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    tyoko54_OPhzbn

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    tyoko54_OPhzbn

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    🌷夢。🌐出る。
    🌸▷植物学者

    理不尽「うまいもんだな」
    倒木に腰かけ、鉛筆を動かす🌸に背後から声をかけたのはキラーだった。
    「キラーさん」
    「どうだ、新種はあったか?」
    「特には!」
    「そうか」
    🌸の手元のスケッチブックには目の前の大きな木のスケッチや、その根元に生えているシダのような植物のスケッチなどがずらりと並んでいた。
    「ログはあとどれぐらいですか?」
    「航海士が言うにはあと2日らしい」
    ログポースを辿り、ついた亜熱帯のこの島には人の気配はなく、とにかく植物しかない島だった。
    「船長の機嫌はどうですか?」
    「悪いな」
    植物学者である🌸からすれば、採取も観察も捗るこの島は居心地がよかったが、
    人もいない、気候は暑いこの島でユースタス・キッドの機嫌は悪くなる一方らしい。
    キラーは少し離れた所にある倒木に座りながら言った。
    「🌸が何か話せばいいんじゃないか?」
    「何を話すんですか?」
    「……なんだろうな」
    提案してから思案する様に腕を組む。
    「船長は植物に興味ないじゃないですか」
    「まぁそうだな……この島で好きなものはあるのか聞いてみたらどうだ?食べ物とか、風景とか」
    「食べ物と風景ですか……」
    「ああ、それでお前の話でもしたらいいんじゃないか?」
    「わたしの話なんて興味無いですよきっと」
    「いや、それは分からないぞ」
    キラーの言葉を聞いているうちに、🌸の顔色はだんだんと悪くなっていった。
    「えっ……それってどういう意味ですか?」
    「さてな」


    『おまえ、医者か?』
    『いえ、植物学者です』
    『治療はできるか』
    『植物の力でできる事なら』
    『そうか、ならおれの船に乗れ』

    「ほぼ誘拐」
    キッドとの出会いを語れと言われればこの一言に尽きる。
    キッドの仲間の1人が風土病に罹り、船医が原因不明と匙を投げかけた時に、その島の唯一の治療師であった🌸がそれを見事に治して見せたのだ。
    それを『有能な医者を見つけた』とヴィクトリアパンク号に連れ去ったのだ。これを誘拐と言わずなんと言えばいいのだろうか。
    「船長はあの時、どうして私を連れ去ろうと思ったんでしょうね」
    ポツリと呟くと。
    「そんなこと聞くまでもないだろう。おまえの能力を高く買ったからだろ」
    「能力を高く買うなら普通に仲間に引き入れません?」
    「海賊だからな」
    「そういうものですかねぇ」
    🌸は首を傾げながらスケッチブックを閉じる。
    そして立ち上がった。
    「船長の様子見てきます」
    「ああ」

    「……船長!船長!!」
    「うるせェ!!聞こえてるよ!!!」
    船の甲板ではキッドが不機嫌さを隠そうともせず、酒瓶片手に大声で怒鳴っていた。
    「ログはあと2日で貯まるらしいですよ」
    「ソイツも知ってる」
    「楽しいですか?」
    「楽しそうに見えるか!?」
    「……全然」
    🌸は困ったようにから笑いする。
    「この島で嫌な事でもありました?」
    「別に何もねェよ」
    「じゃあどうしてそんなに怒ってるんですか」
    「……イラついてんだよ」
    「イラつく?」
    キッドは手に持っていた酒を一口飲み込むと、ため息と共に吐き出した。
    「探索しても植物しかねェ! ログが貯まるのは時間がかかる上に、おまえだけはいつも楽しそうに出かけやがる!」
    「そんな、理不尽な……」
    「おまけにおれが苛立ってんのを分かっててヘラヘラ笑ってやがる!」
    「だって、怒られる理由がわかりませんもん!」
    「それがムカつくんだろうが!!」
    キッドは持っていた酒瓶を放り投げた。
    「おい、🌸。ちょっと来い」
    「なんですか?」
    「いいからこっちこい!」
    キッドは🌸の腕を掴むとそのまま船室に引きずり込んだ。
    「ちょっ、船長!」
    「黙ってこい」
    キッドは扉を閉めると🌸を壁に追いやり、逃げられないよう両手で囲んだ。
    「船長?」
    「…………」
    キッドは何も答えず、じっと見つめてくるだけだった。
    「どうしました?」
    「……」
    「船長?おーい?」
    「………ッチ、少しは慌てるもんだろうがよォ」
    🌸の手を解放し、ドサリとベッドに腰をかける。
    「酔ってます?」
    「酔ってねェ!!!」
    噛み付くように言われ、🌸は肩をすくめる。
    「おい、おまえなにが楽しくて毎日毎日、出掛けてんだ」
    そう聞かれ、🌸はパッと顔を明るくする。
    「そりゃ、楽しいですよ! 図鑑でしか見たことない植物だらけ! 新種は見つけられてないですけど、これでしばらく薬には困りませんよ〜!」
    「……おれは、この島で何一つ見つけられねェ」
    「……」
    「この島には植物しかねェ、それだけしかねェ」
    キッドの声はだんだんと小さくなっていく。
    「なのに、おまえはずっとニコニコしてやがる」
    「船長?」
    「それが、気に入らねェんだよ」
    理不尽だ。どうやら🌸だけ毎日楽しそうなのが気に入らないらしい。
    「おい、この島で見つけたモン、全部話せ」
    「へ?」
    スケッチブックを指さされる。
    「毎日出かけて、その成果を船長に報告も無しとは随分じゃねェか?」
    「それもそうですね」
    ふむと、思案すると🌸はスケッチブックをめくった。
    「長くなりますよ」
    「時間なら、嫌になるほどあんだろ」
    自分の横に座るように目で訴え、🌸はちょこんとキッドの隣に腰掛けた。
    「じゃあ、まずはこの島の気候から……」
    「……ああ」

    甲板で夕陽に照らされて、🌸はスケッチブックをめくる。
    キラーも船に戻ってきていたのか、🌸に声をかけた。
    「キッドは?」
    「寝ましたね」
    「そうか」
    話し始めて数分。短い相槌は気づいたらなくなり、寝息に変わっていた。
    「キラーさん。わたし、別にキッドさんは嫌いじゃないです」
    「……」
    「でも、理不尽ですよねェ」
    「海賊だからな」
    「そういうものですかね」
    昼間と同じ会話をしていると、「🌸!!!!」と怒声が船室から響いた。
    「船長の様子見てきます……」
    「ああ」
    船室に消えていく🌸の背中を見送り、随分とキッドは🌸を気に入ってるもんだとキラーは独りごちた
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