かなみゆ没エッッ※高校1年 割と注意
「ぎゃあああ無理無理無理い、いやー顔溶けてるひぃぃー」
隣に座る未夢はまだ始まって30分しか経ってないのに早くも悲鳴を上げてぎゅうぎゅうしがみついて来る。
(だから観ない方がいいって言ったのに)
DVDのパッケージを手に取る。ド、がつくホラー映画にR15指定の軽いスプラッター入り。まだ顔が溶ける描写くらいじゃ大したことじゃない。後1時間もすれば泡吹いて昇天してるかも知れない。おれは一時停止を押した。
「もう観るの止めたら?まだあれ程度なのに多分この後首飛んだり血ぃ飛んだり、もしかしたら身体の中身出てくるかもよ?あと1時間半あるけど耐えられる訳?」
どうせ観るならスプラッターの意味を確認して理解してからに欲しい。ホラー映画の時点でアウトなんだろうけど何故ホラー映画持ってきたのやら。
「か、かかかなた一緒だから、だ、だだ、だだっだいっじょぶ、かなって…」
顔青くしながら顎ガタガタ言ってんのにどこが大丈夫なんだか。
「どうすんの?観るの?忠告はしたぞ?」
「ふぁ、ふぁいっ」
再び再生を押してからさらに1時間。案の定、首、手、足が飛んだりズタズタになったりする描写が増えてきた。当然未夢も、
「………」
顔面蒼白のまま、既に息してないんじゃと思った。だから止めておけと言ったのに。再び一時停止を押す。
「もう止めろ。お前が観るの多分一生無理だと思う」
「は、はひ…」
さて、そうなると問題はこちらになる。まさか泊まりになるなんて。
遡ること数時間前、どうやら未夢両親が海外へまた仕事が入り旅立った。1人で敷地内の自宅にいるより、ここに泊まらせて欲しい連絡が入り、親父も承認したようだ。「彷徨、今日未夢さん泊まりに来るでの」と朝それを聞く。それを当然聞いてないおれ。相変わらず聞いたその瞬間に「今説明したじゃないか」で片付けられた。さらに、それから数時間後、「用が入った 出かける 明日帰る 宝晶」のメモの書き置きが。メモをぐしゃりと握り潰して「クソ親父」とゴミ箱にぶん投げて吐き捨てた。今日は2人で過ごせって試されているんだろうか。
未夢は未夢で、自分から持ってきたくせに先程の映画が恐怖でしかなく、一緒に部屋で寝させてなんて言う始末。すいません、殺す気ですか?
「かなたぁ~ごめん、パジャマ貸してくれない?」
「えっ」
バッグに入れ忘れたらしい。自宅に取りに行くにしても、外は土砂降りと雷で流石に可哀想ではある。
「いいけど…半袖のパジャマっておれあまりないけど…」
夏は基本タンクトップが多い自分にとって半袖類のパジャマは殆どない。タンス、押し入れ、ひっくり返しても流石に女子が着れそうな丁度いい感じはある訳ない。
「半袖シャツはいいとしても…ハーフパンツだとサイズがさ……あ、これなら縛ってキツくすりゃまぁいけるか」
ウエストにゴム入りの夏用ルームウェアのハーフパンツ。殆ど履かないためほぼタンスの肥やし状態だった。ただ、今の未夢にならヒモまであるからキツく縛ればなんとか履けるだろう。
「助かるよーありがとー」
貸したものを持ち、パタパタと風呂場へ向かっていった。
さて、問題は布団。客間の布団を自室に1組移動させる。置いてふと、我に返った。
「待ておれ。何普通にここに敷いてんだ?」
そもそも、怖いからって普通彼氏の部屋で寝たいなんて言うかいや、中学時代ならまだいい方だったかも知れない。まぁ、普通に考えたら中学生でもひとつ屋根の下で同居も(+異星人2名いたから例外)有り得ないが。だが明らかに状況は今は違う。関係性を考えたら、
「やっぱり無理にでも客間に……」
「お風呂ありがと!」
戻って来た。やけに早い。コイツ風呂は昔から長風呂のはず。
「随分早いな」
「あ、いやーお風呂場1人もなんか怖くて…倍早く終わらせたくて急いじゃった」
「あ、そう…………」
