はつこい 本当に予想外の出来事だったので、少々どころかかなり動揺した。
「……本当に?」
「はい、本当です」
どうしよう。サッと顔から血の気が引いたのがわかる。思わず持っていた薄い紫色をした紙を握りつぶしそうになってしまったが、それは何とか踏みとどまった。美しいそれは、一度くしゃりとしてしまったら、二度と元に戻すことは叶わなさそうだったからだ。
私の正面に立っている五月雨江は、普段通りの涼やかな目でこちらを見つめている。特に緊張をしている風でも、それ以外の感情も読み取れない。五月雨は基本的に、無表情であることが多いのだ。
「あの、返事待ってもらってもいいかな」
苦し紛れにそう言えば、五月雨はこくりと一度頷く。
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