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    tyoko54_OPhzbn

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    tyoko54_OPhzbn

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    🐯夢。
    🌸▶︎ソナーマン

    まだ恋じゃない。

    優しい暗がり「夜間照明に切り替えるぞ〜」
    夜を知らせる照明の切り替えの掛け声に、船内は白灯から赤灯に切り替わる。
    潜水艇であるポーラータングでは、一部区画を除き、昼夜の感覚が狂わないように白灯と赤灯が6時を区切りに切り変えるようになっている。
    船員はそれぞれ時計は所持しているが、共同生活を行う場所だ。
    こうして区別するのが都合がいいと、最初にキャプテンであるトラファルガー・ローに説明された。
    「もう、そんな時間……」
    耳に当てていたソナー用のイヤホンをずらし、赤くなった管制室をみやる。
    ローにソナーマンとして船に乗るように言われてから早いもので1ヶ月たった。

    ***
    ヒューマンショップへの輸送中の船内。🌸は手に付けられた鎖を力なく見ていた。
    (どこに連れていかれるんだろうか)
    窓もなく、明かりといえば頼りない蝋燭一つ。
    そんな船底で揺られていた時、それは突然起きた。
    地鳴りのような音と共に大きな揺れが起こり、蝋燭が倒れ火が消えた。
    コロコロと真っ黒な中に放り出され、🌸は思わず、コッコッ、と口を鳴らし自分の位置を探る。
    音の反射に耳を傾けて、壁との距離を確認する。
    「残響定位か」
    「⁉︎」
    声に思わず振り返る。さっきまでそこに人などなかったはずだ。
    🌸が目を見開いている間にも、男は続けた。
    「潜水艦乗りには必須技能だな」
    その言葉を聞きながら、🌸は声の主に目を凝らす。
    ぼんやり見えるのは身長が高く細身であること。何か大きな……刀のようなものを持っていること。
    「ROOM……シャンブルズ」
    男が呟き、そして次の瞬間。🌸は船上……知らない船の上にいた。
    「キャプテンおかえり!……あれ? そいつ誰だ!?」
    目の前に真っ白なクマがいた。
    「これから知る所だ」
    男の声と同時に🌸を別の2人の男がもの珍しそうな目で見る。
    「肌がすげェ白いな!」
    「なんか、深海魚みたいだな」
    ワイワイと自由に言いたい放題言われる。
    この人たちはなんなんだ?と戸惑っている間にも、男は🌸の手錠を外した。
    自由になった手を眺めていると、男は🌸を見下ろした。
    「ソナーマン。それがおまえのこれからの仕事だ」
    それがローとの出会いだった。

