[へし燭]せわやき その頃、本丸には短刀と打刀しかおらず、部隊編成どころか生活を回すのにも事欠く有り様だった。
したがって、出陣や内番を終えたあとも、出陣の報告をまとめたり今後の予定などを組むために、へし切長谷部の自室には夜更けまで明かりが点っていた。
とはいえ、長谷部も人の身で顕現しているからには、体力に限界もある。連日の夜更かしに、気づけば頭が傾いでいることもしばしばだ。
その夜もびくりと体が動いて居眠りから覚めた長谷部は、背中が暖かいことに気が付いた。手をやると、肩から羽織がかけられている。はて、誰かが気をきかせてくれたのかと思ったが、こんな深夜にこの本丸で起きているのは長谷部くらいだった。
そんなことが二度三度と続いた。
2144