
    「――ああ、頼む」

     無惨の身体を支えて、俺は膝枕をすることにした。寝転びながら少しだけ頭を上げて、何とか梅が見れないだろうかと考えた。

    「これでどう?」
    「……悪くない」

     俺は無惨と一緒に梅を見上げた。
     多分、この夢はいつか消えてしまう。そもそも俺の仇だったのに、今では膝枕まで許している。そんな事自体有り得ないんだ。だからきっと、全部俺が見ている夢に違いない。
     もしも運命が変わっていたら、無惨とこうする事もあったのかもしれない。俺が過去に生まれていたら、俺が無惨の兄弟だったら。これはその「もしもの世界」なのかもしれない。

    「……炭治郎」
    「どうした?」
    「私もいずれ、外に出られるだろうか。間近で梅を見られるだろうか」
    「……っ」
     言えない。「お前はこのまま鬼になる。太陽の下に出られない」なんて。

    「――っ、うん。きっと、見れると思うよ」
    「そうか」

     そう俺が答えると、無惨は寂しそうに笑った。
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    eyeaifukamaki

    PROGRESS愛をみつける
    ②と③の間の沢北side
    ネトフリ公式ので、萌え散らかしたww
    これ聞いて、ちゃんと深津さんに愛されてるよって思ってるけど、このさぁきたくんは相当自信をなくしておりますww
    ちなみに深津さんは沢北ファンの前では一緒にいないようにしてるので、深津さんと沢北ファンとの接点がなくて、みんな沢深推しなのに誤解されたまま。
    誤字脱字確認用
    『カズがノアとアシスタント契約を結んだらしい』

    それはチーム内でもすぐに噂になった。でも、誰もあまり驚かない。それは深津さんがそういう人材に適してる事を意味していた。まだ早いんじゃないかという意見も聞こえたが、概ね、みんな納得してこの事実を受け入れた。ただ、深津さんはみんなから好かれてる。

    「カズがいないと寂しい」
    「エージ、カズはいつ帰ってくるんだ」

    みんな口々に俺にそう言ってきて、深津さんの情報を聞き出そうとする。でも、そんなのは俺が知りたい。誰よりも深津さんは俺を避けている。これから深津さんの話を聞くことができるのは、俺以外の誰かから。

    なんで?
    どうして?
    俺が嫌だった?
    好きじゃなかった?

    でもよくよく考えたら、深津さんから好きって言われた事がない。高校の時に、俺から告白して、無理矢理体を繋げて、それで今までずっと上手くやってきたから忘れていた。行動で示してたつもりだったけど、馬鹿だな、俺は。深津さんの気持ちをちゃんと聞いたことがない。自分が頑張れば、深津さんは自分のものにできると、ずっと思って行動してきた。それはそれで間違ってはいないけど、それに言葉が伴ってない。深津さんの気持ちも聞いてないし、俺だって、最初の一度きりでそれ以来、ちゃんと気持ちを伝えてない。全部、何もかも、俺の勢いと想いだけで成り立っていた関係だった。だから、今になって、なんで?どうして?と、根本的な疑問しか考えられない。普通なら“好き”が大前提にあって、それとは別にここが嫌だとか、こうしてほしいとか、そういう具体的な問題が出てくるもんだ。でも最初から言葉が足りてないから、何が嫌なのかも分からない。頑張ることだけをやり続けていた俺には、追いかける術を持っていない。正直、これからどう対処すればいいのか、どう動けば正解なのか、全く分からない。動いたら動いたで、何もかも裏目に出そうで、それが原因で本当に深津さんを失いそうで、その恐怖が付き纏って何もできなくなってしまっている。深津さんがいなくなって、十日経ったあたりから、俺のファンも異変に気づき始めた。情報収集は俺より優れているから、もう、どういう状況かも把握している。心配そうに聞いてくるのを、困った顔で返す事しかできなかった。
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