    あの日から、ずっと潜水艦の中にいる。
    ロー以外のクルーとも会った。ペンギンやシャチ、ベポというらしい。
    彼らは皆優しくしてくれた。
    ローも厳しいけど優しい。でも怖い。
    だからと言って嫌いではない。むしろ好きだ。
    だが、慣れないことも多い。
    まずこの、赤い光だ。
    🌸は元々、地下に住んでいた。明かりが無いわけではなかったが、こんな色の明かりにお目にかかるのは初めてだった。
    みんなで眠る居住区も、この灯りは絶え間なくあり、朝6時になると白に変わる。
    それが、どうも苦手だった。
    (ずっと明かりの中で過ごすのは気分が悪い)
    最初にシャチに『深海魚みたい』と言われたのはあながち間違っていない。
    🌸達の種族は、みんな暗闇に適応している。残響定位やローに買われた耳の良さもそこからきている。
    そのため、人工的な灯りはどうも肌に合わない。
    まぶしいのだ。
    「おーい。🌸、交代しようぜ〜」
    声をかけられハッとする。そういえば、午後の6時はシャチとの交代の時間だった。
    「あ、うん。わかった!」
    いそいそとイヤホンを外し、そのままそれをシャチに渡す。
    「🌸? どうかしたか? 具合でも悪いのか?」
    イヤホンを受け取りながら、シャチはボーッとしていた🌸を心配そうに見る。
    「ううん。大丈夫! ちょっと考え事してただけだよ」
    心配させてしまったと、苦笑いする。
    食堂で水でも飲もうと、管制室から食堂へ向かう。
    すると後ろから声がかかった。
    「🌸〜!!」
    「わっ! ベポ!?」
    もふもふとしてベポに抱きしめら、🌸はくすぐったさを感じながらベポをぎゅっと抱きしめ返した
    「どうしたの?」
    「キャプテンが呼んでた」
    「えぇ!?」
    ローからの呼び出し。なにか自分は失敗でもしただろうか……?
    ベポと別れ、船長室まで行く道すがら、🌸はうんうんと頭を悩ませる。
    出会って1週間で身なりを整えられ、血液検査やらなにやらされ、その次の週にソナーマンとしての基礎を叩き込まれ、ハートの海賊団として他の船員と交流し、目まぐるしい1ヶ月。
    正直、ほんとうに目がまわりそうだ。それなのに、ココに来てキャプテンの呼び出し。
    「怒られるのかな……」
    頭に思い浮かぶのは不機嫌そうなローの顔。
    クルーになる時も、淡々とソナーの説明を受けた時も、特にこれといって怒られた事はないのだが……。
    なんとなく怖い印象は拭えずにいた。
    「失礼します……」
    コンコンとノックをし、恐る恐る扉を開ける。白色の光が目に入る。
    (船長室は白灯なんだ……)
    電気も消せるのだろうか?と勝手に考えていると
    「🌸。おまえ、寝不足だな?」
    部屋に入るや否やそう言われた。
    「え」
    「おまえ達の種族はほとんどは生涯を地下で終えるらしいな」
    驚く🌸を気にもせず、ローは一冊の本を掲げる。
    そこには、🌸の種族について記載があるらしい。
    「"暗闇での生活に長けており、聴覚が優れている。一方で強い明かりや太陽光を苦手とし、明るい場所での活動は向いていない"」
    本を読み上げ、🌸を見る。
    「ポーラータングは常時、点灯している。おまえ、眠れていないな?」
    「……はい」
    思わずハンズアップし、こくりと頷く。
    ローは、「はァーーー」と長く息を吐き眉間を抑える。
    「これから、種族の特徴からくる不調はおれに言え」
    「はい?」
    てっきり怒られるかと思っていた🌸は、拍子抜けしたような声を出した。
    「ベポは"ミンク族"だ。満月を見ると"月の獅子"になり、身体的特徴が変わる。月の満ち欠けは全員把握している。おまえは光が苦手。これも全員把握の事実だ。だが、誰も眠れない程だとは聞いてない」
    「えっと……」
    「おまえは、ハートの海賊団のソナーマン。潜水艇の生活には慣れろ。だが不調は隠すな。ココは共同生活の場だ。それぞれの種族の向き不向きを伝え、体調管理もクルーの仕事だと思え」
    ローはそれだけ言うと、話は終わりだというように手元の本に目線を落とした。
    (え、いいの?)
    「それから」
    終わってなかった。
    「今日はココで眠れ」
    「はぁ……はい!?」
    突然の事に、🌸は混乱する。どういう意味だろうか。
    「……勘違いするな。船内で明かりの自由がきくのはココだけだ。明かりを消して休め」
    本を片手に立ち上がり、🌸にベッドをしめす。
    「おれは別の場所で休む。疲れを取れ。これは医者としての命令だ」
    「……アイアイ、キャプテン…」
    「朝、6時に起こしに戻る。おまえのその特性は他のクルーにも伝える」
    以上だ、というとローは部屋の明かりをけして船長室から出て行ってしまった。
    「……怒られるかと思った」
    部屋に残された🌸はポツリと呟く。自分はこのキャプテンと海賊団に入れて心底、ついていたと心から思った。
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