最後の一杯「今日もここに来ていたのか」
「鍾離様……」
璃月港を離れ、銅雀の寺が見渡せる丘の上まで来てみた所、景色に溶け込むように魈は立っていた。
水のせせらぎが聞こえ、茜色に染まる空の、夕陽の落ちていく様子が一望できる静かな場所だ。ここ数日、何をする訳でもなく魈がそこに立っていることがあると旅人から聞き俺も足を運んでみたのだが、やはり彼はそこにいて銅雀の寺を見ていた。
「少し、話でもどうだろうか」
「しかし……」
「酒も持ってきた。たまには俺も銅雀と盃を交わしたいと思ってな」
「……承知しました。では、我も少しだけいただきます」
寺の中に入ると平安に見つかってしまうかもしれないので、その場に座り込んで酒瓶と盃を取り出した。
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