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    Uwano_sora_QN

    @Uwano_sora_QN

    大体小話があります
    えっち?描けたらな。

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    Uwano_sora_QN

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    ただの小話 外で寝てる時はだいたいこう

    ##シゼルハイド
    ##Arwill

    野営のネズミ――――ぱちり

    爆ぜる火粉の音に、顔を上げる
    辺りを見渡せど特に影はなく、冷たい洞窟の壁が広がっているだけ

    「・・・寝てた?」

    独り言は多くない方だ、と思いたい。
    少なくとも、無意味に喋るのが好き、ということはない

    道中で採った食材で飢えは凌いだが、それでも自分の胃には足りない
    焚火の灰を少し均し、焚き木を追加
    火が安定したのを確認して、愛用のスキレットと河で採れた魚
    スパイスに、小瓶に持ってきたバター となれば

    「なんちゃってムニエルだな」

    小麦粉はないので、そのまま油を敷き、魚を焼いていく
    ふわり、いい香りが漂うが、ここは洞窟・・・手短に済ませたほうがいいかもしれない

    そういえば、と皿に盛った辺りで、ポケットのクルミの存在を思い出した
    少し前までは、ちまちまと口寂しさを誤魔化すのに食べていたが

    せっかくなので、残ったバター(少し焦げ)に絡め、一緒に盛る
    ”アユとクルミのムニエル”だ

    スキレットを直ぐ側の水を汲んできて洗い、先に立てかけておく
    火の側で保温していたムニエルに戻り、一口

    ―――熱い。
    口に広がる暑さに、一瞬飲み込むのを躊躇ったが、空腹には勝てない

    「はぅ・・・・」

    飲み込み、一息。

    簡単な罠だったため2尾だけ、だが、満足感はある。
    魚は好きだ、採るのが苦手なだけで、”昔”はほぼ食べることも出来なかった高級品

    カラ、と皿に食器を置き、片付けは――あとでいいか
    少し、思案に身を落とした。

    あの国は、内陸だったな...魚は交易で手に入る高級品で
    生ゴミも滅多に出ないし、出たとしても、食えるもんじゃない
    ましてや、生魚は食えると聞いてもまだ警戒する。
    死ぬよりマシなら食うが、今はそうしてまで食う気持ちにならない

    一人になって思い起こすのは、いつも過去のこと
    捨てたと思うほど、纏わり付いて、真綿のように首を絞めていく
    先生は”適度に話してしまいなさい”と言っていた・・・気がする

    ―――けれど最近は、それだけで思考が止まらなくなってきた。
    そういえば、”あの子”もスラムだと言っていたな、あの子はどうだったのだろうか
    今日は、怪我をしていないのだろうか
    他人の心配なんて、年々ぶりの事だろう、と懐古する

    頭を振り、らしくないと、思考をリセット
    モゴモゴと漁る口の中で、カリと小さな欠片を潰し、クルミの香りが広がる

    チラ、とあたりを見渡す。
    とうに日は暮れて、滝の隙間から差していた茜色もナリを潜め
    自分には随分と落ち着く黒色が、広く広がっていた。
    そういえば”黒い彼”に、戦いを見てもらった後、余計なことを言ってしまったな...と
    後悔に苛まれる。
    迷惑、だっただろうか・・・うっとおしく感じては、居ないだろうか
    宿では、普通、だったな・・・。
    嫌われてしまうには惜しいほど、彼との”稽古(ケンカ)”は楽しかった
    唯の行為が、あんなにも楽しいものだと、始めて知った気分だ

    ウダウダと考え、自分はそんな奴だったか?と首を振る

    何度も何度も思考を振り払い、この街に来てから、どうにも”自分らしくない”事が増え
    何とも言えない気持ちに襲われる
    まだこの気持ちの名前を、見つけることは出来ない。

    焚火の火を見つめ、なんとなくその暖かさに”彼”を思い浮かべた
    赤の中に揺れる橙、見つめ続ければ、段々と目を焼く色
    未だに理解しきれない、どうしてあそこまで、自分に”善く”するのか
    面倒だろうに、捨て置けばいいのに、何度も救うのか

    「自由に生きて、勝手に死ぬ」

    これまで抱いていた思いを、ポツリと呟く
    明日死んでもいい、今日を楽しめればそれで
    自分でも随分と刹那的に生きていると思う、だが、何もないのだ

    何も、無かったのだ。




    ――
    ―――

    思案に沈み続け、本格的に眠っていたらしい
    耳から消えた火花の音に、目を覚ます
    滝の方からは、光が漏れ入っていた

    立ち上がり、昨日洗いそこねた皿を洗い、軽く拭いて布で包み
    乾かしていたスキレットと共に鞄に仕舞い、焚き火跡は踏んで、均しておく
    他の荷物や、自分の跡を消し 滝の隙間から顔を出す

    「・・・ッ」

    光の眩しさに、少し目を細め 木陰を渡り歩くように歩み始める

    「今日はどう生きよう。」

    そう、小さく呟いて、物語へと戻っていく
    これは、とても小さな幕間の話。
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