熱「何がどうなったらそんな高熱出すんだ」
「……ごめんなさい」
ベッドに横たわり、はぁはぁと息をしながら🌸はシーザーを見た。
「解熱剤だけもらうよ、あとは自分で」
起きあがろうとするが、うまく体持ち上がらない。
その様子をみて、シーザーは大仰にため息を吐くと、解熱剤のアンプルをおった。
「熱でバカになっちまったか? 自分で何かできるような体調か?」
注射器に解熱剤を吸わせてから、力が入らない🌸の腕をとる。
「……ごめん」
腕にちくりと痛みを感じてから、申し訳なさそうに目を閉じた。
「寝ろ。今日一日は休んでろ」
「……はい…」
🌸が目を閉じるのを見届けると、シーザーは部屋を出た。
***
「おい、🌸、薬品棚Aの……チッ」
しばらく研究室で、薬品の調合をしていたシーザーは舌打ちをした。
🌸は寝込んでる真っ最中だった。
「ったく……」
苛立たしげに頭をかくと、シーザーは防護服を脱いで部屋を出る。
向かう先は、🌸の部屋だ。
***
ドアを開けると、🌸のベッドにモネが腰掛けていた。
「あら、M」
「モネ。なにしてる?」
「見ての通り、看病よ」
モネが羽根で示すと🌸の頭に氷嚢がのせられていた。
「可哀想な程の高熱ね」
わたしまで溶けてしまいそう。と冗談めかしていう
「お前には関係ないことだ。帰れ」
しっしっと追い払うように手を振ると、モネは不機嫌そうな顔になる。
「なにそれ、失礼じゃない?」
「いいから、出ていけって言ってんだよ!」
声を荒げると、モネは少し驚いた顔をした。それからすぐに表情を変える。
「ふぅん。そんなこと言うならもう知らないわ」
「ああ、勝手にしろ」
「ええ、勝手をさせて貰うわ。お邪魔しました」
わざとらしく一礼すると、モネは扉を閉めた。
2人になった部屋で、シーザーはため息をつく。
「ったく、世話焼かせやがって」
悪態をつきながら、シーザー🌸をみた。相変わらず🌸は苦しげに呼吸している。
ベッドの端に腰を下ろして、🌸の手をとり脈を測る。それから、そっと指先で頬を撫でる。
「……お前がいねェと仕事がすすまねェだろ」
静かに言いながら、そのまましばらく頬に手を当てていると、「シーザー?」と弱々しい声がした。
「シュロロロロ、あぁ、おれだ。どうだ?具合は?」
わざとらしく救世主スマイルを見せると、🌸は「それ、やめてよ」と笑う。
「さっきよりだいぶ楽だよ。ありがとう」
「あァ、気にするなって」
シーザーは🌸の額に自分のそれをコツンとくっつける。
「熱上がってんじゃねェか……。薬飲むか?」
「うん……」
シーザーは錠剤を渡すと、水差しを手に取りコップに注ぐ。🌸の口元に持っていき飲ませようとするも、うまくいかない。
見かねたシーザーは🌸の顎を掴み、固定させると水を飲ませた。
「……ありがと」
恥ずかしそうにする🌸を見て、シーザーは目を細める。
「いいから、寝てろ」
「今日の、シーザー優しい」
「おれ様は、いつも優しいだろうが」
「……うん」
「……昨日は悪かったな」
「なにが?」
「外で作業させちまった……」
極寒の研究施設の周りで作業を頼み、そのせいで熱が出た。
「謝るなんて、シーザーっぽくないよ」
「おれを何だと思ってやがる!」
噛み付くみたいに言うシーザーを見て、🌸はふふっと笑った。
「……とにかく寝てろ」
手で目を覆ってやりながら、シーザーが立ち上がる。
🌸はそのヒラヒラの白衣の裾を掴んだ。
「……もう少しだけ、居て」
「……あーあ、わーかったよォ。この天才のおれ様の時間を奪うんだ。後で礼はきっちりしてもらうぞ」
そう言いながらベッドに座り直すと、🌸は裾を握ったまま、寝息を立てていた。
「全く、ガキじゃあるめぇし……」
悪態をつきながら、シーザーはしばらく🌸の寝息に耳を傾けていた。