審神者と愛刀と政府職員 愛刀が泛塵くんだと聞くと回りは不思議そうな顔をする。
山姥切が初期刀なので堀川国広殿が関わった縁のある刀だけれども。
「誰を愛刀にするかは莉駒さん次第ですよ」
調律師さんはさほど関係ないというように承認受理した。
「本丸運営が上手く行くかは終わってみないと分からないですからね。まあ、生きてれば刀剣男士さんの時のように新しい場所の就任もお勧めもしますけど」
「…………なんでですか?」
「審神者業を辞めて政府所属になる方もいるんですよ。本丸運営よりは向いてる人もいますし、私達の仕事を手伝ってくれる人もいます。刀剣男士の方々がとても優しくしてくれるそうですよ。もちろん、審神者としての任務を優先してくれます」
「なるほど……?」
あまりピンと来ないぼんやりとした話に首を傾げるしか出来ない。
私は地頭良くないし、遠方から意思を飛ばす男士に一喜一憂しながら何とかやってきたので、残業終了間近に滑り込みで仕事ぶちこんでくる大手企業のパートより全然マシだった。
寧ろ今の方が優待とは行かないものの優良企業。
中管理職に近い主という立場と責任は面倒くさいけど山姥切がいたからこその私の本丸。
「でも、審神者を続けていきたいって気持ちがあるなら続けた方がいいと思います。審神者を辞める人なんて、大抵霊力枯渇して辞めるか、死んだり、引退を余儀なくされて辞めるかの二択なんですから」
「えっ……」
畳み掛けるように調律師さんの演説は続く。
「審神者の殉職率は高いですからね。そういう意味でブレーキ掛けてくれる存在は大事ですよ」
そういうわたしは顕現すら出来ない元審神者ですけどね、と何処か意味深な笑みを浮かべた。
話の最中に書類を書き上げたのか、ちょっと席を外しますがこのことはご内密にと言い残して行った。
面談時間終了まであと二十分。
近侍が迎えに来るまでウンウンと唸った。