Rainy marriage雨が降っていた。
窓に打ち付けられる雨の音を聞きながら俺は目を開ける
肩に体温を感じながらおもむろに顔を上げると、
隣に夜が似合う男が、さっきの俺のように頬杖をついて雨音を聞いているようだった。
夜を溶かしたような黒髪や角、
その中で輝く瞳や角の先端は、夜空に輝く星のようだった。
再び目を閉じて昼間のRenを思い出す。
今日、俺たちは結婚式を挙げた。
男同士の結婚式は珍しいはずなのに、
同僚も先輩も後輩もみんな俺たちの結婚を手放しで喜んでくれた。
そして、Renはみんなの輪に囲まれて誰よりも喜んでいるように見えた。
明るく朗らかに、屈託なく。
その笑顔は太陽よりも温かく、まぶしかった。
再び目を開ける。
そこにいるのは、夜が似合う男が視線を下に落としていた。
昼間の時の鳴りを潜め、目を伏せた姿は美しさだけではなく色気さえにじみ出ていた。
視線先には左手があった。
さっきまで頭を置いていた肘は降ろされ、その薬指には銀色の指輪が光を放っていた。
あ……俺たち、結婚したんだ。
自分の左手にも同じ指輪がはまっているのを感じ、
突然肩に触れあった体温が上昇したように思えた。
俺、Renと……Renは俺と……結婚、したんだ。
心臓の鼓動がRenに聞こえてしまうのではいかと思うぐらい身体中で鳴り響く。
俺はたまらずRenに向き直る。
「Doppi……?」
どうしたの?と驚きつつも微笑んでくれる。
その優しい微笑みに愛しさすらこみ上げ、俺はRenに抱き着く。
「Ren」
「わっ……!急にどうしたの?」
俺のデカい身体を受け止めつつ、Renはいつもの笑い声を上げる。
「俺たち!結婚したんだな!!」
「そうだよ~!誓いのキスもみんなの前でしたじゃん!」
「それはそうだけどさぁ……なんか今実感が湧いて!」
「そうなの~?今~?」
Renがまた声を出して笑う。
それが嬉しくて俺も笑う。
しばらく、2人しかいないその部屋に若干不相応な、
俺たちの陽気な笑い声が響いた。
うっすら涙が出るぐらい笑ったあと、なんとか2人とも笑いは収まった。
そして、俺は改めてRenの顔を見つめた。
「Ren……俺と結婚してくれてありがとう」
Renは幸せそうに微笑む。
「Doppi……一緒に幸せになろうね」
どちらともなく、触れるだけの唇が重なる。
それは2人だけの誓いのキスだった。