告白セイルに止まっていたカモメが羽を広げて飛び立った、
「出航ーーーー!」
高らかに響く声に、船員たちが声を返す。
次の航路に向けて船が風を受けて進む。
🌸は、甲板でペッツを抱き抱えているシフォンの横で今まであったヒールぶん、縮んだ背をシャンと伸ばして立っていた。
「いい天気ね」
「はい!良い船出です!」
ペッツも嬉しそうに笑いながらシフォンに甘えている。
晴れ渡った空にカモメたちが群れを成して船を見送るように後ろに下がっていく。
島の気候海域から抜ければ、まためちゃくちゃな天気に振り回されるのだろうが、今はまだ穏やかな海だった。
「シフォン様。私、今朝のこと伝えないといけない人がいるんです」
船に居ていいこと。自分はファイアタンク海賊団を辞めないこと。
どうしても伝えなければいけない人がいる。
「そうね!頑張るのよ!」
シフォンにそう言われ、急に心臓がドキドキとしてきた。
それでもちゃんと言葉にしないといけない。
シフォンとペッツに見送られ、🌸は船内に戻ると、真っ先にヴィトの部屋に向かった。
扉の前で、呼吸を整える。
ノックをするために手を握ると、先に扉が開いた。
「🌸!!?」
「ゔ、ヴィトさん!」
思わず出た声は、変に裏返っていて🌸は顔がカッと熱くなった。
「おれの部屋に来るなんて珍しいな、どうかしたレロ?」
「あの、私……」
言い淀む🌸に、ヴィトは首を傾げる。
言わなくてはいけない。この先も一緒にいるために。
意を決して口を開く。
「私、ヴィトさんのことが大好き!!!!!」
その言葉を聞いた瞬間、ヴィトは固まった。
そしてみるみると顔が赤く染まっていく。
「え、え、え、急にどうしたレロ!?」
「大好き。ファイアタンク海賊団のこと。頭目も、シフォン様も、ペッツ様も。ゴッティさんも、ヴィトさんも。みんな」
だから、と
「船、降りないよ。私はファイアタンク海賊団だから」
勢いに押されるように話を聞いていたヴィトは、やっと言葉を飲み込んだのか
自分を見上げる🌸の晴れやかな表情に気づいた。
そうか、🌸はきちんと自分と向き合ったのだ。
「……🌸。その好きって、ファミリーとしての好き、ってことか?」
船に残る事はわかった。なら、今、ヴィトが聞きたいのは大好きの意味の方だ。
ヴィトの言葉に、🌸は目を丸くして驚いていた。
それから、困ったような笑顔を浮かべて俯き、小さな声で呟いた。
「ううん。違うよ……」
「🌸」
腕を引き、部屋に🌸を引き入れる。そのまま扉を閉めれば、出航したばかりで賑やかな甲板からの音が遠くなり、今ここに2人きりだという事をいやでも意識してしまう。
ヴィトは🌸を抱き寄せ唇を重ねる。驚いた様子の🌸だが、抵抗はない。
一度離すと、潤んだ瞳で見つめてくる。もう一度重ねると今度は🌸も応えてきた。
抱きしめていた手を片方外し、腰を抱くようにして抱き寄せると🌸が身を預けてくる。
🌸の舌が遠慮がちに入ってきたのを絡め取ると、ビクッとして離れようとする。逃さないようにさらに深く絡ませた。
「んっ……ふぁ……あ……」
漏れる吐息に煽られながらも、ようやく口を離す。
「🌸」
頬に手を当てて、上向かせると視線が合う。涙の滲む目がこちらを見ている。
「好きだ」
そう言って再びキスをした。
角度を変えて何度も、何度も。時折歯列をなぞったり、上顎を擦れば甘い声が聞こえてきた。最後にチュっと音を立てて離れて、額を合わせる。
「愛している」
そう言うと、恥ずかしそうに顔を逸らされた。
「私も……」
消え入りそうな声だったが、しっかりと耳に届いていた。
照れているのが可愛くて、また抱きしめて口付ける。
「これから、ずっと一緒ロレロ」
そう耳元で言うと、こくりと小さく首肯する気配がした。