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    tyoko54_OPhzbn

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    tyoko54_OPhzbn

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    🍭大臣の補佐🌸。
    🍩が兄さんにお節介。

    まだ恋じゃない

    お仕事🌸はお湯が沸くのを眺めていた。
    時刻は3時少し前。
    ここ万国においては、3時は大事なおやつの時間。
    誰でもこの時間ばかりは気が緩む。
    やかんの口から白い湯気があがりけたたましく音を立てる。
    火を消してコンロからやかんをあげ、先に測っておいた茶葉の入ったティーポットに注いだ。
    ガラスのポットの中で茶葉が舞うのを確認し、砂時計をひっくり返す。
    毎日のこと。毎日の仕事。
    『ペロスペロー様、わたしも補佐としてココにいます。お茶汲みだけというのは……』
    『気にするな。街のみんなや兄妹には私から言っとくさ、ペロリン』
    あの日の会話を思い出す。ペロスペローは最初からこうだった。
    自分のことは自分で決めてやる。誰かに頼ることもしない。
    シャーロット家の長男らしいといえばそうだが。
    前任の🌸の父親はもう少し仕事を任されていたはずだ。
    砂が落ちきったところでポットを持ち上げると、中の紅茶の色を確認する。
    よし。いい色だ。
    ティーカップに注ぎ、ミルクと一緒に角砂糖入りのポットをトレーに乗せる。
    キッチンからペロスペローの執務室まで運べば、残念ながら今日の仕事も終わりだ。
    いつものように書類に囲まれた机でペロスペローがペンを走らせている。
    こちらを一べつするとまたすぐに視線を落とし、口を開いた。
    「なんだ?」
    「お茶をお持ちしました」
    そう言うと🌸は黙ってテーブルの上にトレイを置いた。
    そのまま踵を返そうとしたとき、「待て」と呼び止められた。
    振り返ると、ペンを置き頬杖をつくペロスペローがいた。
    その表情からは感情を読み取れない。
    「おまえも一緒にどうだ? ペロリン」
    「……結構です」
    「まあ、そう言わずに付き合えよ。少し話したいこともあるしな」
    話したいこと? なんだろうかと少しだけ期待が湧き上がる。もしやついにお茶汲み以外の仕事を任せてもらえるのだろうか?しかし、その期待は次の瞬間に霧散した。
    「最近、生活はどうだ?」
    世間話。仕事の話ではなかった。落胆しつつも答えないわけにもいかない。
    「……特に問題はありません。みなさんとても良くしてくれています」
    「それはよかった。何かあったらすぐ私に報告しろ。ペロリン」
    「ありがとうございます」
    それだけ言って部屋を出るつもりだった。
    だが、最後にひとつ聞いておきたかったことがあった。
    「ペロスペロー様、なぜわたしを側に?」
    お茶汲み以外の仕事は全てペロスペロー自身が行っている。
    自分などさっさとクビにしてしまえばいいだろうに。
    彼は手を止めて顔を上げた。
    そしてしばらく考えるような仕草を見せたあと、ゆっくりと言葉を紡いだ。
    「……部下には優しくするのが当然だろう。ペロリン」
    そう言い残すと再びペンを手に取り作業を再開した。
    「失礼します……」
    🌸は一礼して扉を閉めた。
    廊下に出ると、大きなため息をついた。
    (結局、何も変わらない)
    今日も仕事はお茶汲みだけだった。父親のように頼ってもらえず、毎日毎日、3時のお茶汲みだけ。
    それがどうしようなく、悔しかった。そんなことを考えながら歩いていると、向こうから歩いてくる人物がいた。
    (カタクリ様だ……)
    シャーロット家次男であり、最高幹部「スイート3将星」の筆頭。
    🌸は頭を下げて、カタクリが通り過ぎるのを待つ。
    「おい」
    呼び止められた声に肩が強張る。まさか自分に話しかけたわけではないだろうと高を括っていたが、違ったようだ。
    恐る恐る顔を上げると、やはりカタクリがこちらを見下ろしていた。
    「はい、なんでしょうか?」
    「ペロス兄さんから聞いたぞ。おまえ、なかなか見込みがあるそうだな」
    突然のことに🌸が呆けていると、カタクリは続ける。
    「これからもしっかり励め」
    それだけ告げると立ち去っていった。
    取り残された🌸はその背中が見えなくなるまで見つめていた。

    ***
    「ここにくる前に、🌸に会った」
    カタクリはそう言いながら、書類にペンを走らせるペロスペローに向けて続けた。
    「かなり、意気消沈していた」
    「……そうだったか?」
    ペロスペローは一瞬だけ手を止めたが、すぐにまたペンを動かし始めた。
    「少しでも、仕事を任せたらどうなんだ?」
    ペロスペローは再び手を止めると、ふぅっと小さくため息を吐いた。
    「あいつには、おれの仕事なんてできないさ」
    「そうやっていつまでも子供扱いして……いつになったら認めるんだ」
    「……そりゃ、カタクリ。おれはみんなの兄さんだからな?ペロリン」
    「そういう意味じゃない。もっと、🌸と向き合ってやった方がいいんじゃないかと言っているんだ」
    ペロスペローはもう一度大きく息をつくと、肩をすくめて見せた。
    「今日はやけにお喋りだな、カタクリ」
    「……」
    カタクリはむっと押し黙るが、それでもなお言葉を続けた。
    「兄さんが思ってるほど🌸は子供ではない。兄さんもわかってるだろ」
    「そうだといいけどな、ペロリン」
    そう言うとペロスペローは再び仕事に戻った。
    これ以上何を言っても無駄だと悟ったのか、カタクリも黙ってしまう。
    カリカリというペンの音だけが響く中、ペロスペローが口を開いた。
    「……それで、おまえは何の用だ? ペロリン」
    「もう全て話した」
    カタクリはちらりと視線を向けると、そのまま無言で部屋を出ていった。
    残されたペロスペローは一人苦笑を浮かべると、手に持っていたペンを置いた。
    「やれやれ……全く困った弟だ」

