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    tyoko54_OPhzbn

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    tyoko54_OPhzbn

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    相談役夢。

    ヒール銃声と悲鳴。そして
    「シフォン様とペッツ様を誘拐しようだなんて」
    銃口を向け、引き金に手をかける。
    「バカな事したわね」
    乾いた音と共に撃ち込まれる弾丸に小さな断末魔が上がり、静かになった。
    銃をホルスターにしまい、沈黙する男に殴られて切れた口内に溜まった血を吐き捨てた。
    頭目に品がないと怒られるだろうか。
    「🌸!」
    「ローラ様」
    ズザザザと砂煙を上げながら路地裏に飛び込んできたローラに、🌸は笑顔を向ける。
    「シフォン様とペッツ様はご無事ですか?」
    「もちろんよ! 他の奴らも逃げ出したわ!」
    ちらっと目線を足元に転がる男に向けてからローラは、🌸の肩をポンポンと叩く。
    「ありがとうございます」
    ローラの気遣いに、ホッと息を吐く。
    こういうのはあまり得意ではない。
    自由奔放な性格からビックマムの所から逃げ出したローラの元で、自由に楽しく海で過ごし、スリラーバークの悪夢から解放され、ドレスローザでファイアタンク海賊団と合併したローリング海賊団。
    その後、シフォンの付き人としてファイアタンク海賊団としての仕事を全うしているが、自由を求めて海に出た🌸からすれば、この生活は少しだけ慣れない。
    「さ、行きましょう。シフォンが待ってるわ」
    「はい」
    ローラに背中を叩かれ、🌸は船に戻った。

    「シフォン様、ペッツ様、大丈夫でしたか?」
    「あぁ、🌸! よかったわ! あんたも大丈夫⁉︎」
    シフォンの腕の中で、
    キャッキャと笑いながら戯れてこようとするペッツに汚れるからと距離を置いた。
    「はい。主犯は頭目の指示通りに」
    「そりゃ、ご苦労だったな」
    シフォンの後ろから飛んできたベッジの声に、🌸は顔を上げた。
    「頭目!」
    「おまえもファイアタンク海賊団としての自覚が出てきたってこった」
    「勿体無いお言葉、ありがとうございます」
    頭を深々下げる🌸を見てから、ベッジはピッと指を差した。
    「だが、身なりが崩れてる」
    「…うっ」
    「さっさと風呂にでも入って整えてこい」
    ファイアタンク海賊団はスマートで品がなければいけないのだ。
    ちょっとした戦い如きで、胸元のタイを斬られ、足元は擦って泥だらけ。
    それではまだまだという事だろう。
    「シフォン様、ペッツ様。また後ほど」
    「ええ、ゆっくりしてらっしゃい」

