合わないぼくら。「"Look"」
緊張したシャチの声に応えるように🌸はシャチを見つめた。
「よし、いい子だ」
頭を撫でる手もどこか、強張ってる。
「……シャチ?」
「な、なんだ!」
うわずった声に、🌸は困ったように笑い返した。
「大丈夫……?」
「……ダメかも」
はぁーーーっと長く息を吐き、シャチはホールドアップする。
🌸に対してのはじめてのplay。
もっと気楽にやればいいのだろうけど、どうしても考えてしまうのだ。
この先ずっと一緒にいる相手なのだから。
「ごめんね、わたしなんかとPlayしてくれてありがとう」
申し訳なさそうに言う🌸に、シャチは首を振る。
「違うんだ、おれが悪いんだよ……」
「でも」
「あのさ、」
遮るようにシャチが口を開く。
「ちょっと思ったんだけど、おれら相性良くないんじゃないか?だってそうだろ?🌸とおれとじゃ、釣り合いが取れていない気がする」
それは、薄々感じていたことだ。
「それに、その……playっていうか命令とか、そういうのにも慣れてないしさ。🌸も嫌だったり怖かったりしたら言って欲しいし……だから、今日はこれくらいにしとくか?」
おずおずと言うシャチに、🌸は静かに首を振った。
「わたしはシャチと一緒にいられるだけで嬉しいよ。そりゃあコマンドとか言われた方が安心できるかもしれないけど、そんなこと気にしないよ」
本心だった。
シャチと一緒に居たい。ただそれだけだった。
「……そっか。なら、もう少しやってみるか?」
「うん!よろしくお願いします!」
ぺこりと頭を下げる🌸に、思わず笑ってしまう。
「それじゃ、"Kneel"」
「はい」
床に座り込む🌸を見て、シャチも隣に腰を下ろした。
「🌸」
名前を呼んで、髪を掬う。さらりと流れる髪に、指を通した。
「ん……」
くすぐったそうな声を出す🌸の顔を覗き込み、
「よくできました」と褒めれば嬉しそうにはにかんでくれた。
「次は何をするの?」
期待に満ちた目で見上げられてしまえば、シャチとしては応えないわけにはいかない。
「そうだな……じゃあ次は……」少し考えてから、ふと思いつく。
「"Strip"」
「えっ!?」
「脱いで」
淡々と告げられた言葉に、🌸の顔が真っ赤に染まっていく。恥ずかしさに震えながらつなぎに手をかけ、ゆっくりとボタンを外す。
ひとつ外すたびに心臓が大きく跳ね上がるようだった。
全てのボタンを取り払い前を広げると、白く細い体が露わになる。
羞恥に耐えきれず視線を落とすと、胸元を隠す下着が視界に入り余計に顔が熱くなった。
「"Look"」
「ぅ……はい」
シャチの言葉に従って恐る恐る顔を上げる。目が合うと同時に、シャチの手が🌸の頬に触れた。そのまま親指が唇に触れる。
何をされるのか察した🌸がぎゅっと目を瞑ると、シャチはその瞼に優しくキスをした。ちゅ、という音とともに離れていく体温を追いかけるように🌸がまぶたを開ける。
「可愛いな」
優しい声で囁かれ、🌸はますます赤くなって俯いた。
「もう1回してもいい?」
尋ねられ、こくりと小さく首肯する。それを確認してからもう一度、今度は額に柔らかい感触が触れた。
「好きだよ」突然の告白に、🌸は驚いてシャチを見た。シャチは照れくさそうに笑う。
「おれと🌸ってさ、やっぱり合わないと思うんだよ。だからさ、これから一緒に合っていこうぜ」
「……うん!」
🌸の満面の笑みに、肩の荷が降りたように息を吐き、🌸を抱きしめる。
「脱がせるのはやりすぎだった……?」
恐る恐るたずねる。🌸はモゴモゴと口籠もっていた。
「……"Say"」
耳にふっと吐息をかけるように伝えれば、🌸はぎゅっと閉じていた口を開いた。
「ちょっとびっくりしたけど、シャチにならされても良いかなって思ったよ」
シャチは一瞬固まってから、🌸を強く抱き締める。
「ちょ、シャチ苦しい!」
抗議の声をあげる🌸を無視して、力いっぱい腕の中に閉じ込める。
「🌸」
「なに?」
「大好き」
「わたしもだよ」
くすくすと笑い合いながら、二人はお互いの鼓動を感じていた。