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「ね、何で彷徨の布団とわたしの布団間隔広いの?明らかに3mくらい離れてるよね?」
「いや、これが普通(?)だから。普通に考えたらこれが普通であって普通じゃなくて…」
何言ってんだおれ。
「ねねっ、借りたこのルームウェアの生地気持ちいいね~接触冷感かな?涼しい~」
「あ、そう…」
「でも、彷徨の匂いもするからなんか緊張しちゃうけどね」
「ぶふっ…ゲホッゲホッ」
「だ、大丈夫?」
これ、1日おれ持たないんじゃないか?無理だ絶対寝られない。
未夢に背を向けながら本を見始めて数10分くらい経った頃だろうか。ズリズリと何かが引きずられている音。音のする方を見ると、未夢が布団をおれ側に持って来ていた。
「…おい、未夢サン、何しているんですか?」
「だってどう見ても離れすぎだもん。別にいいでしょ」
「…良くはない」
「何で?」
「何でって…」
どう言えば理解して貰えるか分からない。遠回しに言った所で絶対分からないのは分かる。とは言え直球も言いづらい。
「わたしは直球で言ってくれないと分かんないわよ?頭の良い人からの遠回しな発言って逆に分かりづらいのよね~」
直球って来いと言われても。だからおれだって言いづらいんだよ分かれよアホ!
「じゃあ、質問形式で問題を書いてやるからそれに応えろよ」
「え、なにそれ…」
問1 年齢は?
問2 交際相手はいますか?
問3 キスはしましたか?
問4 キス以上はどういうものか知っていますか?
以上を書いた紙を渡して数分後、問4で彼女のシャーペンは止まった。
「キ、ス以上…………って」
「ちなみにおれ達まだしていません」
おれはいつでも構わない。要は未夢次第。
「い、意味は分かってる、よ?」
「覚悟ないならやめた方がいいと思う。おれは、いつでもイイけど」
「わたしも、いつでもいいよ!」
「ふーん。ほんとに分かってんだろうな?」
軽いジャブ入れておこうか。
「嫌って言うなら今の内だけど」
「大丈夫」
「今からおれがすんのは、ほんとーに軽いジャブ程度だから、それも嫌なら止めるべきだぞ?」
「わかった」
本当に大丈夫なんだろうか?まぁ、仮に今日このまま、越えちゃったらラッキーな方だろうな。なんて邪な考えが浮かぶ一方で、正座で身構えてガッチガチなヤツが目の前にいる。これじゃまだまだこの先長いな、なんて思う。
「ジャブ程度って…」
「まずはそのガチガチなんとかしてくんないとやりづらくてしょうがないんだけど」
甘さを定石に進めた方がいいかと思って、軽いキス程度から。
「ん!」
最初はキスでもガチガチだったことを比べたらまぁ成長した方なんだろうな。
「まだだけど」
「は、ひ」
2回目、3回目、ジワジワと啄みや舌で遊ぶことを増やす。
「はぅ………」
「まだこんなんじゃキス以上は到底無理だな。…とりあえずした事無い事やってみるか」
「へぁ」
その片耳、口に入れた。
「ぅゃひやぁ」
どんな声だ。
「あ、ちょ…」
耳を食べる、表現的にはちょっと違うかも知れないが、今してる事ってそんな感じだ。かぶりついて、耳の中を舌で弄って舐めて。繰り返す。
「ぅっ…く…んんっ…」
「いい声…次、な…」
「ま、まだあるのも、もぉ、無理ぃ…し、死んじゃう」
「ジャブなのに死なれたら困る」
髪を寄せて首筋を甘く噛んだ。
「っく……うっ…か、なたぁ…も、やめて…」
確かに流石にヤバい。これ以上は止められなくなりそうだ。口元を拭ってピリオド。
「じゃ、今日はここまで。続きはまだ先だな」
布団を持って部屋を出る。今日は場所を譲って客間で寝るしかない。あの部屋に一緒にいたら我慢出来なくてやらかすだろうから。その前に。
「…シャワー、浴び直すか」
あの程度で火照った身体の熱を醒ます必要を感じた。おれもまだまだかも知れない。