太陽さんさん潜水艇、ポーラータング号は陽の光を浴びて海上で浮上していた。
甲板では何人かのクルーが日光浴をしたり、潮風を浴びたりと自由に過ごしている。
そんな船内にはこんな声が響き渡っていた。
「「太陽を見てみたい〜〜!?」」
ペンギンとシャチは食堂で🌸とトランプで遊びながら話していたが、
🌸がポツリと言った言葉に顔を見合わせた。
「う、うん」
「🌸って本当に太陽見たことないんだな」
「故郷にいた時も見たことねェの?」
首を横にふる🌸に、シャチはへーっと頬杖をついた。
「でも、よぉ。🌸は太陽光が苦手なんだろ」
🌸の種族は地下で暮らす種族だった。
暗がりが得意な代わりに強い光が苦手なのだ。
「キャプテンも言ってたけど、肌も色素が薄いから日光にあたるべきじゃないって」
「そうだよねぇ…」
2人の言葉に落ち込む🌸を見て、シャチは腕を組んで考える素振りを見せた後、ぱっと顔をあげた。
「じゃあさ!おれらと一緒に見ようぜ!」
「えっ」
「それいいじゃん!」
「そうしようぜ!」
ペンギンも同調して身を乗り出す。
「キャプテンに、なにか言われないかな……」
見たいと言ったのは自分だが、ローが許すだろうか。
ハートの海賊団に入ってから、立ち寄った島も海上で浮上した事もあるが、昼間にポーラータングから出たことはない。
「大丈夫だって!絶対バレないようにするし!!」
「そうそう!おれらがついてるしさ!!それにもし怒られたらおれらも一緒に謝るから!」
「……ありがとう2人とも」
嬉しくて思わず笑った🌸の顔を見たシャチとペンギンは目を見合わせた。
((かわいい))
この笑顔が見られるなら多少のリスクなんてどうという事はない。
「そうと決まれば早速行こうぜ!!」
「今すぐ行こ!」
勢いよく立ち上がったシャチとペンギンに続いて🌸も席を立った。
***
「ダメだ」
甲板に出ようとした3人はあっという間にローに止められた。
「「バレたーー!」」
甲板へ続く部屋では、ちょうどローが本を読んでいのだ。
扉、一枚隔た先は、日光のある甲板だというのに、なんと高い壁だろうか。
しかしそんな事で諦めるわけにはいかないのだ。
「キャプテン、お願いします!少しだけ、ほんの数秒でもいいんです!!」
「太陽見てみたいです!」
「おねがいしまぁああああっす!!!」
3人は必死になって頼み込むが、ローは冷たい目線で3人を見渡しから
もう一度「ダメだ」と告げる。
肩を落とし「ダメだって…」「戻ってトランプの続きしようぜ…」「キャプテンのケチ」とぐちぐちいう3人にローは、ため息をはく。
「そのまま出るのはダメだと言ってるんだ」
ローは平たく丸いケースを🌸に差し出した。
「日焼け止めをしろ、帽子をかぶれ。サングラスは……してるな。その上でつなぎの袖はきちんと下ろせ」
「キャプテン!」
日焼け止めを受け取った🌸は嬉しそうに頭を下げる。
「ありがとうございます!」
目を輝かせる3人を横目にローは再び本を開いた。
「帽子はおれの貸してやるよ」
早速、顔に日焼け止めのクリームを塗る🌸に、シャチは自分の帽子を被せる。
「ところでキャプテン、日焼け止めなんていつから持ち歩いてるんすか」
不思議そうに聞くペンギンに、チラリと視線を向け「さぁな」と本に視線を戻す。
「よし、できた!」
🌸が準備を終えると、ペンギンとシャチは悪戯っ子のような笑みを浮かべ、🌸の為に扉をそっと開く。
眩しい光。
甲板に出たシャチとペンギンに続き、少し目を細め踏み出した。
「……あか、るい!」
サングラス越しではあるが、明るく暖かい風に🌸は感動したように両手を広げる。
「これが、太陽!」
「この船に来た時も、夜だったしな」
今にも跳ねて喜びそうな🌸をみて、シャチは笑いかける。
「よかったな〜」とペンギンもつられて微笑む。
開けっぱなしの扉の向こうから、ローが「長くはいるなよ。肌にも目にも悪い」という注意に
「はい!」と🌸は元気に返事をした。