    風呂まで歩きながら、🌸はコッコッと音を立てるヒールに痛みを覚えていた。
    「慣れないなぁ……」
    しゃがみこみ、ヒールの隙間に指を入れ踵を触る。
    「イタタ……」
    殴られて切れた口より、よっぽどこちらの方が痛い。
    そんな🌸にスッと影が覆いかぶさった。
    「レロレロ。🌸、しゃがみ込んでどうしたんだ?」
    「ヴィトさん」
    覗き込んでいたのは、ヴィトだった。
    「あ、えっと……大丈夫」
    パッと立ち上がり、なんでもないと言うように、トントンとヒールを履き直す。
    「わたし、お風呂に入ってこないと……」
    「……足、そのままで入ったら痛いだろ」
    「あ、」
    気づけば、ヒョイっとヴィトの大きな手で抱き上げられていた。
    「わっ、ちょっと、!」
    「ニョロロ〜、手当が先ロレロ」
    こんな姿、他の船員に見られたら恥ずかしいとジタバタ暴れるが、
    がっしりと腰を掴まれてしまっている為、逃げられない。
    「あの、ヴィトさん。船医室、逆、ですよね?」
    レロレロレーと、適当にはぐらかされ、ついたのはヴィトの部屋だった。
    「ちょっと待つレロ」
    そっとベッドに座らされ、🌸は困ったように部屋から出て行くヴィトの背中を見た。
    「……」
    落ち着かない。とても整った部屋だった。
    調度品は頭目の趣味だろう。ヴィトらしい物といえば、
    机の前にジェルマ66の書いてある世経の切り抜きが額に入れて飾ってあるぐらいだ。
    「待たせたな〜〜」
    ガチャリと扉を開けて戻ってきたヴィトは大きな桶と、真っ白なタオルを何枚か持っていた。
    タオルを床に敷き、その上に桶を置くと、ヴィトは🌸の小さな足に触れた。
    「ヒール。馴れないレロ?」
    そう言いながらそっとヒールを脱がされる。
    踵がグジュグジュになっているのが自分からでも良く見えた。
    ヴィトはチャプリと大きな手を桶に入れ、🌸の足をそっと洗う。
    チャプリ、チャプリ。
    泥を落として、血を落として、優しく手で撫でられる。
    「ヴィト、さん、その」
    「レロ?」
    膝をつき、自分を見上げるヴィトに、ドキリとした。
    「なんでも、ない、……」
    小声になり、目線を自分の足にだけ向けて、ヴィトから視線を外す。
    ヴィトは桶を横にずらし、🌸の足をやわらかいタオルで包み拭く。
    それもくすぐったくて、心臓が跳ねた。
    「終わったレロ」
    傷口は赤らんでいるが、泥も血も洗われて、綺麗になった足をヴィトはそっと両手で包む。
    「痛いの痛いの飛んでけロレロ〜〜!」
    パッと手を離してそう言うヴィトに、🌸はポカンとした後、思わず笑いをこぼす。
    「ニョロロ〜、やっと笑ったぜ。ココだけじゃなくて表情も酷かったレロ」
    足を指差した後、🌸の頬を指先でつついた。
    「えっ…」
    「どうかしたロレロ?」
    ヴィトにそう聞かれ、自分が撃った男が頭に浮かび、頭の後ろがサァァと冷たくなる。
    「……」
    ローリング海賊団は、ローラの自由さに惹かれて入った船員とスリラーバーク被害者の会で成り立っていた。🌸は前者だ。殺しや虐殺なんかを楽しむために海に出たわけでない。
    だが、ファイアタンク海賊団ではそうはいかない。暗殺家業が本業であり、稼ぎの要だ。
    シフォンの付き人と言えど、頭目が"殺せ"といえば、殺さねばならない。
    それは理解の上だ。
    けれども、慣れないのだ。
    ヒールも、殺しも。
    「わたし、やっぱり船降りた方がいいかな……」
    コレは、前々から🌸が思っていた事だ。ローラのことは大好きだ。
    シフォンも、頭目もファイアタンク海賊団の皆もだ。
    だけど、
    「向いてない……よね」
    ぎゅっと膝の上で、手を握る。
    「……おれは、🌸が出てくのは嫌だぜ」
    スッと頬に手を当てられ、視線を合わせられる。サングラスでヴィトの表情はよく見えないが、
    声色でなんとなくどんな顔をしてるかはわかった。
    「ヒールのことは頭目に言ってみればいいレロ。無理して履くこたねぇ」
    「うん……」
    それだけじゃないよ、と言いたかった。でも、ヴィトには理解されないだろう。
    "怪銃" の異名を持ち、ジェルマ66を愛してやまないヴィトは、根っからの"ヒール"好き。
    🌸のような甘い考えはきっと、理解が及ばない。
    「さ、風呂に入ったら薬を塗ってやるレロ」
    また、そこまで運んでやるレロと、ヒールを遠くへ置き、🌸を抱き上げる。
    「ちょ、ヴィトさん!!」
    「ニョロロ〜〜」
    笑うヴィトに釣られるように、🌸は笑った。

    甲板で月を眺めながら、ヴィトはあの小さな足と、悩む🌸の顔を思い出していた。
    「ヴィト。どうかしたか」
    「頭目」
    こんな時間に珍しいロレロ!と慌てると、気にするな、と一言告げる。
    「🌸のことか」
    「レロ……」
    頭目はなんでもお見通しだと、ヴィトはポツリポツリと🌸の話をした。
    「🌸は殺しに向いてねぇ」
    ローリング海賊団の雰囲気は入ってきた船員の印象でわかる。自分達のような殺し屋家業とは違い、
    海の自由を謳歌する彼らの仲間だった🌸にとっては、ファイアタンク海賊団は居づらいだろう。
    「だから今日、🌸が殺しをして帰ってきて……おれは、内心、嬉しかったレロ」
    やり遂げたのは他の船員から裏どりも取っている。🌸はちゃんと、殺しをして帰ってきた。
    それは、ヴィトにとっては喜ばしいことだった。けれど、🌸にとっては辛い出来事だった。
    「おれは、このまま🌸が悩むのは見ていて辛い」
    「……まぁ、慣れるのを待つしかねェな」
    同じ月を見上げ、ベッジは続ける。
    「おれ達は殺し屋だ。遊びで海に出てるわけじゃねェ。ヴィト、おまえが🌸を好いてるのは知ってるが、甘すぎるのは家族のためにならねェぞ」
    「それは、もちろんだぜ、頭目」
    相談役としてファイアタンク海賊団にいる自分が甘さを見せる訳にはいかない。
    けれど、ベッジも妻に甘いのは同じだ。
    気持ちはわかるのだろう。
    ふーーっと長く息を吐くと、ヴィトの背に手を伸ばし軽く叩いてやる。
    「ま、時間が解決する場合もある。思い悩みすぎねェこった」
    そう言い、ベッジは船内に戻っていった。
    月をまた見上げ、ハァと息を吐く。
    「🌸……」
    名前を呟き、月を見上げる。
    「早く、こっち側になっちまえば、楽なのに」
    あぁ、でもそんな🌸は、🌸なのだろうか。
    「レロレロ……」
    痛々しい踵と表情を思い、ヴィトは空を見上げ続けていた。
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