    ***

    ベッドに沈みながら、🌸は先程のカタクリの言葉を思い出していた。
    『おまえ、なかなか見込みがあるそうだな』
    あのカタクリ様が嘘をいうとも思えない。けれど、本当にペロスペロー様がそう言ったのだろうか。
    「お茶汲みしかしてないのに、見込みってなに?」
    まさか、お茶を淹れるのがうますぎるという話でもないだろう。
    それならきっと他の誰かの方がうまいに違いない。
    🌸は、ただひたすらに自分がどうしてここにいるのかがわからなかった。
    キャンディ大臣の補佐。つまりは雑務係として父親からその仕事を引き継いだ。
    だが、その肝心の仕事がない。

    『ペロスペロー様。わたし、大きくなったらキャンディ大臣の"ほさ"になります!』
    『そりゃ、楽しみだなァ、ペロリン』
    🌸が小さい頃。まだ、父親が生きていた頃の話である。
    『おまえが将来、"ほさ"になったら、私は大助かりだ』
    『本当ですか!?』
    『あぁ、本当だとも』
    『ありがとうございます、ペロスペロー様!!』
    『だがその前に、キャンディはいるか?』
    差し出されたキラキラのロリポップを、🌸はようく覚えいる。
    笑顔の父親と、その頼れる優しい上司。自分もきっと、その役に立つのだと幼心に思っていた。
    父親の葬式の時もだ。涙を流す🌸に、甘いキャンディをそっと握らせてくれた。

    頑張ってきたのだ。父親と同じようになりたくて。
    ペロスペローの役に立ちたくて。
    けれど、自分はペロスペローにとっては信用に値しない。そういうことなのだろうか。
    「……」
    視界が歪む。じんわりと涙が込み上げてきた。
    その時、扉がノックされた。
    慌てて袖で目元を拭うと、「はい」と返事をした。
    扉の向こうからは聞き慣れた声が聞こえてくる。
    「ペロリン、私だよ」
    その声の主が誰なのか、🌸はすぐにわかった。
    「ペロスペロー様……?」
    鍵をあけ、そっと扉を開く。
    そこには紛れもない、キャンディ大臣、ペロスペローが居た。
    「時間はあるか?」
    「……はい。大丈夫です」
    まさか、自分の家にペロスペローを招き入れる事になるとは思わず、🌸は緊張のまま
    テーブルの椅子をひいた。
    「すいません。散らかっていて……」
    「綺麗に片付いてるじゃないか」
    気にすることはない、と優雅に椅子に腰掛けペロスペローは🌸を見つめた。
    「おまえは座らないのか?」
    「え……」
    呆けたように立ったままの🌸に、座るように椅子を手で示す。
    「お茶を……」
    キッチンを見ると、ペロスペローはそれを手で制止する。
    「気にするな」
    「……はい」
    観念したように椅子にそっと座る。自分の家だというのになんて居心地が悪いのだろうか。
    「そう固くなるなよ、ペロリン」
    「は、はぁ」
    そんなことを言われても、🌸は今までペロスペローと話したことなどほとんどない。
    いつもお茶を汲み、テーブルに置く。今日はたまたま、声をかけられたがそんなものだ。
    「……」
    気まずい沈黙。一体、ペロスペローはなぜ訪ねてきたのだろうか。
    (ついに、クビかな……)
    いっそ、その方が楽かもしれないと、覚悟を決める。
    「明日の仕事についてだ」
    自分の耳がおかしくなったのだろうか? 今、仕事、と聞こえた。
    「明日からキャンディ島で、キャンディの品評会があるだろ? それの取りまとめを……
    🌸。聞いてるか?」
    「は、、!」
    遠くなっていた意識を戻し、🌸は慌てて立ち上がると、引き出しからペンと紙を引っ掴む。
    「どうぞ!」
    「くくくく、あぁ、品評会の組織委員会から人手を頼まれているんだ。
    🌸にはそこに行ってもらう。品評会を成功させてほしい。それが、🌸の仕事だ」
    私は別件で忙しくてな? と付け足す。
    「はい!わかりました」
    「頼んだぜ、🌸。期待してるからな?」
    「は、はぃ……!」
    その言葉に、🌸は思わず涙ぐむ。
    ペロスペローはそれを見て微笑むと、じゃ、頼んだぜと🌸の家を後にした。
    扉の向こうからは「やったーーー!」と大きな歓声が聞こえた。
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